女性の賃金が増加を続け、男性との格差が過去最小を更新した。厚生労働省が22日発表した2016年の調査によると、フルタイムで働く女性の平均賃金は月額24万4600円と3年連続で最高となった。男性の賃金の73%となり、男女格差はこの20年で10ポイント縮まった。ただ欧州各国などと比べると格差はなお大きく、男女間の「同一賃金」の実現はまだ遠い。
10人以上の常用労働者がいる約5万事業所を対象に16年6月の所定内給与を調べた。残業代や休日手当は含まない。
女性の賃金は1990年前後は男性の60%程度にとどまっていたが、一時期を除いて格差は次第に縮まっている。16年の女性の賃金は前年から1.1%増える一方、男性は横ばいだった。女性の賃金は06年と比べて2万円以上増えたのに対し、男性は2千円程度減少している。
女性の16年の賃金を業種別にみると、運輸業・郵便業で前年比5.7%増加したほか、卸売・小売業でも1.8%伸びた。企業規模別では大企業の賃金の伸びが0.1%にとどまったのに対し、従業員100人未満の企業では1.2%増えた。人手不足に悩む業種や中小企業で女性の採用が進み、賃金も押し上げられている。
女性の勤続年数は9.3年で前年より0.1年短くなったが、課長や部長など管理職に就く女性の割合は9.3%で過去最高だった。第一生命経済研究所の柵山順子主任エコノミストは「女性の労働参加に加え、企業が積極的に女性を管理職に登用するようになりつつある」と分析する。
総務省の14年の調査によると、女性の単身世帯が可処分所得から消費に回した割合を示す平均消費性向は88.8%。男性の65.8%を大きく上回り、女性の賃金増は消費の拡大につながりやすいことがうかがえる。
男女の賃金格差が縮まってきたとはいえ、日本の水準は国際的にはまだ見劣りする。経済協力開発機構(OECD)の14年の調査では、日本の男女格差は加盟国の中で韓国、エストニアに次いで3番目に大きい。ベルギーやハンガリーの男女格差は数%しかなく、賃金面での日本の「女性活躍」は道半ばだ。
女性の賃金を底上げするには、管理職への登用をさらに増やしていくことに加え、子育てを機に離職したり、本人の意に反してフルタイムの仕事を諦めたりすることを防ぐ必要がある。
厚労省によると働く女性の6割が最初の子どもの出産後に退職する。政府は17年度末の待機児童解消を掲げ、保育所などの施設整備を急ぐ。ただ、安倍晋三首相が17日の衆院予算委員会で待機児童の解消について「非常に厳しい状況になっている」と語るなど、目標達成は見通せない。