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元駐韓大使・武藤正敏の「韓国ウォッチ」

邪魔なら兄をも殺す国を隣に、韓国の絶望的な危機感欠如

武藤正敏 [元・在韓国特命全権大使]
【第19回】 2017年2月20日
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 現在の、北朝鮮の核開発をやめさせる、少なくとも遅らせるための手段は現在のところ制裁の強化しかない。具体的には北朝鮮にとってドル箱である石炭の対中国輸出を抑えていくことが不可欠なのだが、そのような時に開城工団再開、THAAD配備中止を訴える大統領候補は、韓国をどの方向に導こうとしているのであろうか。

 韓国では、野党系の政治家を中心に朴大統領の弾劾に早期決着をつけ、大統領選挙を行うべきとしている。しかし、金正男氏の殺害、ミサイル技術の飛躍的向上という現実に直面し、韓国の安全保障をどうするか考える方が先決ではないか。

 極端にいえば、朴大統領の弾劾を急ぐときではない。それほどの緊急事態だ。国の安全を守る、それは政治家の国民に対する責務である。今の韓国の政治家はその責任を果たしているのであろうか。

 韓国の国民の生活に対する不満は理解できる。私も韓国に生まれていたならば、過酷な競争に押しつぶされていたかもしれない。しかし、国の安全はそれ以上の問題である。

 北朝鮮の住民は不満さえ持つことを許されていないのである。韓国の国民にも是非冷静に現在韓国が置かれている状況を考えてほしい。

 今の韓国が非常に心配である。

(元駐韓大使 武藤正敏)

世論調査

質問1 韓国は北朝鮮に対し、強硬政策、宥和政策のどちらをとるべきと思いますか。





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武藤正敏 [元・在韓国特命全権大使]

むとう・まさとし 1948年生まれ、1972年横浜国立大学経済学部卒業。同年、外務省入省。在ホノルル総領事(2002年)、在クウェート特命全権大使(07年)を経て10年より在大韓民国特命全権大使。12年に退任。著書に「日韓対立の真相」、「韓国の大誤算」(いずれも悟空出版)。


元駐韓大使・武藤正敏の「韓国ウォッチ」

冷え込んだままの日韓関係。だが両国の国民は、互いの実像をよく知らないまま、悪感情を募らせているのが実態だ。今後どのような関係を築くにせよ、重要なのは冷静で客観的な視点である。韓国をよく知る筆者が、外交から政治、経済、社会まで、その内側を考察する。

「元駐韓大使・武藤正敏の「韓国ウォッチ」」

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