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五輪費用の分担 国は何をしているのか

 約3年半後に迫った2020年東京五輪・パラリンピックの開催費用分担問題が難航している。東京都、大会組織委員会、関係自治体などの思惑や利害が絡み合っているためだ。混乱続きの東京大会への信頼を取り戻すためにも国がリーダーシップを発揮しなければならない。

     東京都外につくる仮設の競技会場の整備費約500億円について、小池百合子都知事は「都も負担することを排除せず、検討する」と述べた。開催都市としての責任を踏まえた発言で、10自治体(6道県4政令市)はおおむね歓迎の意向を示した。

     だが、組織委員会によると、整備費以外にも輸送や警備などの運営費としてさらに約1200億円がかかる見込みという。各組織がどれだけ負担するのか、先が見えない。費用分担の協議を先送りしたツケが回ってきた形だ。

     小池知事は整備費の負担割合に触れなかった。だが、セーリング会場などを抱える神奈川県の黒岩祐治知事は「仮設整備費は100%負担するとのメッセージと受け取った」と話し、運営費も一切負担しない姿勢を示した。

     黒岩知事をはじめ関係自治体の首長は昨年末、招致段階の計画通り、仮設施設の整備費については組織委員会が全額負担すべきだという要請書を提出し、東京都には負担の枠組みを変更しないよう求めた。財源不足を理由に自治体などに負担を求めるのは「約束違反」との立場だ。

     だが、関係自治体は準開催都市として五輪のメリットを享受できる。地元ににぎわいが生まれるだけでなく、世界中が注目するスポーツの祭典の舞台となることで外国人観光客の増加につながる可能性がある。

     招致計画の甘さは批判されるべきだが、原則論を唱えているだけでは問題の解決にはならない。各自治体が「応分の負担」をするのは避けられないだろう。

     新国立競技場整備計画やエンブレムの白紙撤回など東京大会は混乱が絶えない。責任の一端は招致活動の先頭に立ってきた国にもある。

     安倍晋三首相は昨年のリオデジャネイロ五輪閉会式に登場し、国会では東京大会を「世界一の大会にする」と強調した。国が全面的に支援するという決意の表れだろう。

     だが、今回の費用分担問題でも国が火中のクリを拾おうという姿勢は乏しい。複数の組織にまたがる課題の調整役として位置付けられている丸川珠代五輪担当相の存在感は一貫して薄い。

     費用分担の話し合いは東京都、組織委員会、国、自治体の4者協議で行われる。最終的な責任を担う国はもっと前面に出なければならない。

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