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原発の検査体制 質量ともに転換を図れ

 原発の検査制度が大幅に見直されることになる。

     原子力規制庁の検査官が、原発にいつでもどこでも自由に立ち入ることができる「抜き打ち検査」や、国が検査結果などを原発ごとに総合評価して公表する仕組みを導入する。

     政府は、こうした改革を盛り込んだ原子炉等規制法改正案を国会に提出した。2020年度からの実施が見込まれる。

     抜き打ちの導入で、電力会社はトラブルを隠しにくくなるだろう。評価結果は他社と比較されることになるため、競争原理が働いて、電力会社が自主的に安全対策に取り組む効果も期待できる。

     原子力規制委員会は、検査官の能力や人員の増強を図り、法改正が原発の安全性向上につながるよう努めてもらいたい。

     東京電力福島第1原発事故を受けて規制委が発足し、原発の新規制基準が施行された。新基準に基づく再稼働も進む。一方で、検査制度の見直しは、後手に回っていた。

     国や電力会社が実施する原発の検査は、約13カ月に1回の定期検査と年に4回の保安検査が大きな柱となっている。定期検査は重要度が高い設備を、保安検査は原発が安全に運営されているかを中心に点検する。

     しかし、時期や内容はあらかじめ決まっており、国が臨機応変に問題点をチェックする柔軟性に欠けた。

     電力会社には「規制側の検査に通ればいいという受け身的な伝統があった」(田中俊一・規制委員長)という。国際原子力機関(IAEA)もこうした点を問題視し、福島第1原発事故前の07年と昨年1月の2度、改善を勧告していた。

     今回の原子炉等規制法改正案では、原発の検査に関する国と電力会社の役割分担を明確化する。

     設備などが基準に適合していることの確認義務は、電力会社に一元化する。国は検査状況や電力会社の安全対策全般を監視し、総合評価する。そのために抜き打ち検査などを導入し、評価結果は次の検査内容に反映させる。

     米国などに準じた仕組みだ。法改正で制度的には追いつくが、それだけではまだ不十分だ。

     約100基の原発が稼働する米国の原子力規制委員会には約1000人の検査官がいて、2年間の研修を受ける。40基余りの原発が運用される日本の検査官は約100人で、研修は2週間だけだ。検査官の質と量を確保しなければ、制度見直しの効果も薄らぐ。

     原発の総合評価は、国民にも分かりやすい形で公表してほしい。結果に応じて、事故に備えた損害賠償保険の保険料を変えるといった活用法も検討されるべきだ。

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