ヒ素や鉛の検出された国有地「9割引」払い下げ、軍国教育、ヘイト文書、そして安倍総理夫妻との蜜月・・・「森友学園問題」とは何なのか〜「極右学校法人の闇」第6弾 2017.2.20

記事公開日:2017.2.20 テキスト
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(文・西原良太)

 大阪府豊中市の国有地が周辺土地価格の「9割引」で払い下げられていたことが露見し、国会でも取り上げられて問題視された「学校法人 森友(もりとも)学園」。IWJでは独自取材を続けているが、ここで改めて今回の問題の経緯を振り返ってみたい。

きっかけは、小学校の建設現場に貼られていた「教育勅語」のポスター

 事の発端は、2016年9月。豊中市議会議員の木村真氏が、豊中市内の小学校の建設現場に、教育勅語が書かれたポスターが貼られているのを見て不審に思い、財務省近畿財務局に対してその土地の売買契約書の情報公開請求を行ったことがきっかけだった。

 建設中の小学校は「瑞穂の國記念小學院」。運営者は「学校法人 森友学園」だ。

▲建設中の「瑞穂の國記念小學院」——大阪府豊中市
▲建設中の「瑞穂の國記念小學院」——大阪府豊中市
▲財務省近畿財務局に情報公開請求を行った木村真・豊中市議
▲財務省近畿財務局に情報公開請求を行った木村真・豊中市議

 国有地の売却については、取引の透明性を確保するために「公表が原則」とされている。ところが、財務局から木村氏に開示された売買契約書では、売却額などが黒塗りにされていた。

 売却額を非公表とした理由について財務局は、「公表により風評被害が生じる可能性があるとして、学園側から非公開を強く申し入れられた」と回答した。

 朝日新聞も昨年12月に情報公開請求を行ったが、同じく「非公開」とされた。

 そこで、朝日新聞が登記簿等を調べ、そこに記載されている情報から、森友学園への売却額は1億3400万円だと推測し、2017年2月9日、「国が森友学園に対して、隣接する同規模の土地の1/10の価格で払い下げた」という疑惑を報道した。この報道を皮切りに、森友学園についての様々な疑惑が噴出することになったのである。

ごみ処理のために8億円も控除!? 財務局による不可解な説明と深まる疑惑~土中からはヒ素や鉛も検出!

 朝日新聞による報道の翌日、財務局は一転して売却額を公表。売却額は朝日新聞の推測通り、1億3400万円だった。公表に応じた理由について財務局は、「国有地を不当に安く取得したという誤解を受ける恐れがある」と学園側が公表に同意したためだと説明した。

 さらに朝日新聞の報道によると、1億3400万円という価格について財務局は、「不動産鑑定価格は9億5600万円だったが、地下のごみの撤去費用約8億円を差し引いた」と説明したという。

 同じ土地は2011年7月、別の学校法人が7億円前後での購入を提示し、その後、ゴミ撤去費2億5000万円を引いた約5億8000万円での購入を希望したが、財務局は「安すぎる」と拒否している。

 森友学園の理事長・籠池泰典(かごいけ・やすのり)氏は、朝日新聞の取材に対し、ゴミの撤去費用について「1億円くらいかな」と回答したが、この後に代理人弁護士により「現時点で、はっきりわからない」と変更された。

 また、経緯の説明を求めた民進党に対し、財務省と国交省は、ゴミの撤去の事実について「確認していない」と回答している。そうなると、本当にゴミが撤去されたかどうかが怪しくなってくる。

 一方、2月15日に行われた自由法曹団大阪支部と京都支部の弁護士らによる現地視察では、地中からゴミがむき出しになっている様子が見られた。

▲工事中の地面から見える木くずやゴミ
▲工事中の地面から見える木くずやゴミ

 ごみの撤去費用が8億円余りと見積もられていたにもかかわらず、実際には1億円しかかからなかったのであれば、森友学園は7億円も安く土地を手に入れたことになる。一体どういうことなのか。

▲建設現場の様子(2月15日撮影)。門から校舎へと続くスペースは、まだほとんど整備されていない
▲建設現場の様子(2月15日撮影)。門から校舎へと続くスペースは、まだほとんど整備されていない

 さらにこの土地はもともと、ヒ素や鉛が検出され「要措置区域」とされていた。

 土中の有毒物質について、2017年2月17日の衆院予算委員会で福島伸享(のぶゆき)議員が財務省理財局を追及したが、佐川宣寿理財局長は「廃材、プラスチック、あるいは生活ゴミ等々でございます」とだけ答え、土壌汚染については明確に答えなかった。

