2を2として成立させた逢田梨香子とAqoursの底力―「ラブライブ!サンシャイン!! Aqours First LoveLive!」2日目

 「2回目」って難しい。特に最初うまくいった次の2回目はどうしても成功の幻影が残り、それを追いかけてしまいます。成功を再現しようとするから新鮮な気持ちで取り組めず、目の前のことに集中できない。「今」で勝負できなくなってしまうんですね。似たような経験は、皆さんもお持ちではないでしょうか。

 しかし1万数千人、いいえ、数万、十数万人の前で失敗するなんてこと、そうそうあるものではありません。ましてや、人前でピアノ演奏を披露したことがほとんどないような人であれば、頭が真っ白になってしまうでしょう。

 よほど経験がないかぎり、大失敗からリカバリしてきちんと戻ってくるのは至難の業。あそこですぐさま曲を止める判断を下したのはお見事でした。

 

 アイドルという存在は不思議なもので、失敗は許されるんです。失敗もひとつのコンテンツとして捉えられる。どこかのフィルハーモニー楽団の人が演奏を止めてしまっても、「がんばれー!」なんて声は飛んでこないですよね。

 アイドルは未熟であってもいい。でもそのかわり、成長を求められます。何かができるようになった、困難を乗り越えた、夢が叶った……ハードルを越える姿、越えようとする姿が要求されるのです。特に「ラブライブ!」はそのプロジェクトモデル上、その傾向が強いかもしれません。

 逢田梨香子さんは、その要求にわずかな間で見事に応えてみせました。あの再チャレンジが3回目になってしまうと、できるのかな、大丈夫かなと不安になったり、ともすれば白けたり、また違う感情が芽生えてしまいかねない。でも2回目で成功させたからこそ、みんながひとつになったまま終えることができました。

 本当にすごいことだと思います。頼むから間違えないでと固唾を呑んで見守ったラスト一音を、震える指で弾き切った瞬間は忘れられません。しかも、今日の席は下手側のステージすぐ近くだったのですが、見ればペダルまで使って演奏している。そして8人と一緒に歌いながら弾いている。それでいて、落ち着いたと思ったら「マジごめ〜ん……」ですからね! すばらしいメンタリティです。

 後悔はしないでほしいし、彼女の中で良い思い出として振り返られる瞬間になっていてほしいと願わずにはいられません。あの一連のドラマのようなリアルを生み出した(本人としては「生み出してしまった」ものかもしれませんが)のも逢田さんであれば、見事綺麗に幕を閉じてみせたのも、他ならぬ逢田さんなのです。「2」を「3」にしなかったあの演奏を、心から讃えたいと思います。

 

Aqoursが見せた「2」歩

 2日目、2回目の演奏、2ndライブ発表、TVアニメ2期決定。この日のライブには、色々な「2」が詰まっていました。

 思えば、「ラブライブ!サンシャイン!!」も「2」なんですよね。「ラブライブ!」シリーズの2番目。冒頭に書いた「2回目って難しい」の適用対象でもあります。ましてや、特にうまくいった後の2回目ですから、なおのこと。前と比べてどうだろうと品定めされますし、自分自身でもうまくいった1回目を意識してしまうものでしょう。

 でもその中で、Aqoursは自分たちの形を模索し、少しずつ掴みつつあります。アニメの中のAqoursも、僕らが見てきたリアルのAqoursも然り。今回のライブで見えた彼女たちの形は1日目の記事で書いたので、今日は多くを語りませんが、ピアノの失敗にしてもそうです。あんな盛大にミスった「ラブライブ!」のライブは初めて。でもそれさえも何かに結実させる。「想いよひとつになれ」はすっかり桜内梨子の曲になりました。Aqoursの「ラブライブ!」は、たくましいのです。

 ライブならではのパーソナリティも、この2日間でたくさん見せてくれました。前述した強いメンタリティでライブを作り上げた逢田さん。ずっと元気に楽しそうにはしゃいで回る斉藤朱夏さん。思いやるリーダーシップと堺雅人さんばりのニッコリ笑顔が魅力的な伊波杏樹さん。ヨハネこと津島善子をとことん大事にしている小林愛香さん。あんなに小さいのに力強さを感じさせる言葉とダンスを披露した降幡愛さん。ナチュラルな存在感が実に国木田花丸らしかった高槻かなこさん。なぜか惹かれる不思議な魅力と芯の強さを見せつけた諏訪ななかさん。黒澤ダイヤにそっくりな、美しさの中のお茶目さを醸し出した小宮有紗さん。共感性の高さにやさしさと役者らしさを感じさせた鈴木愛奈さん。この9人は、この9人しかいない。だからこそできたライブです。これまでの一歩と、これからの一歩。確かな「2」歩を、Aqoursは見せてくれました。

 今日は2月26日。「ラブライブ!サンシャイン!!」のプロジェクトが発表されてから、ちょうど「2」年です。

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