お笑い芸人 パンサー 向井 慧さん

人気急上昇中のお笑いトリオ・パンサー。メンバー最年少でありながら、トリオのまとめ役的な存在の向井慧さんに、お笑い芸人をめざしたきっかけから大学受験の思い出、そしてパンサー結成に至るまでの経緯などをお聞きしました。

どん底からの大学卒業 そしてパンサー結成へ

大学に入ってからの生活はどのような ものでしたか?

向井

広く友達をつくったりとか、サークルに入ったりとか、いわゆる“大学生活”らしいことはほとんどしませんでした。なんせ自分としては「すぐに芸人になれる。そしてすぐに売れるんだ!」という根拠のない自信を持っていましたから(笑)。 実際、大学2年生のときにNSCに入ったんですが、当時は1期上の先輩であるオリエンタルラジオさんがブレイクされていた時で、後輩の僕たちにもテレビの前説(本番前に観客の前でネタを披露し、場を和ませる役目)なんかの仕事がけっこう回ってきたんですね。もちろんそれだけで食べていけるほどではないんですけど、「意外と順調だな」と勘違いする程度には仕事がありました。

その時点で「もうお笑い一本で」とは考えませんでしたか?

向井

確かにお笑いだけの道も考えましたが、大学4年のときに、当時組んでいた相方とコンビを解散することになっちゃったんです。今思えば、そこがこれまでの人生で最低の時期でした。芸人としての先は見えない、大学の授業もほとんど出席していない、もちろん就職活動もしていないという状況で、すべての道が閉ざされたように感じました。

そんな時期に支えになってくれたのが、今も一緒に同居させてもらっているピースの又吉さんです。コンビを解散して一人になって、どんどんお笑いの世界から離れてしまいかねない時期に、又吉さんに相談に乗ってもらったり、遊びに連れて行ってもらったりすることで、何とかこの世界と繋がっていられたんですね。そういう支えもあったので、「芸人としてはどうなるかわからないけど、大学を卒業する、という父親との約束だけはちゃんと守ろう」という気持ちにもなれたんです。

大学4年生になってから、卒業するための勉強。
受験勉強とはまた違った難しさがあったのでは?

向井

「自分はすぐに芸人として成功する」って格好つけていましたから、大学には本当に友達が少なかったんです。ノートを借りることもできないので、自分が真面目に授業に出て勉強するしかないわけです。「もっと友達をつくっておけばよかった」って、ホントに後悔しました(笑)。まわりの同級生が就職活動している中での焦りもあって、とにかくつらい時期でしたね。でも、父親との約束でもありましたし、一生懸命勉強して、半年遅れながら4年半で何とか卒業することができました。そしてちょうど同じ頃、芸人としても何とかしなくちゃと考えて、それまでほとんど喋ったこともなかった先輩の菅さんに電話して、「僕とコンビを組んでもらえませんか」ってお願いしたんです。

知り合いでもない先輩に自分から声をかけるのは、かなり勇気がいりますよね。


向井

お笑いの世界は上下関係が厳しいので、普通はあまりないパターンだと思いますね。大学卒業についてもそうですが、自分なりに相当追い込まれていて、「何か動かなきゃいけない」という意識が強かったんだと思います。ただ、菅さんは同じタイミングで尾形さんからも声をかけられていて、最初は菅さんと尾形さんでコンビを組む形で話が進んでいたんです。そこで僕が声をかけたものだから、「じゃあ3人でやろうか」ということになって、現在のパンサーが誕生することになったんです。

NSC 11 期生の向井さんに対して、尾形さんは8期生で菅さんは9期生。
年齢もキャリアも上の先輩と組むことに難しさはな かったのですか?

向井

先輩に突っ込んだりするわけですから、最初はやっぱりやりにくさもありましたね。吉本では、違う期の芸人同士が組んだ場合、いちばん下の期に合わせるというルールがあるので、パンサーとしては11期生という扱いになるんです。尾形さん、菅さんにしてみれば、後輩しかいない中に入ってくることになるので、そういう部分でも気を遣いました。特に尾形さんはもともと体育会系でプライドも高い人だったので、年下の仲間にいじられて、はじめは苦労していましたね(笑)。まあ、今のパンサーのスタイルをつくるうえでは、そんな扱いを受けたことがかえってよかったのかもしれませんけど。

今、向井さんは「インテリ芸人」とし て番組に出演されることも多くなっていますが、
そのことはどう感じていますか?

向井

自分が「インテリ芸人」だなんて、おこがましい気持ちもありますが、そうやって番組に呼んでもらえるのはありがたいことですよね。クイズ番組などで僕らに求められるのは、クイズに正解して、正解できなかったほかの出演者に突っ込むということなので、今はクイズのためによく勉強しています。新聞や本を読んだり、高校の地理や歴史の教科書で勉強したり、ある意味、高校時代よりも勉強しているかもしれません。でも、それはあまり苦にはならないんですよ。クイズは勉強すればするだけ正解できるようになるので、その意味では気がラク。おもしろいことを言って笑いをとるほうが、よっぽど難しいですよ(笑)。

お笑い芸人 パンサー 向井 慧(むかい さとし)さん