インターネット通販アスクルの物流倉庫(埼玉県三芳町)の火災で、入間東部地区消防は22日午前、火災を鎮圧したと発表した。火災発生から6日が経過し、ようやく収束に近づきつつある。東京株式市場ではアスクルの株価が一時、前日比1%高と5日ぶりに反発した。
■株価はなお1割安
火災が発生した物流倉庫「アスクルロジパーク首都圏」は、法人向け通販サイト「アスクル」や消費者向けの「ロハコ」で扱う商品約7万点を首都圏をはじめとする東日本地域に配送する中核の物流拠点。16日朝に火災が発生し、これまでに延べ床面積約7万2千平方メートルのうち約4万5千平方メートルが焼けた。
倉庫内部は高温で、白煙が立ち込め、消火作業の妨げになっていた。外部からの注水を進めるため外壁に新たな穴を開けるなど消防作業が続けられていた。
現時点では、ほぼ火が消し止められた「鎮圧」状態となり、周辺の6世帯に出ていた避難勧告は近く解除される見込み。ただし、すべての火種がなくなる「鎮火」状態には至っていない。
アスクルの株価は「鎮圧状態にある」と伝わると一時、3320円と前日終値よりも1%上昇したが、火災発生前の15日終値と比べると、1割近く安いまま。火災が鎮火に向かってもアスクルの経営上の不安の種は残り、反発の勢いは限定的になっている。
■「他社への乗り換え」の恐れも
不安材料の一つが、火災による直接的な被害額。「アスクルロジパーク首都圏」は2013年夏に約200億円を投じて設けた大型物流拠点で、復旧費用などは現時点では見通せない。
もう一つは、ネット通販のライバルとの競争への影響だ。アマゾンジャパンや楽天などと配送などのサービス競争が激しくなっている。今回の火災では一部で商品の配送の遅れや在庫切れが発生しており、利用者が他社のサービスに乗り換える動きが出てもおかしくはない。
最後に、今回の火災を踏まえた対策づくりも急務だ。火災の原因を究明し、再発防止のための対策を講じる必要がある。火災で焼けた倉庫の復旧だけでなく、他の物流施設すべてで商品在庫の保管方法の変更や消防対策などを検討することが課題になりそうだ。
アスクルは3月16日に予定していた2016年12月~17年2月期の決算発表を延期すると20日に発表している。今回の火災の影響なども説明するとみられている。
(富田美緒)