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熱田のニワトリ、ピンチ 参道シンボル「最後の1羽」に

(上)現在、熱田神宮境内で生息が確認されている唯一のニワトリ=27日午前(榎戸直紀撮影) (下)参道でエサを探すニワトリ=1977年、いずれも名古屋市熱田区で

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 名古屋市熱田区の熱田神宮境内でかつて数百羽生息していたニワトリが減少し、昨年末から「最後の一羽」となった。もともと外から持ち込まれたものだが、長年親しまれてきた参道のシンボル的存在。酉(とり)年に浮上した“消滅”の危機に、地元関係者らは寂しさを募らせている。

 ニワトリは昨年十二月二日まで、少なくとも二羽が確認されていた。同日、企画取材中の本紙カメラマンが参道中央の第二鳥居付近で並んだ写真を撮影。だが神宮職員によると、十日ごろに一羽になったという。

 その後に複数回、記者が境内で一般参拝者の立ち入りが許されている範囲を探したが、一羽しか発見できなかった。一羽になった時期が市内外で鳥インフルエンザの感染確認が相次いだタイミングと重なるが、他の野鳥を含め、死骸などはなかった。取材中、タヌキやネコなどの小動物に遭遇することは多かった。

 残る一羽は二十七日午前、第二鳥居付近の茂みで姿を確認。けがをしたのか、とさかが黒ずみ、じっとしていた。市農業センターの畜産担当職員によるとオスの成鶏とみられ、見た目は名古屋コーチンに似ているが、とさかの形状などが違うことから別の種か交雑種と考えられる。

 そもそも熱田神宮はニワトリを飼育しているわけではない。総務課職員は「昔、夜店などでヒヨコが売られていた時代に成長して飼えなくなった人が捨てていき、繁殖したのでは」。ニワトリは日本の神話にも登場するゆかりの深い動物で、境内で殺生するわけにもいかず、手をこまねいているうちに一時爆発的に増えたという。神宮側は現在、境内への鳥獣の持ち込みを禁じており、献納も受け付けていないため、まさに最後の一羽になるという。

 一九七七(昭和五十二)年九月二十日付の本紙記事によると、その数は「二百五十羽ほど」。参道に群れるニワトリの写真とともに、子どもが突かれるなどの被害に神宮側も悩んでいる−と伝えている。

 神宮の南側で生まれ育った東部木之免(きのめ)町内会の小貝勲会長(72)は「昔はハトやカラスより多く見かけた。神宮と言えばニワトリのイメージ」。かつて境内に店を構えていたうなぎ料理店「あつた蓬来軒」の鈴木淑久社長(43)も「子どもの頃から当たり前の存在だった」と振り返る。

 いつごろ、なぜ減ったかは不明だが、野生動物に襲われたり、近親交配が進んだりしたことが原因の可能性もある。

 熱田神宮を中心とした町おこしに取り組む「あつた宮宿会」代表も務める鈴木社長は「どうすることもできないが、このまま姿を消してしまうのはやっぱり寂しい」とつぶやいた。

 (安藤孝憲)

 

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