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奨学金、国が給付型新設 大学や企業も独自に支援

 

2017/2/26

 経済的に不安がある学生が大学への進学を考えた場合、学費を賄う手段に奨学金がある。公的な制度だけでなく、大学や企業も独自に支援しており、内容は多彩だ。国が新たに返済不要な「給付型」奨学金を設置する(本格実施は2018年度、特に経済的に厳しい学生には17年度に先行実施)のを機に制度全体を見渡した。返済が必要なものもあるので、利用する際には親も一緒に考えたい。

 新たな奨学金の設置は17年度の国の予算の目玉だ。「意欲と能力があるのに経済的な事情で進学を断念せざるを得ない人の進学を後押しする」(文部科学省)のが趣旨。国にはこれまで返済義務のある「貸与型」しかなかった。

 対象は年収が低い(住民税非課税)世帯の学生。給付月額は2万~4万円で国公立や私立大学、自宅や自宅外といった通学形態で異なる。年間の大学(昼間部)の学費と生活費の合計が国立で約150万円、私立なら約200万円というデータがあることを考えれば、金額は十分ではない。

■所得連動返済も

 奨学金には返済が必要な「借りる」奨学金と不要な「もらう」奨学金がある。前者が貸与型、後者が給付型だ。貸与型には無利子もあれば有利子もある。

 多くが利用するのが日本学生支援機構(JASSO)の奨学金だ。貸与型の代表で国が実施する。無利子の第1種と有利子の第2種があり、年間の貸与者数は130万人を上回り、金額も1兆円を超える。

 この貸与型奨学金も国の給付型新設とともに17年度から一部変更される。無利子タイプでは、低所得世帯の学生の成績基準の撤廃や予算上の制約で貸与を受けられなかった学生の解消で、貸与者数を4.4万人増やす。

 無利子タイプでは17年度の新規貸与者から返済に所得連動方式を導入する。これまでは年収にかかわらず毎月決まった額を返す定額返還方式だけだったが、卒業後の収入に応じ、少なければ返済額を減らせる。ただし返済総額は変わらないので月の返済額が少なければ期間は延びる。貸与開始時にどちらか選び、終了時までに変更できる。

 こうした公的な制度とは別に各大学は独自の奨学金を多数そろえる。「近年増えているのが『予約型』などと呼ばれる給付型の新たなタイプ」と話すのは、奨学金のセミナーや相談を多数手掛ける「奨学金アドバイザー」の久米忠史氏。大学独自の奨学金は入学後に申請するものが多かったが「予約型は受験前に申請し採用も決まるものが多いので、安心して試験を受けて入学できる」と久米氏は続ける。

 先行したのは早稲田大学の「めざせ!都の西北奨学金」。首都圏以外の学生向けに09年度に交付を始めた。以前は半期分の授業料を4年間支給したが、17年度入学者から半期分の授業料相当額を免除する方式に変えた。採用枠は約1200人。関西大学も「学の実化(じつげ)」と名付けた予約型を設置。立教大学は新たに首都圏の学生を対象にした「セントポール奨学金」(採用が分かるのは合格発表時期)を始めた。

■企業財団が実施

 給付型は企業財団が手掛けるケースも多い。指定の大学に枠を設け、そこに通う学生を対象にする。三菱UFJ信託銀行の奨学財団の場合、給付額は大学生なら月3万5000円。17年度は約150人の新規採用を予定する。

 一部を除いて今後の奨学金の申し込みは、多くが18年度の受験生となる。給付型を考えるなら、各種の条件や締め切りといった情報収集が欠かせない。ただし一般に採用人数が少なく、金額も十分ではない。給付型だけに頼った計画はリスクも大きい。貸与型を併せて検討する必要があろう。

 貸与型は借りすぎに注意したい。「安易に考えず、無理のない返済計画をシミュレーションするなど、よく考えて申し込む」とファイナンシャルプランナー(FP)の畠中雅子氏は話す。給付型も貸与型も早めの準備が肝心。「子どもの将来を考えて親が積極的にかかわる」(畠中氏)ことが重要だ。(土井誠司)

[日本経済新聞朝刊2017年2月18日付]

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