 もし、土中のゴミ撤去はおろか、土壌汚染対策も行われていなかったとしたら、新設されるこの学校に通う子どもたちは、有毒物質にさらされるかもしれない。最大の被害者は、子どもたちなのだ。

「タダ同然で土地を手放したのではないか?」——共産党・宮本岳志衆議院議員が国会で追及

 疑惑は、これだけではない。

 日本共産党の宮本岳志衆議院議員の質疑により、売買が決まる前の段階で、除染費用として1億3176万円が森友学園に支払われていることが明らかになった。それにもかかわらず、売買契約時に、撤去・除染費用として、さらに8億円余りが値引きされているわけである。

▲日本共産党・宮本岳志衆議院議員
▲日本共産党・宮本岳志衆議院議員

 宮本議員は、除染費用として国が森友学園に支払った1億3176万円と8億1900万円の値引きを合わせておよそ9億5000万円、実質的にタダ同然で土地を手放したのではないか?と追及している。

 さらに、売却額1億3400万円のうち、森友学園が実際に支払ったのは、頭金約2700万円のみで、残りの1億700万円は10年かけて支払う、延滞利息はわずか1%の契約になっているという。

 学校法人に対して延納を認めた例は過去3年間で一例もないということで、異常な優遇だ。

理事長の籠池泰典氏は、日本最大の右派組織「日本会議」大阪支部の運営委員〜名誉校長は安倍総理夫人の昭恵氏

 では、「瑞穂の國記念小學院」とはどのような学校なのか。

 冒頭で述べたように、「瑞穂の國記念小學院」の運営者は、「学校法人 森友学園」。理事長の籠池氏は、日本最大の右派組織「日本会議」大阪支部の運営委員を務めている人物だ。

▲「瑞穂の國記念小學院」公式ホームページより
▲「瑞穂の國記念小學院」公式ホームページより

 この森友学園が現在経営しているのが「塚本幼稚園」だ。この塚本幼稚園は、園児に「教育勅語」を暗唱させ、軍歌を歌わせる軍国主義的教育で知られている。

 このような学校法人が小学校を設立する——。

 籠池氏はその経緯について、産経新聞の取材に対し「『普通』になっている小学校に、当園(塚本幼稚園)を出た子供たちが入っていくと、自分の根っこに不安を持ち始めるんです。せっかく、当園で身につけたことが潰される…。それで小学校をつくることにしたんです」と述べている。

 幼稚園における「軍国主義洗脳」ともいうべき「教育」が、『普通』の子ども達と交わることによって「解ける」ことに不満を持っているのだ。

 新たに開設される瑞穂の國記念小學院は「日本で唯一の神道の小学校」と銘打たれており、ホームページに掲載されている「教育の要」には「愛国心」「神ながらの心」「日本人DNAの呼び覚まし」と言った文言が並ぶ。

 そして、「瑞穂の國記念小學院」の名誉校長には、安倍晋三総理の妻・昭恵氏が就任している。昭恵氏は、「籠池先生の教育に対する熱き想いに感銘を受け、このたび名誉校長に就任させていただきました」というコメントをホームページ上に載せている。

▲「瑞穂の國記念小學院」公式ホームページより
▲「瑞穂の國記念小學院」公式ホームページより

 テレビ東京の番組「ゆうがたサテライト」では、昭恵氏が「普通の公立学校の教育を受けるとせっかくここ(塚本幼稚園)で芯ができたものが(公立の)学校に入った途端に揺らいでしまう」という、公立学校の教育を否定する発言をする様子が放送された(現在はホームページでの掲載は終了)。

▲夕方サテライトのHP。2/17の「番組の見どころ」に、安倍昭恵夫人と学校の関連を追及した見出しが確認できる。
▲夕方サテライトのHP。2/17の「番組の見どころ」に、安倍昭恵夫人と学校の関連を追及した見出しが確認できる。

 

 幸いこちらの動画が保存されていた。今がいつの時代かがわからなくなりそうなシーンがふんだんにあるので、ぜひ御覧いただきたい。

▲“愛国”学校ができるまで 名誉校長は安倍総理夫人 テレビ東京ゆうがたサテライト 2月17日(金)動画(dailymotionより)
 
 また、この番組について、岩上安身は以下のようなコメントを出している。

 

 昭恵氏が名誉校長ということで、森友学園と安倍総理との距離の近さに驚くが、さらに驚くことがある。籠池氏は、小学校設立にあたり「安倍晋三記念小学校」として寄付金を集めていたのだ。

