【以前の記事を改訂し、再投稿】

アメリカの友人に問い詰められ、困りました。
「中国人はずっと、日本人は南京大虐殺で中国人を大量に殺害したと言っている。だがそのとき、中国軍は何をしていた? 自国民を救わなかったのか?」



数年来、中国のネットユーザーの言葉として流布するコピペだが。間違いなく、「大虐殺否定派」による与太話と思われる。
敵の手に落ちた自国の首都で残虐行為がおこなわれるのを国民党の軍隊が傍観、中国側は今になって日本軍の非道を言い立てているよう印象付けるというわけだ。

ほんとうにアメリカ人がそう訊いたかは、きわめて疑わしい。



「中国人はずっと、日本人は南京大虐殺で中国人を大量に殺害したと言っている。」(元ネタより)

本物のアメリカ人なら、こんな言い方はするまい。
「南京の暴虐」はファシズム時代の侵略に連なる事件として、アメリカではどの教科書や歴史の本にも記述されている。十字軍遠征でエルサレムやコンスタンチンノープルでの略奪が、モンゴル跳梁でのサマルカンドやバグダッドの虐殺が、それぞれ言及されるのとおなじように。
「中国人がずっと言い続ける」必要などない、ごく一般的な知識である。

むしろ、「日本の右派はずっと、皇軍は南京で虐殺なんかしないと言ってる」と変えたほうが実情には即しよう。
もっとも、大抵のアメリカ人は日本の歴史修正派の主張に興味なしだが。おそらく「南京大虐殺は捏造だ」とさわぐ馬鹿が日本に相当数いることも知るまい。知らされても関心の度合いは、「アルメニア人虐殺なんて大嘘」と反発するトルコを眺めるようなものか。

残念というか当然というか。
欧米人が旧日本の戦争責任を論じる場合、「あの暴虐な軍隊なら、どんな真似だってやるだろう」との前提で話を進めるのが相場だ。
彼らには、「真珠湾のだまし討ち」や「バターン死の行進」など連合軍将士になされた非道ぶりがまず頭にあるわけで、中国戦線での日本軍についても到底、「公正で規律ある軍隊」などという親切な見方はしてくれない。

まして「南京の暴虐」はすでに、ゲルニカやソンミの虐殺とおなじに(規模ははるかに凌ぐけど)、まともな人は異をはさまない歴史の一部なのであり、 偕行社や日本政府まで公式に認めざるを得ぬところだ。
(バカウヨは悔しいだろうが)
伝聞のかたちにせよ米国人の口から「中国人だけが言ってる」よう言わせること自体、尻尾まるだしのバカウヨらしさにほかならない。

むろん。否定派からすればアメリカ人には、「日本軍は立派な軍隊だった。南京大虐殺を言い立てるのは中国人だけさ」とか言ってほしいかもしれない。
それはわかる。
だったらせめて、「学校では日本軍は南京で大勢の中国人を殺したと教えてるけど、俺の考えでは……」「南京事件といえばみんなが日本軍の暴虐ばかり話題にするけど、俺が思うに……」とかで切りだせば簡単にはバレなかったかもしれない。アメリカは多様性と独自の認識を重んじる国だから、そうしたほうがアメリカ人らしい言い方になる。
ところが、「中国人はずっと、日本人は南京大虐殺で中国人を大量に殺害したと言っている」では、日本のネトウヨの認識がそっくり反映されただけでリアリティの欠片もない。
まったく、アメリカ人を見くびるにもほどがあろう。

そういう次第で、南京事件のことを「中国人がずっと言ってる」と感じるのは、まぎれもない日本の右派勢力だけなのだ。
しかも日本の右派がそう感じざるを得ないのは、まさに右派のほうこそ「南京大虐殺なんかなかった」とずっと言い続け、とりわけ要人がその手の発言を連発するせいで中国側の反発を招いてきたからである。
南京の件で中国から叩かれ続ける理由が自分たちにあることすら右派にはわかっていないのだ。


さて。
「南京大虐殺のとき、中国軍は何をしていた? 自国民を救わなかったのか?」
まったくもって、新味も、鋭さも、戦略上の洞察もまるで感じられない愚問のきわみであろう。

バカウヨの頭では急所をうまく突いた気なのだろうが、実際はこうしたことを大真面目で訊くのとおなじほどの愚昧ぶりをさらしたにすぎない。


「ナポレオン軍にモスクワが占領され大火となったとき、ロシア軍は何をしてたのか?」
バカの質問「駆けつけて消火しなかったの?」

「1814年、英軍に首都ワシントンが焼き打ちされたとき、アメリカ軍は何をしてたのか?」
バカの質問「駆けつけて消火しなかったの?」

「元寇で対馬の住民が殺戮されたとき、日本の武士たちは何をしてたのか?」
バカの質問「駆けつけて救助しなかったの?」

そして、
「広島や長崎に原爆が落とされる間際、日本の防空隊はそれを防がなかったのか?」


ようするに。
どんな歴史的事況についても実情をわきまえない愚問はいくらでも出てくる。
そうやって、「中国軍が南京を奪われたとき何もできなかった」事実を強調するのが南京に災厄をもたらした当の日本軍の蛮虐の度を薄める効果をもたらすと本気で思うとしたら、皇軍の戦争犯罪を否定する手合いがいかに頭の弱い集団かの証左にだけはなるということだ。




えへへ
ぼく、米国人

ほんとはバカウヨ
「中国人はずっと、日本人が南京で中国人を大量に殺害したと言っている。
この大虐殺は二、三カ月もの間続いたとのことだが、その間中国の兵隊はどこにいた?
二ヶ月も続いたならば、どこにいても駆けつけることができたはず。
中国軍はなぜ南京の市民を守らなかった?」



   ↑ いうことそっくり ↓


「ユダヤ人はずっと、ドイツ人は欧州でユダヤ人を六百万も殺害したと言っている。
この大虐殺は三、四年もの間続いたとのことだが、その間世界中のユダヤ人は何をした?
何年間も続いたならば、どこにいても駆けつけることができたはずだ。
米国のユダヤ人はなぜ欧州のユダヤ人を守らなかった?」





「おまいら日本の歴史修正派は、1937年の南京占領時に日本軍は暴虐な振る舞いなどやってないと日本語だけで主張する、世界から完全に孤立した集団だってことをまず自覚しろ。

もっとも仮にだ、南京で日本軍が礼儀正しく振舞ったからって、どうだというんだ?
同時期に日本帝国が百万におよぶ大軍で中国を制圧しようとした世界史上の大事実をなかったことにできると思うか?

日本が口火を切ったこの戦争は、当時ですらパリ不戦協定で是認されるような自衛行為じゃない。
満州占領このかた国際社会に背を向けてきた日本が国連の非難にも耳を貸さずに続けた、一方的な侵略行動だったはずだ。
(そうして蹂躙される中国に同情した英国と合衆国の対中援助や日本への締め付けが、行き詰った日本の軍国主義者をして英米との開戦に踏み切らせる動因となった)

南京での暴虐を云々する以前に、あのとき南京に日本兵のいたこと自体、言い逃れのできない犯罪として歴史に刻み付けられるのを忘れるな。」


>日本が口火を切ったこの戦争は、当時ですらパリ不戦協定で是認されるような自衛行為じゃない。


けけけけ・・
そんなの関係ね〜
  



関連リンク

ネット右翼の妄言録
http://fine.ap.teacup.com/warandpeace/26.html


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