温泉の硫化水素事故防止へ 基準の改正案まとまる
温泉施設での硫化水素による事故を防ぐため、環境省の検討会は27日、施設の設備や構造などに関する基準の改正案をまとめました。浴室内の換気を24時間行うなど施設や自治体に対し、安全対策の強化を求める内容が盛り込まれています。
3年前、北海道足寄町の温泉施設で入浴中の男性が倒れて意識不明の重体となる事故があり、その後、浴室から国の基準を大幅に上回る高い濃度の硫化水素が検出されたことを受けて、環境省の検討会は、去年から温泉施設の設備や構造など、安全対策に関する基準について議論し、27日都内で開いた会合で基準の改正案をまとめました。
改正案には、硫化水素が発生する可能性がある「硫黄泉」を利用している施設に対し、浴室内に24時間連続で換気できる設備を設置することや、硫化水素の濃度を測定する際には、浴槽に温泉が注ぎ込み、特に濃度が高くなる「注入口」の付近で測ることなど、安全対策の強化を求める内容が盛り込まれています。
さらに自治体に対し、施設側から測定結果について定期的に報告を受けたり、必要に応じて立ち入り調査を行ったりするなど、安全を確保するための措置を適切に取るよう求めています。
環境省は今後、改正案をホームページで公開するなどして広く意見を聞いたうえで、ことし7月をめどに基準を改正するとともに、施設や自治体向けのガイドラインも作成することにしています。
改正案には、硫化水素が発生する可能性がある「硫黄泉」を利用している施設に対し、浴室内に24時間連続で換気できる設備を設置することや、硫化水素の濃度を測定する際には、浴槽に温泉が注ぎ込み、特に濃度が高くなる「注入口」の付近で測ることなど、安全対策の強化を求める内容が盛り込まれています。
さらに自治体に対し、施設側から測定結果について定期的に報告を受けたり、必要に応じて立ち入り調査を行ったりするなど、安全を確保するための措置を適切に取るよう求めています。
環境省は今後、改正案をホームページで公開するなどして広く意見を聞いたうえで、ことし7月をめどに基準を改正するとともに、施設や自治体向けのガイドラインも作成することにしています。
施設は対策をしっかりと 行政も監視を
環境省の検討会の座長を務めた埼玉医科大学の倉林均教授は、「『硫黄泉』についてはこれまで効能ばかりが取り上げられてきたが、数は少ないが事故も起きているので、基準の改正案では施設側にしっかりと安全対策をしてもらうとともに行政も監視することがポイントとなっている」と述べました。
そのうえで、「温泉は日本のすばらしい文化の一つなので、注意しながらも安心して楽しめるよう対策をしっかり行ってほしい」と話していました。
そのうえで、「温泉は日本のすばらしい文化の一つなので、注意しながらも安心して楽しめるよう対策をしっかり行ってほしい」と話していました。
硫黄泉の源泉 全国に1204か所
硫化水素が発生する可能性のある「硫黄泉」の源泉は全国に1204か所あり、このお湯を使っている温泉施設の浴槽は合わせて6434に上ります。
このうち環境省が、去年10月、全国の自治体を通じて行った調査で、浴室内で硫化水素の濃度が国の基準を超えた温泉施設の浴槽は合わせて33ありました。
具体的には、青森県が16と最も多く、次いで北海道が7、山形県が6、宮城県が4となっています。
また、浴室内の硫化水素の濃度を定期的に測定していなかった浴槽は5503と、全体の85%に上りました。
このため今回の基準の改正案には自治体に対し、施設側から硫化水素の測定結果について定期的に報告を受けるなど、安全確保のための適切な措置を行うことを求める内容が盛り込まれました。
硫化水素の中毒に詳しい医師によりますと、硫化水素は微量であれば人体に影響はないということですが、国の基準を超えるような高い濃度になると、意識を失うなどの事故につながる可能性があり、安全管理には濃度の定期的な測定が欠かせないということです。
また、硫化水素は空気より重く、低いところにたまりやすい性質があるため、特に背の低い子どもなどは十分な注意が必要だとしています。
このうち環境省が、去年10月、全国の自治体を通じて行った調査で、浴室内で硫化水素の濃度が国の基準を超えた温泉施設の浴槽は合わせて33ありました。
具体的には、青森県が16と最も多く、次いで北海道が7、山形県が6、宮城県が4となっています。
また、浴室内の硫化水素の濃度を定期的に測定していなかった浴槽は5503と、全体の85%に上りました。
