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朝日「天声人語」、裏取りなしのトランプ逸話を掲載

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週刊新潮 2017年3月2日号 
2017/2/23発売

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〈日米安保「前のめり」では危うい〉(1月31日付朝日新聞社説)。確かに、前のめりは危険である――。「弱者の味方」の朝日は、米国のドナルド・トランプ大統領(70)がどうにもお気に召さないようで、彼の監視を続けている。折も折、同紙は政治家の言動の真偽を見極める「ファクトチェック(事実確認)」なるコーナーを新設。ならば、当の朝日の記事をファクトチェックしてみることにしよう。

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坊主憎けりゃ袈裟まで?(首相官邸HPより)

 トランプ氏への嫌悪感を漂わせる朝日は、2月10日付の名物コラム「天声人語」にこう記した。

〈安倍晋三首相が首都ワシントンに続けて向かう先は、南部フロリダ州の高級リゾート施設「マール・ア・ラーゴ」(以下マール)である。トランプ大統領が所有し、別荘としても使う〉

〈もとはシリアル食品で財をなした穀物王の娘が1920年代に建てた邸宅である。一目見て気に入ったトランプ氏はまず目の前の砂浜を買い取る。「壁を作って海を見えなくしてやる」と相続人らに迫り、豪邸を破格の安値で手に入れた。よほど壁が好きなのだろう〉

 いかにも朝日が好みそうな、トランプ氏の傲岸不遜な逸話である。しかし、

「おそらく、『元ネタ』は一昨年11月14日付のワシントン・ポストの記事だと思うんですが……」

 と、ある朝日ウォッチャーは指摘する。そこには、

「トランプにインタビューした話として、天声人語に酷似した内容が載っています。彼はマールを購入するために2800万ドルを提示したものの、断られると強気に出て、真ん前の海岸(砂浜)を第三者から購入し、そこに醜い家を建ててマールからの見晴らしを台無しにしてやると語っていた、というものです」

 なお、朝日に引用元は示されておらず、先のファクトチェックコーナーが始まったのは、件(くだん)の天声人語と同日である。

■トランプ氏お得意の…

 現地で40年以上、高級物件を専門に扱ってきた不動産屋の店主が後を受ける。

「私はマールについて詳しく知っていますが、トランプが先に砂浜を買っていたなんて話は聞いたことがない。だいたい、パーム・ビーチ(マールのある地域)は建築基準がとても厳しく、醜い家を建てるなんて計画は通らないはずです」

 また、先のワシントン・ポストから約1年後の米誌「ヴァニティ・フェア」にはこんな記事が出ている。

〈トランプはマールの買収が成立するまでは海岸を購入していない〉

 さらに、不動産取引記録が閲覧できるフロリダ州の公式サイトを確認すると、トランプ氏のパーム・ビーチでの不動産取引は、いずれも1985年12月27日。

 これらの情報から判断すれば、マールを安く買う「ディール」のために、事前に近くの砂浜を買って嫌がらせをしたという「トランプエピソード」は、まさに彼が得意とする「大風呂敷」だったことになる。

 朝日新聞社論説委員室の弁明。

「天声人語は多種多様なテーマを取り扱っており、取り上げる事実と、その情報の出所や経路は多岐にわたります。執筆の詳細な経緯については通常お答えしておりません」

 結局、トランプ氏の発言をファクトチェックしたのかについては答えずじまい。

 裏取りなき報道を、世間では「前のめり」と言う。

ワイド特集「ああ無情」より

  • 週刊新潮
  • 2017年2月23日号 掲載
  • ※この記事の内容は掲載当時のものです

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