南スーダン国連PKO派遣部隊の日報をめぐる問題は文民統制の根幹を揺るがす危機である。防衛省・自衛隊側の説明をうのみにはできない。政府も国会も全力を挙げて、真相解明に努めるべきだ。
これまでの経緯を振り返る。日報は南スーダンの国連平和維持活動(PKO)に派遣されている陸上自衛隊部隊が作成したものだ。
政府軍と反政府勢力との大規模衝突が発生した昨年七月のものが同九月に情報公開請求され、十二月二日に廃棄済みを理由に不開示決定が通知されたが、実際には二〇一二年の派遣以来、すべての日報が統合幕僚監部(統幕)に電子データで残されていた。
統幕は昨年十二月二十六日に電子データの存在を把握したが、稲田朋美防衛相に報告したのは一カ月後の今年一月二十七日。公開された昨年七月の日報には「戦闘が生起した」ことや、自衛隊宿営地近くでの「激しい銃撃戦」などが記されていた。
最大の問題は、統幕が日報の存在をなぜ一カ月も稲田氏に報告しなかったのか、である。
不開示決定の通知前、防衛省文書課は統幕にも意見照会しており、情報開示請求を把握していたはずだ。統幕側は「黒塗り部分を決めるのに時間がかかった」と説明するが、日報の存在だけでも直ちに報告すべきではなかったか。
統幕が意図的に報告を遅らせていたとしたら、防衛相の指揮監督からの逸脱を、意図的でなかったとしたら、怠業を意味する。そのどちらであっても、自衛隊が首相や防衛相ら文民の統制に服するシビリアンコントロール上の問題を指摘せざるを得ない。
防衛省・自衛隊を含む政府はもちろん、国会も国政調査権を駆使して徹底調査し、事実関係を解明すべきだ。場合によっては統幕関係者の国会招致も必要となろう。
制服組トップの河野克俊統合幕僚長は事実上、日報には「戦闘」という文言を使わないよう部隊に指示したことを明らかにした。
戦闘をほかの言葉に言い換えても厳しい情勢は変わらない。最も重要なことは現地の状況を正確に伝えることだ。部隊は撤収を検討すべきではあるが、派遣を継続するにしても、正しい情報を欠いては正しい判断はできない。統幕長は指示を撤回すべきだ。
そもそも日報を短期間で廃棄したこと自体が問題だ。日報は今後の部隊運用を検討する上で重要な資料となる。保管期間の延長を検討するのは当然である。
この記事を印刷する