月末の金曜日は仕事を午後3時に終えて買い物や旅行を楽しもうという「プレミアムフライデー」がきょう始まる。政府や経団連が呼びかけたもので、消費を喚起し、働き方改革にもつなげる狙いがある。
実際は仕事を早めに終えるのが難しい人も多いだろう。消費拡大効果も限定的との見方が出ている。これを契機に政府や企業はもっと休みを取りやすい環境を整えてほしい。
モデルになったのは、米国の年末商戦「ブラックフライデー(黒字の金曜日)」だ。イベントを通じて消費を盛り上げてきた実績がある。
プレミアムフライデーに合わせて商品やサービスを提供する企業・団体は3000を超す。飲食店は開店を早め、旅行会社は金曜夜遅めにチェックインできるプランを用意するなど商機をうかがう。
政府には、アベノミクスの失速を防ぎたいとの思惑もある。
だが、所得が伸び悩む現状では、時間に余裕ができても消費の底上げには結びつきにくい。金曜にお金を使うと土日曜は出費を抑えるなど需要の先食いに終わりかねない。
消費拡大を目指すなら、非正規社員の待遇改善も含めた賃金引き上げに本腰を入れるのが筋だ。
一方、社員が早く帰れるようにした企業は広がりを欠く。
経団連は会員企業に早帰りを呼びかけ、有給休暇の取得やフレックスタイムの活用による始業時間繰り上げを認めた大企業もある。だが、取引先との関係や顧客サービスを優先し、通常勤務の企業も多い。
仕事を早く切り上げても、別の日の残業や休日出勤が増えるだけとの声もある。それなら本末転倒だ。
全国の従業員の約7割を占める中小企業で働く人はもっと帰りにくいとみられる。人手不足で休みを取れる体制が整っていないからだ。
政府と経済界が急ぐべきは、働き方改革を加速させ、長時間労働の是正や有休の取得を促進することだ。
日本の労働時間は欧州各国と比べて突出している。有休の取得率は国際的に低い水準だ。
労働時間が長すぎると、残業代がかさむ一方、生産効率を低下させ、企業にもマイナスだ。仕事と生活が両立できる「ワーク・ライフ・バランス」の実現が重要だ。
企業は今年の春闘で長時間労働の具体的な改善策を示してほしい。政府も抜け道の多い残業規制の厳格化などに取り組むことが必要だ。
もっとも、日本にはまだ長時間労働を容認する空気が根強い。企業などの意識を変え、休みやすい環境を作り出すには、さまざまな試みが欠かせない。プレミアムフライデーもそのきっかけとしたい。