AMD AM4プラットフォームを全力で批判する

 年内に発売されると予想されているSocketAM4プラットフォームのCPU/APUですが、改悪点が数多くみられたため批判したいと思います。

ソケットの統一

 一発目から無駄なことをしてくれました。何のためにFM/FS/AMの3ソケットを作ったのかわからなくなります。普通に考えればAMは互換性重視のため、APUに対応するためにFMを登場させ、無駄な回路を削るためにFSを作ったことは想像できますが、これではFXの電力に耐える強力な回路とAPUのグラフィックを活用する回路を全マザーに搭載する必要が出てくるため、Athlon/Sempronマザーの安さは問題外、安くてグラフィックに強かったはずのAPU向けマザーには耐久性の高いレギュレータやキャパシタが必要となり、価格の安さは見所ではなくなってしまいます。安価なマザーは回路を省略して価格を下げる必要が出てきますが、このマザーにFXを刺すと無論レギュレータが焦げることとなり、対応CPUを限定せざるを得ません。これでは本末転倒で、ソケットを統一した意味がなくなります。FX専用などを謳うビデオ出力コネクタ無しのマザーが登場しても同じことです。

 そのためほとんどの自作向けマザーボードにはビデオ出力コネクタが搭載されることとなりますが、これにFXシリーズを搭載するとコネクタは何の意味もなさないことになります。あるいはグラフィックなしCPUをサーバ向けCPUであるOpteronのみにすると言うことなのかもしれません。そうなれば内蔵グラフィックを嫌う(≒ビデオカードを刺したい)自作ユーザは入手困難なOpteronではなくXeonに逃げることとなりましょう。

インテルに降伏宣言、寝返るAMD

 これまでAMDは断固として論理CPUコアを実装してきませんでした。これは論理CPUを構築する足かせが不要と言うことであり、実際に単スレッドの性能を向上させることが可能でした。その上AMDは物理コア数を増やすのが得意でしたので、Pentium4時代にインテルに勝る性能を実現し、最速を思うがままにしたという過去があります。しかし、AM2ソケット以降AMDの周波数あたりの処理能力は向上していません。その間に急激に勢いを増したインテルは1.4GHzのCeleronで3.5GHzのA6を超える性能を実現しました。それでもなお強力なマルチスレッドのFXと強力な映像処理のAPUでAMDの信念を貫き、一定の支持を得ていたAMDでしたが、AM4では論理コアを実装するとしています。これは事実上の降伏宣言です。

 AM4発表による降伏宣言はこれで終りではありません。AMDはこれまでVIAと同じくDDR3までの対応としていました。実はAMDはVIAなどとともに、SDR時代にインテルが強く推し薦めたDRDRAM、通称RIMMを未完に終らせ、圧勝したことがありました。やむなくインテルはVIAが主導したDDR1を採用することとなりました。そして今回、インテルがDDR4を採用したときには価格が高く、カスレイテンシも高く、容量も少なかったので勢いはDDR4に移りませんでした。筆者はDDR4が第二のRIMMの道を歩むと想像したのですが、どうもそうではないようです。AMDには以前のような力はなく、VIAは自作業界において虫の息です。DDR3を採用し続ければ未来はたかが知れており、VIAには新しいモジュールを主導する力は残っていませんでした。ようやく価格もこなれ、速度も上がってきたDDR4を見とこれ見よがしに採用することにしたようです。組込み業界で近年、AMDはVIAに追出されたこともありますから、VIAの見方をするつもりは元々なかったというのも一因かも知れません。話はずれますが、VIAもDDR4を採用するでしょう。只、この件に関してはインテルの思惑通にはならなかったという見方もあります。インテルがAMDとの差をつけるためにDDR4を採用したとすれば、AMDがDDR4を採用することによって性能面で差をつけることが困難になります。それでも売行きがDDR4に傾く分、インテルが有利に開発を進められるようになるのは確かでしょう。

 これは推測に過ぎませんが、AM4ではPCIのネーティブサポートが打切られるかも知れません。現にインテルはPCIをサポートしておらず、マザーボードベンダがブリッジをかますことに依る独自の対応となっています。詳しくは次章で触れますが、AMDはこれまでとの互換性を切捨てる方針のようです。Windows9xがインストールできなくなることも十分に考えられます。

性能を求めて互換性を一掃、古来の利用者を切捨てる

 SocketAM2マザーでPhenomが動き、SocketAM3+マザーでもPhenomが動く…。世代を超える互換性が魅力のAMDですが、SocketAM4ではこれまでのすべてのCPUと双方向に互換性をなくす方針とのことです。CPUとマザーボードの購入時期をずらすことで一度の価格的な打撃を和らげたり、何度もケースの中をいじくれる楽しみを求めてきた利用者にとってこれは痛い一手になることは間違いありません。確かにソケットを変えなかったことに依る性能向上の難しさは多少あったかも知れません。しかしそうとは言切れません。新たなソケットであるFM2がFXに劣る性能しか持ち合せていないのです。つまりまだAM3自体性能の限界には達しておらず、ソケットの性能を腐らせていることは考えればわかります。AM4、ZENでは驚くべき性能向上を行うとしていますが、既に時間がたちすぎているためインテルを超えるとはとうてい思えませんし、そもそも現在のAMD派がそこまでの性能差を感じ取ることが果して出来るでしょうか。失敗の可能性は否定できません。

 AMD 9xxチップセットの特徴として、64GBの超大容量メモリを載積できるというものがありました。ハイエンド好きの貧乏人はここで大打撃を受けることとなります。AM4がDDR3をサポートしない予定という事実です。せっかく買いそろえた16GBのDIMMx4はAM4では使用できないのです。CPU、メモリ、マザーボードの同時購入を強いられることとなり、出費は多大なものとなるでしょう。通常電圧版のDDR3を使用できるインテル向けマザーボードは各社から発売されており、そちらを購入した方が出費を抑えられることは確かです。自殺手としか思えないAM4の改変ですが、それほどの自信があるのか、互換性を残すだけの力もないのか。実際の製品の登場に期待が集ります。

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