次世代型デバイス「Superbook」で、スマホがラップトップに
3 Lines Summary
- ・「Superbook」開発者、Andrew Joh氏にインタビュー
- ・Androidスマホがラップトップになるデバイスを開発
- ・「スマホがあれば事足りる未来」を目指す
私たちは、肌身離さずスマートフォンという小型コンピューターを持ち歩くようになった。ネット検索やエクセルの更新、写真の管理まで、大概のことはスマートフォンで行える。それならば、スマートフォンをラップトップのように使うことはできないか。そんな発想のもとに誕生したのが、Sentio社が手がける「Superbook」だ。共同創業者でCEOのAndrew Joh氏に話を聞いた。
Androidスマホがラップトップに早変わり
Superbookは、Androidのスマートフォンをラップトップに変えることができるドックです。見た目はまるでラップトップのようですが、Superbookはあくまで「シェル」(入れ物)に過ぎません。USBケーブルを使ってAndroidスマートフォンをシェルに接続することで、スマートフォンがラップトップの画面サイズに最適化され、コンピューターとして機能するのです。
これは、Superbookに搭載されたチップとAndroidスマートフォンを接続することで、スマートフォン上のすべてのコンテンツをSuperbookにミラーリング(映し出す)しています。「Sentio」という専用アプリを使うことで、小さいスマートフォンの画面が、デスクトップインタフェースに置き換わるのです。
HDスクリーン、マルチタッチのトラックパッド、ショートカットにも対応したキーボードなど、Superbookのスペックは従来のラップトップと同じ。1回充電すれば、最長8時間使うことが可能です。通常価格は139ドルですが、事前予約(北米・カナダ・中国・インドで受付中)なら119ドル。出荷は、今年の7月を予定しています。
これまでの売上げは350万ドル以上で、2017年には小売店への販売も含めて500万ドル〜1,000万ドルの売上げを見込んでいます。
低価格でラップトップを持ち歩ける
通常のラップトップが1,000ドル〜2,000ドルすることを考えると、Superbookの139ドルという価格帯は非常に安価。幅広い人たちにとって選択肢になるはずです。例えば、両親が子どものためにSupberbookを買うケースも増えています。子どものために高額なラップトップを購入するのは躊躇しても、すでに持っているスマートフォンを活かせるならと関心が高まっているのです。
Superbookが想定する主なユーザは、ビジネス旅行者です。出張中、高額で重いラップトップを持ち歩きたくない人たち。プログラミングをするエンジニアには力不足かもしれませんが、メールをチェックしたり、ネットを検索したり、Microsoft Officeを使うだけなら十分に事足ります。また、仮にSuperbookを紛失してしまっても安価なため諦めがつき、大事なデータはスマートフォンに保存されているため問題ありません。
Superbookはスマートフォンで動くため、常にインターネットに接続された状態です。4GやLETを使えるため、家やオフィスの外で仕事をする際に、Wi-Fiが使えるカフェを探す手間が省けます。また、次々に新製品が登場する従来のラップトップは買い換える必要がありますが、Superbookなら、手持ちのAndroidスマートフォンをアップデートするだけで最新の状態をキープできるのです。
Kickstarterでの成功と最大の課題
私たちは、2016年7月にKickstarterでキャンペーンを開始しました。当初の目標調達額は5万ドルでしたが、初日だけで30万ドル、最終的に約300万ドルを調達することができました。
実は、これより前に同じドックのアイデアで資金を募ったのですが、似たようなテクノロジーだったにもかかわらず、失敗に終わりました。でも、その経験があったからこそ、万全の準備を期して2度目に臨むことができたと思っています。Superbookの製造工場を見つけるのには苦労しましたが、何度も現地を訪ねて交渉を重ねた結果、素晴らしい実績を持つ製造元と巡り会うことができました。
Androidスマートフォンを使って、デスクトップと同じようなマルチウィンドウ×マルチタスクの体験を提供するためには、ハードウェアよりソフトウェアが肝心です。一見すると、Sentioはハードウェアスタートアップに見えるかもしれませんが、私たちはソフトウェアにこそ注力しています。今後、ハードウェアで似たようなことを試みる競合が出てきても、ソフトウェア環境への投資を続けることが差別化になるはずです。
始まりとシリコンバレーという土地
私は金融コンサルティング会社でキャリアをスタートし、3年ほど前にシリコンバレーに引っ越しました。その後、政府機関でシリコンバレーのテクノロジーを活かすために、データサイエンティスト集団から成るNGO「Bayes Impact」を立ち上げました。Bayes Impactは、インキュベーター「Y Combinator」にも参加し、ゲイツ財団から出資を受けることもできました。
それと同じ頃、Setioを共同創業したGordon Zhengは、Googleのシニア・ソフトウェアエンジニアでした。彼は、Googleの「20% Time」プログラム(社員が、その時間の20%を仕事に直結しないプロジェクトに使える)を活用して、Superbookのアイデアをピッチしました。残念なことに彼のアイデアは却下されましたが、Gordonはそれを自ら立ち上げることに。そして1年半ほど前に私もジョインし、Sentioが誕生したのです。
シリコンバレーには、まず人的ネットワークがあります。お金と人材という、どのスタートアップも頭を悩ます2つを一箇所で解決できる場所。投資家や創業者が溢れていて、挑戦者のサポート環境が優れています。それ以上に、Androidはシリコンバレーというこの土地で産声をあげました。そのため、私たちが必要とするAndroidの開発者を見つけるために、これ以上の場所はありませんでした。
スマートフォンさえあれば事足りる世界
少し前に南アフリカに行ったのですが、Superbookの教育分野への導入が始まりそうです。ネルソン・マンデラ財団のメンバーに会い、Mandela Day School Libraryという図書館に、500台のSuperbookを寄付することが決まりました。それにより、スマートフォンに馴染みのあるアフリカの子どもたちに、コンピューターを使うのと同じパワーを与えることができます。超基本的なプログラミングさえも学べるかもしれません。
私たちは、スマートフォンというコンピューターしかいらない未来を描いています。家を出るとき、スマートフォンさえ持っていればいい。これを実現するには、スマートフォンより大きなスクリーンが必要であろう、あらゆる場面を想定しなければいけません。例えば、空港、職場、学校、Uberの後部座席など、どこにもスクリーンを用意することができれば、スマートフォンひとつで、いつどこでも生産性を高めることができるはずだからです。
いつかAndroidスマートフォン上でAndroidのアプリケーションを開発できるようになることを夢見て、まずは、Superbookの環境をしっかり整えることに注力していきます。
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