旅空子の日本列島「味」な旅

城下町や宿場町の歴史を刻み、路面電車が走る愛知・豊橋

  • 文 写真 中尾隆之
  • 2017年2月22日

吉田城跡の一角で歴史を伝える復元の鉄櫓(くろがねやぐら)

  • 国指定の重要文化財の豊橋ハリストス正教会

  • 吉田宿本陣跡に建つ和風建築のウナギの「丸よ」

  • 東京庵で食べた名物のカレーうどん(950円)

  • 井上靖に愛された若松園の「黄色いゼリー」

  • 市内観光に便利な路面電車(乗車券150円)

  • 旧東海道の面影が色濃い二川宿本陣資料館

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 愛知県最東部、豊橋は人口約37万8千人、県下第2の都市である。戦国時代は今橋城、江戸時代は吉田城の城下町で東海道34番目の宿場町、そのあと国道1号、東海道線、新幹線、飯田線、名鉄線などの交通の要衝としても栄えてきた。

 駅の南口から中心市街へ走る路面電車に乗って、最初に訪ねたのは吉田城址。市役所前の電停から歩くと、松の茂る広い豊橋公園があり、豊川を見下ろす地に62年前に復元された鉄(くろがね)櫓が建っていた。近世、池田輝政が整備・拡充した吉田城は明治の廃城令で石垣だけを残して取り壊された。

 公園のそばで目をひいたのは函館・元町を思わせる大正2年建築のビザンチン様式の白亜の豊橋ハリストス正教会(見学予約0532・54・0434)と、昭和6年に建てられたロマネスク様式のモダンな公会堂だ。

 豊橋は戦災によって城下町や宿場町の多くを失ったが、中心街の旧東海道沿いには鍛冶町、呉服町、札木町、上伝馬町など城下町時代の地名が残り、時代の空気を伝えるような古風な建物や蔵づくりの老舗が点々とたたずむ。

 その一つが吉田宿本陣跡に120年以上ののれんを下げるウナギの「丸よ」(0532・52・4987)。白焼きしたあと蒸してから秘伝のタレを付けて焼く関東流の店で、柔らかく、ほどよく脂が落ちた身と甘辛いタレが絶妙にマッチ。皮を上にして載せるのはこの店ならではという。鰻定食、鰻丼(松・約2500円~)などいろいろある。

 また文政年間(1810~1830)創業の菜めし田楽のきく宗(0532・52・5473)も名物店で、秘伝の味噌(みそ)を塗った自家製豆腐と細かく刻んだ大根の葉を混ぜた菜めしのセットの「菜めし田楽」は取り合わせの妙の旨さがある。

 食事なら50を超える店が共存共栄する「豊橋カレーうどん」が新名物。カレーうどんの底にとろろがのったご飯が潜む2層構造が共通項目の1つだという。駅近くの東京庵ときわ店(0532・52・8282)で、ピリッとしてとろっとした味に満たされた。汁よけに紙エプロンが付く。

 旧東海道で足を止めたのは、作家・井上靖が自伝小説『しろばんば』で「言葉に表せない美味しさ」と絶賛した日向夏の生果汁入りの「黄色いゼリー」。その店が江戸時代創業の御菓子司若松園(0532・52・4641)で、柔らかいおこし種の中に緑の餡(あん)をはさんだ棹物の看板菓子「ゆたかおこし」も素朴でやさしい味わいだ。

 ここから旧道を東に向かうと、古い町並みが残る東海道33番目の二川宿(ふたがわじゅく)がある。復元の二川宿本陣資料館(0532・41・8580)で、その脇をひっきりなしに高速ですり抜ける新幹線に400年余の時の流れを思った。

アクセス・問い合わせ

・東海道新幹線・東海道線豊橋駅下車

・豊橋市観光振興課 0532・51・2430

・豊橋観光コンベンション協会 0532・54・1484

 

※都道府県アンテナショップサイト「風土47」より転載。

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PROFILE

中尾隆之(なかお・たかゆき)ライター

nakao takayuki

高校教師、出版社を経てフリーの紀行文筆業。町並み、鉄道、温泉、味のコラム、エッセイ、ガイド文を新聞、雑誌等に執筆。著作は「町並み細見」「全国和菓子風土記」「日本の旅情60選」など多数。07年に全国銘菓「通」選手権・初代TVチャンピオン(テレビ東京系)。日本旅のペンクラブ代表・理事、北海道生まれ、早大卒。「風土47」でコラムを連載中。

風土47

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都道府県のアンテナショップの情報を集めたポータルサイト。全国的には知られていないけれど味も生産者の思いも一級品、そんな隠れた名品を紹介する「日本全国・逸品探訪」など様々な記事が掲載されている。

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