2017年2月24日05時00分
今日から「プレミアムフライデー」の試みが始まる。経済団体と行政が連携した取り組みで、月末の金曜日には早く仕事を終え、買い物や家族との外食、観光などを楽しもうと呼びかけている。
長時間労働の是正は待ったなしの課題だ。ほかならぬ経済界が自らそれに取り組み、労使の意識改革を含めて働き方を変える機会にしていくなら、結構なことだ。
ただ、その狙いを見ると「生活スタイルの変革」「コミュニティーの機能強化」「デフレ的傾向を変えていくきっかけ」など、様々な要素が盛りだくさんだ。息の長い取り組みにしたいなら、もう少し優先順位を整理することが必要ではないか。
そもそもこの構想の発端は、昨年初めの経済財政諮問会議で、民間議員が「全国規模のセールで消費拡大を促す」と提案したことだった。米国のクリスマス商戦の開始日で、小売業界が黒字になることから名付けられた「ブラックフライデー」などが例示され、訪日客の取り込みも念頭に置かれていた。
その後「働き方改革」をめぐる政策論議が進むにつれて、プレミアムフライデーの位置づけも微妙に変化したようだ。
「全国規模のセール」は、米国を見ても、基本的には民間経済の工夫や競争を通じて根付くものだろう。行政まで加わって実現を急いでも、需要の先食いになりかねない。最近の諮問会議でも「消費の山と谷を作るだけに終わらせてはいけない」といった指摘があった。
「幸せや楽しさを感じられる体験を促す」といったスローガンもあるが、幸せや楽しさの中身は人によって様々だ。政策的に大事なのは、それを享受できる基盤を整えることであり、まずは所得と労働条件の向上に注力すべきだろう。
もちろん「金曜の午後」の需要を狙って企業が様々な工夫を重ねれば、経済の好循環につながる可能性はある。ただ、消費拡大はあくまで結果としてついてくるもの、と割り切るべきではないか。
長時間労働の是正を第一に考える場合、課題になるのは裾野の広がりだ。開始当初はやむを得ないとしても、余力のある一部の大企業の試みにとどまれば、意味は薄れる。
「月末の金曜」に注目するあまり、他の曜日に仕事が積み上がったり、個人の都合に合わせた休みがとりにくくなったりしても本末転倒だ。「働き方改革」が全体として目指す方向性を見失わないようにしたい。
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