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ひずみ生む 検査の隙 学校乱立の陰で(5)

福岡入国管理局の不開示決定通知書(右)と、黒塗りとなった審査基準。日本語学校への行政指導は「存在するかどうかも答えることを拒否する」と書かれていた(写真の一部を加工しています)
福岡入国管理局の不開示決定通知書(右)と、黒塗りとなった審査基準。日本語学校への行政指導は「存在するかどうかも答えることを拒否する」と書かれていた(写真の一部を加工しています)
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 授業中に留学生が賭けトランプに興じていた福岡県内の専門学校。「学校崩壊」が起きる背景に、系列日本語学校の卒業生を進学させる「囲い込み」があると連載の1回目に書いた。

 福岡入国管理局の担当者は、囲い込みが「本人の自由を奪う人権侵害に当たる」とし、「例年指導しているが、学校側は『ちゃんとします』と。そういうやりとりを繰り返している」と説明する。

 入管と学校、相互依存

 現状は改善されていない。どんな行政指導をどのくらいの頻度で行ってきたのか。取材班は先月20日、福岡入管に行政文書の開示請求をした。今月9日、入管は「不開示」を決定。その理由はこうある。

 「公にすることにより、(学校)法人の権利、競争上の地位、正当な利益を害するおそれがある」

 7日には、留学生の在留資格や日本語学校への審査基準を開示請求した。9日に58ページの文書が開示されたが、例えば「次に該当する場合は在留資格を更新しない」とする項目はすべて黒塗り。学校に「実地訪問する場合」の確認項目もすべて黒塗り。

 不開示とした部分の理由はこうある。「公にすることにより、(入管の)事務の適正な遂行に支障を及ぼすおそれがある」

 二つの不開示からみえてくるのは、留学生への人権侵害が続いているのに、学校法人の利益や入管の事務を理由に説明を拒む姿勢だ。取材班は昨年12月から福岡入管に何度も通い、賭けトランプや囲い込みの実態、その他の不正疑惑を伝えたが、福岡入管は「調査するかどうか、個別事案はお答えできない」とするだけだ。

   ◇   ◇

 ある日本語学校経営者は「入管は書類審査専門で、留学生の入国時も在留管理も実務は日本語学校に丸投げしている」と解説する。以前は一般財団法人「日本語教育振興協会」が3年に1度、日本語学校を立ち入り調査していたが、2010年の事業仕分けで権限は入管に移った。

 だが、入管関係者は「人手不足で定期検査はできない。日本語学校に事実上、管理をお願いしているのが実態だ」と明かす。不開示決定や黒塗りの向こう側に、監視する側と、監視される側が相互依存する構図が透ける。

 「そもそも、入管当局が専門外である教育機関を監督する今の仕組みがおかしい」と北部九州の日本語学校校長は言う。

 日本語学校は入管が監督するが、進学先の専門学校の許認可権を持つのは都道府県。ここも「補助金を出しているわけではなく、私立高のように細かい報告は求めない」(福岡県私学振興課)。

 教育機関とは言い難い「名ばかり学校」が出現する背景には、留学ビジネスを巡るチェック態勢のエアポケットという構造的な問題がある。

おわり

=2017/02/18付 西日本新聞朝刊=

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