2017年2月26日日曜日

宮田律『アメリカはイスラム国に勝てない』


軍事介入の帰結

第6代米大統領ジョン・クインシー・アダムズは「アメリカは倒すべき怪物を探しに海外へ行ったりしない」と述べ、国外での軍事介入を強く戒めた。戦乱に明け暮れる欧州の教訓からだ。しかし戒めを忘れた米国は自業自得の苦境に陥る。

本書は、米国の介入が海外の政治情勢を悪化させ、自身を泥沼に陥れた諸事実を描く。中東では、イランの石油産業を国有化したモサッデグ政権を、1953年に米中央情報局(CIA)が中心になり打倒したが、誕生したのはパフラヴィー独裁体制だった。

南米のチリでも米国は、1973年にアジェンデ政権を倒したが、ここでもピノチェトの軍部独裁政権をもたらす。1980年以降、2014年のシリアまで14のイスラムの国を軍事攻撃するが、いずれも著しく安定を失うだけに終わる。

自分で自分の首を絞めるような行為も少なくない。米国は1980年代のアフガニスタンでの対ソ戦の際、イスラム教徒ゲリラのムジャヒディンに武器や資金を与え、軍事訓練を施したところ、それがのちに国際テロ組織アルカイダとなる。

こうした失敗にもかかわらず、2014年にはシリアの「穏健な武装勢力」に5億ドルの資金協力を決定する。「何も教訓を学んでいない」という著者の批判はもっともだ。財政が破綻するまで、米政府の愚行は終わらないのかもしれない。

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