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元駐韓大使・武藤正敏の「韓国ウォッチ」

邪魔なら兄をも殺す国を隣に、韓国の絶望的な危機感欠如

武藤正敏 [元・在韓国特命全権大使]
【第19回】 2017年2月20日
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北朝鮮が核ミサイル配備すれば
韓国は甚大な圧力にさらされる

 だからこそ、北朝鮮は核ミサイルの開発、実戦配備に躍起となっているのである。昨年、36年ぶりに開いた朝鮮労働党大会で核保有宣言をしたのはこの一環である。もはや、核とミサイルの実戦配備は時間の問題と考えた方がいいだろう。

 北朝鮮の核は米国との交渉のため、北朝鮮という国を維持するための手段であるとの甘い考えは捨てた方がよい。北朝鮮は、核ミサイルを実戦配備すれば米国も韓国も北朝鮮に手出しはできないと考えるであろう。北朝鮮には失うものはない。捨て身の核兵器で韓国にありとあらゆる難癖をつけ、金を取ろうとする。金をやらなければ、韓国に核の威力を見せつけてくるであろう。朝鮮半島を北朝鮮のペースで統一しようと考えてくるかもしれない。

 韓国の人々は、北朝鮮の悲惨な生活を知識としては知っているはずである。北朝鮮からの亡命者の証言もたくさんある。しかし、そうした生活が自分たちにとって現実のものとなるなど全く考えていない。私も現時点では北朝鮮による赤化統一はあまり現実的な話だとは思わない。しかし、北朝鮮はそうは思っていない可能性もある。

 私が、駐韓大使として韓国で北朝鮮の動向を観察していた時、常に意識していたのは、韓国の人々は、政治家も行政官も学者も、「北朝鮮の状況はこうだ」との客観的見方よりも、「こうあってほしい」という希望的観測が入るので、そこを見極めることが大事であるという点だった。

 韓国人にとって北朝鮮の人々は同胞である。同胞を悪く思いたくない気持ちはわかる。しかし、金正恩氏はその同胞を痛めつけている指導者である。そこのところを忘れない方がいい。

朴大統領の対北朝鮮政策を
否定する次期大統領候補者

 韓国の朴槿恵大統領は、北朝鮮の4回目の核実験後の昨年2月16日、国会で演説を行い、「これまでのやり方では核開発は止められない。北はいずれ核を実戦配備するだろう。北朝鮮の実質的変化をもたらす根本的解決策が必要である。核兵器開発は北朝鮮の体制崩壊を早める」と警告し、開城公団の全面中断、THAADの配備を受け入れた。

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武藤正敏 [元・在韓国特命全権大使]

むとう・まさとし 1948年生まれ、1972年横浜国立大学経済学部卒業。同年、外務省入省。在ホノルル総領事(2002年)、在クウェート特命全権大使(07年)を経て10年より在大韓民国特命全権大使。12年に退任。著書に「日韓対立の真相」、「韓国の大誤算」(いずれも悟空出版)。


元駐韓大使・武藤正敏の「韓国ウォッチ」

冷え込んだままの日韓関係。だが両国の国民は、互いの実像をよく知らないまま、悪感情を募らせているのが実態だ。今後どのような関係を築くにせよ、重要なのは冷静で客観的な視点である。韓国をよく知る筆者が、外交から政治、経済、社会まで、その内側を考察する。

「元駐韓大使・武藤正敏の「韓国ウォッチ」」

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