このため今回の基準の改正案には自治体に対し、施設側から硫化水素の測定結果について定期的に報告を受けるなど、安全確保のための適切な措置を行うことを求める内容が盛り込まれました。
硫化水素の中毒に詳しい医師によりますと、硫化水素は微量であれば人体に影響はないということですが、国の基準を超えるような高い濃度になると、意識を失うなどの事故につながる可能性があり、安全管理には濃度の定期的な測定が欠かせないということです。
また、硫化水素は空気より重く、低いところにたまりやすい性質があるため、特に背の低い子どもなどは十分な注意が必要だとしています。
福島 高湯温泉の安全対策を参考に
過去の事故を教訓に独自に安全対策を進め、今回、環境省の検討会が基準の改正案をまとめるにあたって、取り組みが参考にされた施設があります。
福島市にある高湯温泉です。白く濁ったお湯が関節の痛みなどに効くと評判で、年間およそ17万人が訪れます。この温泉の源泉は、高い濃度の硫化水素を含んでいます。過去には、硫化水素が原因と見られる事故も起きていて、41年前には、入浴中の男性客が死亡しました。
これを教訓に各温泉施設は、独自に安全対策を進めてきました。高湯温泉で温泉宿を経営する遠藤淳一さん(61)は、環境省の検討会の委員も務めていて、今回の基準の改正案をまとめるにあたって、これまでに行ってきた取り組みが参考にされました。
対策の一つ目が、源泉からお湯を施設の浴槽まで運ぶ水路の構造です。中に木の板を何枚も入れて階段状にしています。お湯が板を乗り越えて落ちる際に空気に触れるため、硫化水素の濃度を下げることができるということです。
入浴客が利用する浴室には、さらに多くの対策を施しています。源泉からのお湯が浴槽に注ぎ込む「注入口」は、浴室内でも最も硫化水素の濃度が高くなりやすいため、すぐそばの壁に換気孔を設けています。
さらに、その真上には24時間動く換気扇を設置。万が一、故障して止まることがないよう、点検も欠かしません。
浴室内の硫化水素の濃度も毎日2回以上、測定しています。この際もやはり、最も濃度が高くなりやすい「注入口」の付近を中心に測定します。
こうした取り組みは、入浴客の安全を守るうえで効果的だとして、基準の改正案に盛り込まれたほか、今後、基準に基づいて施設や自治体向けに作られるガイドラインにも掲載される見通しです。
遠藤さんは「昭和40年代に硫化水素が原因と見られる本当に残念な事故があったので、それをきっかけに高湯温泉全体で取り組もうと始めた。安全対策を徹底し、お客さんに安心して入浴していただくことがいちばんのサービスだと考えています」と話していました。
福島市にある高湯温泉です。白く濁ったお湯が関節の痛みなどに効くと評判で、年間およそ17万人が訪れます。この温泉の源泉は、高い濃度の硫化水素を含んでいます。過去には、硫化水素が原因と見られる事故も起きていて、41年前には、入浴中の男性客が死亡しました。
これを教訓に各温泉施設は、独自に安全対策を進めてきました。高湯温泉で温泉宿を経営する遠藤淳一さん(61)は、環境省の検討会の委員も務めていて、今回の基準の改正案をまとめるにあたって、これまでに行ってきた取り組みが参考にされました。
対策の一つ目が、源泉からお湯を施設の浴槽まで運ぶ水路の構造です。中に木の板を何枚も入れて階段状にしています。お湯が板を乗り越えて落ちる際に空気に触れるため、硫化水素の濃度を下げることができるということです。
入浴客が利用する浴室には、さらに多くの対策を施しています。源泉からのお湯が浴槽に注ぎ込む「注入口」は、浴室内でも最も硫化水素の濃度が高くなりやすいため、すぐそばの壁に換気孔を設けています。
さらに、その真上には24時間動く換気扇を設置。万が一、故障して止まることがないよう、点検も欠かしません。
浴室内の硫化水素の濃度も毎日2回以上、測定しています。この際もやはり、最も濃度が高くなりやすい「注入口」の付近を中心に測定します。
こうした取り組みは、入浴客の安全を守るうえで効果的だとして、基準の改正案に盛り込まれたほか、今後、基準に基づいて施設や自治体向けに作られるガイドラインにも掲載される見通しです。
遠藤さんは「昭和40年代に硫化水素が原因と見られる本当に残念な事故があったので、それをきっかけに高湯温泉全体で取り組もうと始めた。安全対策を徹底し、お客さんに安心して入浴していただくことがいちばんのサービスだと考えています」と話していました。