ここ数年、話題になってきた様々なスーパーフード。そんな中、2017年にトレンドとなりそうなのが、モリンガです。
海外発の先進的なコスメブランドでエイジングケア成分としてモリンガが配合され、美容マニアの間で注目度が一気に上昇! スキンケアにも良いなら、食べるのはもちろん良いはず…と、改めてスーパーフードとしてのモリンガに熱い視線が注がれることに。そんなモリンガを毎日の食生活に取り入れる方法を、スーパーフードマイスターでもある管理栄養士の松原郁実さんに聞きました。
葉はもちろん、茎や根まですべて利用価値大!
北インド原産の樹木、モリンガ。厳しい暑さや乾燥にさらされ、汚れた水しかない地域でも、半年から1年で4〜5メートルの木に育つ、生命力の強さで知られています。
古代ローマ、ギリシャ、エジプト文明の記録によると、モリンガから採取したオイルが化粧品(香水や保湿)として珍重されていたとか。またインドの民間療法として伝わるアーユルヴェーダの書物によると、「5000年前から民間療法や食用にモリンガが使われていた」という記載が。現在でも別名“奇蹟の木”と呼ばれ、その成分は、さまざまな形で使われています。
「モリンガの特長は、葉、花、種、茎、根まですべての部位が栄養豊富なこと。捨てるところがない、といわれています。葉や花はお茶になり、葉はハーブとして使われることも。根の部分はオイルを抽出してコスメなどに。パウダー状のスーパーフードや、錠剤やチュアブルタイプのサプリメントは、葉から茎、種などを粉砕加工して取り入れやすくしています」(松原郁実さん・以下同)
スーパーフードの中でも、特別な栄養価
では、食品としてのモリンガには、どのような栄養素が含まれるのでしょう?
「ビタミンやミネラル、食物繊維が豊富なのはもちろん、必須アミノ酸やフィトケミカル、ギャバなどの貴重な成分が一度に摂れるのが、モリンガの一番の利点だと思います。
必須アミノ酸とは、人体をつくる20種のアミノ酸のうち、体内では合成できない9種類のこと。食物によって摂り入れないと不足する大切な成分ですが、モリンガにはこの9種すべてが含まれています。
フィトケミカルは、抗酸化作用により、細胞を老化させる活性酸素に対抗するといわれる成分。そしてギャバはアミノ酸の一種で、リラックス作用があるといわれ注目されています。発芽玄米などにも豊富に含まれますが、モリンガに含まれるギャバはその数倍あるといわれています」
抗酸化成分や必須アミノ酸は肌や髪に好影響なうえ、豊富な食物繊維が腸の働きにもプラスに。さらにストレスケアにもなるとは、さすが“奇蹟の木”!
しかし、厚生労働省のHPには、注意喚起の記載も。
「極めて限られた情報として、モリンガの葉の抽出物を妊娠ラットに対し高用量を経口投与したところ、流産がみられたとの文献報告がありました。このため、モリンガ(加工品を含む。)の摂取に際しては、妊娠している方または可能性のある方は十分にご注意して下さい」
通常は美容や健康の味方となるモリンガですが、妊娠中もしくは妊娠を希望している時期だけは、控えたほうが良さそうです。
パウダー、サプリ、お茶…どんな食べ方ができる?
そんなモリンガ、どんな味でどんな食べ方が可能?
「モリンガは、抹茶のような味。生臭いとか苦いとかのクセはないので、食べやすいと思います。日本で入手できる食用のモリンガはほとんどがパウダー状なので、パスタなどの料理からクッキーのようなスイーツまで、好みのメニューに混ぜて摂るのが手軽。熱を加えても貴重な栄養素へのダメージは少ないので、幅広く使えます」
お茶になっているものも入手しやすく、ティーバッグかパウダータイプになっています。
「モリンガ茶は、香ばしくコーン茶のような風味です。クセがなく飲みやすいですし、ノンカフェインのため、寝る前に飲めるのも利点だと思います」
一方のサプリメントは、パウダーなどを錠剤状に固めたもの。
「スーパーフードの良さである“いつもの食事にちょい足し感覚”は薄れますが、手っ取り早く成分が摂取できるのは便利。万が一モリンガの味が苦手な人にも、取り入れやすいと思います」
モリンガを使ったメニューにトライ!
