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最新報告!血糖値を下げるデルタパワーの謎
健康

最新報告!血糖値を下げるデルタパワーの謎

2017年2月22日(水)午後7時30分
NHKオンデマンドでご覧いただけます 番組内容を印刷する

「最新報告!血糖値を下げるデルタパワーの謎」をご覧になった皆様へ

今回、放送後に多くのご指摘をいただきました。
番組は、“睡眠を改善することで血糖値が下がる”という医療現場の最新研究を紹介したものでした。糖尿病の背景のひとつに睡眠の問題があることをお伝えするのが、番組の主旨でした。

しかしながら、説明が不十分だったり行き過ぎた表現があったりしたため、「睡眠薬の不適切な使用を助長しかねない」「副作用を軽視している」などと、ご批判を受けました。
視聴者の皆様、医療現場の皆様、関係者の皆様に誤解を与え混乱を招いてしまったことを、深くお詫び申し上げます。以下に、ご説明いたします。

★睡眠障害と血糖値の関係について

睡眠障害が血糖値の異常をもたらすことは、シカゴ大学など様々な研究機関から報告されており、広く知られています。大阪市立大学医学部附属病院では2015年から、糖尿病患者のうち睡眠障害を合併している方を対象に、睡眠薬を使って睡眠障害を改善する臨床研究を行っています。睡眠障害が改善したことで、17人中、14人の血糖値が改善したというデータを番組ではお伝えしました。
しかし、番組内に「睡眠薬で糖尿病の治療や予防ができる」などの行き過ぎた表現や短絡的な表記があり、あたかも睡眠薬を糖尿病の治療や予防に、直接使えるかのような誤解を与えてしまいました。あくまでも睡眠障害と診断された方に対して、医師が睡眠薬の処方が必要であると判断した時にしか行えないことを、もっと明確に述べるべきでした。

★番組に登場した睡眠薬と、その副作用について

今回、番組では、「オレキシン受容体拮抗薬」という睡眠薬を中心に紹介しましたが、これ以外の睡眠薬にもそれぞれ利点があり、血糖値が下がったという研究も報告されています。
番組で「オレキシン受容体拮抗薬」をとりあげたのは、大阪市立大学医学部附属病院が、「運動障害の副作用の報告が少ないことに加えて、睡眠により選択的に効果があり、睡眠の改善と血糖管理の関係を見やすい」という理由で、この薬を使用していたためです。
番組では、「副作用は少なくなっていますが医師の指示に従って服用してください」とお伝えした一方で、「副作用の心配がなくなっている」などという表現がありました。運動障害の副作用は少ないとはいえ、悪夢や頭痛などの別の副作用は報告されており、大変不適切でした。
スタジオにご出演頂いた専門家は、「GABA受容体作動薬」、「メラトニン受容体作動薬」など他の薬剤についても説明されていましたが、その内容を十分にお伝えできない編集となってしまいました。また、薬剤名がわかる状態で薬を手に持つ映像を紹介したことも、あたかも番組や病院が、この薬だけを推奨しているかのような印象となってしまい、配慮に欠けていました。
睡眠障害の治療には、生活習慣の改善など様々な選択があり、睡眠薬を使用するかどうか、どの種類の睡眠薬を選ぶかなどは、かかりつけの医師や睡眠専門の医師の判断に従ってください。

この混乱を招いてしまった原因は、ご出演して頂いた専門家ではなく番組にあります。お詫び申し上げます。

今回のお役立ち情報
01

熟睡(デルタパワー)と血糖値の意外な関係

デルタパワーという聞きなれない言葉。実は熟睡している時にでる脳波「デルタ波」の量を示す言葉です。デルタパワーが少ないと血糖値が上昇、するとまたデルタパワーが少なくなってしまうという「負のサイクル」が起きていることが分かりました。そこで、熟睡をしてもらうことで、デルタパワーを復活させて血糖値を下げようという新しいアプローチが始まっています。
対象となるのは糖尿病患者さんの中でも、「よく眠れない」など「睡眠障害」の症状を抱えた方々です。また、「熟睡が足りていない」という自覚がない場合でも「1時間を超える昼寝を頻繁にする」「仕事にさしつかえるぐらいの強い眠気を頻繁に感じる」という方は、熟睡をこころがけることが血糖コントロールに役立つ可能性があります。いずれの場合も、まずはかかりつけ医によくご相談をお願いいたします。

※特に「睡眠薬」については、医師による診断があって初めて処方されるものです。

02

十分のようで足りてなかった睡眠時間

番組の前半でお伝えしたのは「深い眠り(デルタパワー)が睡眠障害を改善し、結果として血糖値を下げてくれるという研究です。一方、後半の洞窟での実験は、睡眠の深さに関わりなく睡眠時間の長さそのものが糖尿病を予防してくれるという、異なる研究です。「洞窟でデルタパワーを感じる」「デルタパワーを増やすため洞窟に住みついた」など、洞窟とデルタパワーの関係があるかのような表現をしたことは不適切でした。実験にご協力頂いた研究機関の皆様にお詫び申し上げます。

 

普段の睡眠時間は7時間で十分に眠れていると感じているガッテンボーイに、光や音が完全に遮断された部屋で6日間過ごしてもらいました。すると初日はなんと11時間超え、その後徐々に減っていき最終日はおよそ8時間半の睡眠時間となりました。
国立精神・神経医療研究センターでは20代の被験者15人が9日間、閉鎖空間に入るという実験を行いました。すると実験前7時間半だった平均睡眠時間が同じく8時間半に延長することが分かりました。実験終了後のインスリンの分泌能力もアップ。より糖尿病になりにくい身体に変化していました。つまり8時間半が本来、体が必要としている睡眠時間で、普段は必要睡眠時間よりも一時間短い「潜在的睡眠不足」状態だったことが判明したのです。この潜在的睡眠不足が長期間にわたって続いていけば、将来の糖尿病リスクが上がってしまいます。
潜在的睡眠不足に気づく方法は、休日に遅く起きてしまういわゆる「週末の寝だめ」。平日より3時間を超えて寝だめをしてしまう場合は、普段の睡眠が足りてない証拠。寝だめをしなくてすむように日々の睡眠を増やすことが大切です。
※一般に「寝だめ」と言われますが睡眠を貯めることはできず、実際には睡眠の負債を返済している行為です。

03

ぐっすり睡眠ワザ“筋弛緩(きんしかん)法”

早く寝付き、ぐっすり眠りたいという方におすすめなのが「筋弛緩法」です。
体の緊張を解いてリラックスすることで心の緊張をほぐし、睡眠の質を改善する効果があると考えられています。


  1. 椅子に座り軽く目を閉じ、手を握り脇をしめて二の腕に力をいれる。
    肩甲骨を寄せて肩を上げる。足も上げる。
    体全体に6~7割の力を込めて5秒間キープ。

  2. ストーンと力を抜く。20~30秒間ほど筋肉がじわじわする感じを味わう。
    2~3回ほど繰り返す。


※リビングなど寝室以外の場所で行いリラックスできてから寝室に行くのがおすすめです。体や腰に痛みや負担を感じる場合は無理をしないでください。