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愛知<岡崎ノーベル酔談 大隅研のこころ>(4) はぐれもの◆他人のやらぬことを
大隅良典・東京工業大栄誉教授(72)はノーベル医学生理学賞を受賞しても「ちっとも偉くない」と語った。研究者のあるべき姿について、以前からこう考えていたからだという。 <大隅> 研究者はね、はぐれものでいい。自分が成功物語として語られるのは、とっても嫌なんです。たまたま、そうなったと思っている。著名な科学者でも、いいかげんな人はいっぱいいる。偉人扱いして、祭り上げるのはやめた方がいい。非常に人間くさい。人間活動のひとつとして、科学者はあるんだと思う。 <大阪大特別教授・吉森保> だから、大隅先生がノーベル賞をとられたのは意義深い。 <基礎生物学研究所(基生研、岡崎市)助教・鎌田芳彰> パラダイム(時代を規定する考え)は、内側にいたら変えられない。大隅先生はパラダイムの外にいたアウトサイダー。主流派の人たちからみれば、はぐれものなんです。 <大隅> そうです。「他人のやらないことをやる」っていうコンセプトはずっとあった。 <東京大教授・水島昇> 変えることができるっていうのは、よそものと、バカものと、若者だっていう…(笑)。 <大隅> 「自分でやりたいことやれたら幸せだよ」っていうのが、研究者の基本だと思う。水島くんみたいな立場だったら幸せかというのも含めてさ。 <吉森> 東大医学部教授も、ある意味、不幸だよね。(注・東大教授は、各種の審議会委員など、研究以外の仕事が集中しがちといわれる) <水島> そんなに不幸じゃないですよ(笑)。 <吉森> 阪大の方が不幸かも。「白い巨塔」だし(笑)。 <大隅> やっぱり、大半の研究者は大金持ちになりたいと思ってサイエンスをやっているわけじゃない。科学者は、一見役に立たないけど、本当は何かに役に立つかもしれないことをやっているっていう人たち。そういう人間集団を社会が内包していることこそ、成熟した人間社会なんだと思う。 大学だったら、ヘテロ(異質)な人間集団が集まるのがあるべき姿なの。今みたいに早いうちから受験競争が始まって、貧乏な家の子は科学者になれないような、社会が固定化していくことには危機感がある。 <水島> 東大は、受験のトレーニングをした人が入って、本来入るべき能力がある人が入れない。 <大隅> 東大は今、苦悩している。大学がヘテロな人間を吸収するのをやめて、有名私立高の卒業生ばかりになったら、だめだ。 <鎌田> どうやって勝ち組に入るかばかり考えている。 <大隅> エリートを育てるのはいいんだけど、エリートしかサイエンスに残れないのは最悪。それではサイエンスは成り立たない。 (発言者名は敬称略) =続く。次回は「科学のあり方」について。 PR情報
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