 2月17日、衆院予算委員会で民進党の福島伸享(のぶゆき)議員が「安倍晋三記念小学校」について質問すると、安倍総理は取り乱しながら「今、話をうかがって初めて知ったわけでございますが」と述べ、森友学園に対する国有地の格安の払い下げにも、寄付金集めにも、「一切関係ない」と主張した。

▲塚本幼稚園退園者の方より提供していただいた「安倍晋三記念小学校」名義で寄付を募った実際の振込用紙(赤い囲みはIWJによる)
▲塚本幼稚園退園者の方より提供していただいた「安倍晋三記念小学校」名義で寄付を募った実際の振込用紙(赤い囲みはIWJによる)

 しかしこれに関しては、「あらかじめ安倍氏の内諾があった」との証言がある。
籠池氏によると、2012年9月の自民党総裁選の直前に昭恵氏を通じて「『安倍晋三記念小学院という名前にしたい』と安倍首相に申し出、内諾を得た」とのことである。事実はどうなっているのか?

さらに中国人・韓国人に対する悪質な「ヘイト文書」も配布〜公式ホームページでは「誤解を招く表現があった」と論点ずらし

 安倍総理は籠池氏について、国会の質疑の中で「いわば私の考え方に非常に共鳴している方」と述べているが、籠池氏とはどのような人物なのか。

 「軍国主義」「愛国カルト」の様子が見て取れるが、それだけではない。極右思想の持ち主の例に漏れず、中国や韓国に対する蔑視も併せ持っていた。

 「開校にあたって」という挨拶文の中には、「教える側が国を潰そうとする側の日教組(旧社会党・現民主党の大部分)・全教(共産党)であります」「塾の経営者は新左翼や在日の経営者が多いのですから日本国のことの良きことを教えない」と言った表現がそこかしこにある。

 また「邪(よこしま)な考えを持った(名前は日本人なのですが)在日韓国人・支那人」などと記載した文書を保護者に対して配布。元園児の保護者から情報提供を受けた大阪府は、1月12日、文書が憎悪表現(ヘイトスピーチ)に当たる恐れがあると問題視し、籠池氏らから事情を聞いた。

 さらに、幼稚園の公式サイトには、同園を批判するブログについて「専門機関による調査の結果、投稿者は、巧妙に潜り込んだ 韓国・中国人等の元不良保護者であることがわかりました」と書いた文書を掲載。「韓国・中国人」の部分はのちに「K国・C国人」に改められ、その後、「外国人の方に対して誤解を招く表現があったことをお詫び致します」とする文書が掲載された。明確なヘイトスピーチをしておきながら、「誤解を招く」という表現で逃げる、極右お馴染みのパターンだ。

▲韓国・中国を名指しした元の文書
▲韓国・中国を名指しした元の文書
▲国名をイニシャルに変えた文書。主張の本質は何ら変わっていない。
▲国名をイニシャルに変えた文書。主張の本質は何ら変わっていない。
▲塚本幼稚園の公式ホームページに掲載された書面。「悪意ある批判」とは何を指しているのだろうか?
▲塚本幼稚園の公式ホームページに掲載された書面。「悪意ある批判」とは何を指しているのだろうか?

 ここまでの内容をまとめると、次のようになる。

・国民の財産である国有地を、ごみ処理費用を名目に7億円以上安く森友学園に払い下げたが、実際にごみ処理が行われたか、それだけの費用がかかったのか国は確認していない。

・森友学園が経営する幼稚園では、子どもに対して軍国主義教育を施しており、現在建設中の小学校の名誉校長には安倍総理の妻・昭恵氏が就任。安倍総理と非常に近い関係にある。さらに森友学園の理事長は、安倍総理応援団の「日本会議」のメンバーで、幼稚園の園児の保護者に対して中国・韓国に対するヘイト文書を配布した。

 先述の内諾があったということであれば、安倍氏は最初から、この学校法人のポリシーがどのようなものであるかもわかっていた上で、設立を了承したということになる。学校に自らの名を冠し、夫人が名誉校長ということは、夫妻はすなわち、この学校の(差別的)主張と立ち位置を同じくする、ということであるだろうし、籠池氏への「私の考え方に非常に共鳴している」という言葉は、そういう差別的な部分ということではないのか?

 もう一点、非常に気になることがある。小学校設立の認可の経緯についてだ。宮本議員の質疑から、「用地の取得」と「学校設立の認可」の関係については、まだわからない点が多い。

 これについては今後、さらなる取材を進めていく。IWJの報道に、ご注目いただきたい。

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