では実際に、モリンガパウダーを使った簡単メニューを松原先生に教えてもらい、挑戦してみましょう。
モリンガ入り玉子焼き
[材料]
玉子 2個
だし汁 大さじ2
しょうゆ 小さじ1
みりん 小さじ1
モリンガパウダー 小さじ1
[作り方]
1 玉子2個をボウルなどに割り入れて溶く。
2 だし汁、しょうゆ、みりんを混ぜた後、卵液に入れ、それぞれをよく混ぜたら、半量に分ける。
3 モリンガパウダーはダマになりやすいので、最初にパウダーと同量か少し多めのお湯で溶いてから、2の卵液半量だけに加える。
4 フライパンに少量の油(分量外)をしいて3を少しずつ流し入れ、表面が固まったらくるくると内側に折り込んで、棒状に仕上げて端に寄せる。
5 残りの卵液1個分を少しずつ4のフライパンに流し込み、玉子だけの層を作って4の外側にくるくると巻いたら、できあがり。
内側が緑色、外側は通常の黄色で二層になって、見た目もキレイ♡
※全体が緑色になるのが気にならないようなら、卵液2個にまとめて調味料とお湯で溶いたモリンガを混ぜ、通常の玉子焼き同様に少しずつフライパンに流し込み焼きましょう。
モリンガ・ソイミルク
[材料]
無調整豆乳 200ml
モリンガパウダー 小さじ1/2
はちみつ 小さじ1
[材料]
豆乳をレンジなどであたためた後、同量のお湯で溶いたモリンガパウダーとはちみつを加えれば完成!
朝食やリラックスタイムなどにぴったりの簡単ドリンク。ヘルシーさにこだわるなら、豆乳はなるべく、甘味料などが入っていない無調整のものを。
モリンガ茶を美味しく淹れるコツは?
お茶の場合は、ティーバッグ型になっているタイプが多いけれど、パウダー状になったものも。パウダーはそのままお湯や水をプラスしたり、牛乳などに入れたりと手軽に飲めるけれど、ティーバッグには美味しく淹れるためのちょっとしたコツが。
「ティーバッグ1個で3〜4杯飲める場合が多いので、カップに1杯ずつお湯を入れて飲むよりも、やかんで3〜4杯分をしっかり抽出するほうがムラのない美味しさを楽しめます。その際やかんを火にかけたまま何分も煮出すと、苦みが出るという説も。沸騰直前に火を止めてティーバッグを入れ、3〜5分かけて成分を抽出させるようにしましょう」
ティーバッグの中には水出しタイプもあるので、その場合は麦茶などで使うようなボトルにティーバッグを入れ、数時間かけて抽出を。
「モリンガ茶の効能を実感するためには、習慣化して1日に何杯か飲むようにするといいと思います。煮出す場合も水出しタイプも、ある程度大量に淹れておいて、すぐに飲めるようにしておくことをオススメしたいですね」
モリンガ茶は、飲み終わった後にも活躍!
ティーバッグを使い終わった後の出がらしにも、活用の場が。
「モリンガ茶のティーバッグから中身を出し、出がらしをフライパンで炒ってピラフなどに混ぜると、味のアクセントにもなるし、食物繊維が摂れますよ」
葉がハーブとしても使われるモリンガは、肉や魚料理とも好相性。出がらしだと香りはあまりありませんが、肉にもみ込んだり、魚のフライに振りかけたりしても使えるよう。
豊富な栄養素となじみの良い味で、食事にもティータイムにも活用できそうなモリンガ。ヘルシー美人を目指して、早速取り入れてみては?
(プロフィール)
松原郁実【まつばら・いくみ】
管理栄養士、スーパーフードマイスター、きのこマイスターなどの資格を持ち、日本スーパーフード協会にて栄養学の講師も務める。雑誌やWEBでのコラム執筆、テレビ出演、セミナー講師など多方面で活動中。
監修/松原郁実
取材・文/江尻亜由子
撮影/喜多二三雄