【ワシントン西田進一郎】トランプ米政権は22日、心と体の性別が一致しない「トランスジェンダー」の児童や生徒が自分が認識する性別に応じて公立学校のトイレや更衣室を使用できるとしたオバマ前政権の指針を撤回した。宗教保守派や共和党が反発し、訴訟が起きるなど大きな論争となっていた。
トランプ政権は、教育省と司法省による連名の書簡で、オバマ前政権の指針は法的分析が詳細になされていなかったと指摘。「法的な問題をさらに完全に検討するため」に撤回すると説明した。さらに、この問題は連邦政府ではなく、州や地方の学校区が教育方針を作っていく中で決めていくことだとの認識を強調した。
オバマ前政権は2016年5月、公立学校での性差別を禁じる連邦法に基づき、トランスジェンダーの生徒らが自分の認識する性別に応じたトイレや更衣室などを使うことができるよう認めなければならないとする指針を出した。性について、自己認識に基づく性を含むという解釈をした。指針に法的拘束力はないが、従わない場合は連邦政府が補助金を削減する可能性があるとしていた。
これに対し、宗教保守派らは「出生時の性別に応じたトイレを使わねばならない」などと反発し、共和党の知事らが率いる保守的な南部テキサス州など13州が異議を唱えて提訴。同州の連邦地裁は16年8月、全米でこの指針を一時差し止める決定を出していた。
カリフォルニア大ロサンゼルス校法科大学院のウィリアムズ研究所は、米国の13~17歳の若者のうち0.7%にあたる約15万人がトランスジェンダーだと推定している。南部バージニア州で、女の子として生まれたが男性として生活する高校生が、男性用トイレの使用などを求めて起こした訴訟が続いており、控訴裁は昨年、高校生の主張を認める判決を出した。3月末に弁論が開かれる予定の最高裁の判断に今回の指針撤回が影響を与える可能性もある。
トランプ大統領は大統領選の予備選時、適切だと思うトイレを使うことができるようにすべきだとの立場をいったん示したが、保守派の反発などを受けて発言を一転させ、州が決めるべき問題と距離を取ってきた。