月を映し出す日本科学未来館の「ジオ・コスモス」（発表会場にて）
あなたの名前を刻んだ探査機が、月面を走ります──ロボット月面探査レース Google Lunar XPRIZEに参加する日本のチーム「HAKUTO」は、ロケット打ち上げ資金の獲得を目的に、2月21日よりクラウドファンディングサイトA-Portで資金調達を開始しました。
Googleがスポンサーとなって開催されているLunar XPRIZEは、世界初のロボット月面探査レースです。
条件は3点で、月面に純民間開発のロボットを着陸させること、着陸地点から探査ローバーを500m移動させること、高解像度の動画や静止画を地球に送信すること。これら全てをクリアする速さを競います。賞金は優勝チームに3000万ドル、準優勝チームに500万ドルが贈られます。
12月26日に打ち上げへ
2007年に同プロジェクトが発表されてから10年の歳月を経て、今年ようやく月への打ち上げを実施します。開始当初は34ものチームが参戦していましたが、途中で多くのチームが合併や撤退していき、最終条件となる2017年のロケット打ち上げを確定できたのは、わずか5チームでした。日本で唯一Google Lunar XPRIZEに参加する「HAKUTO」も、最後まで残った5チームに含まれます。日本発の宇宙ベンチャーispace社がKDDIなどの協力を得て実施する「au x HAKUTO MOON CHALLENGE」では、インドのチーム「インダス」の着陸機に相乗りする形で、月面探査ローバーを月面に運びます。ロケットの打ち上げ予定日は2017年12月26日。
HAKUTOチームの月面ローバーの名称は、3万7000通を超える応募から選考し「SORATO」（ソラト）に決定。
同プロジェクトのアンバサダーを務めるサカナクションの応援楽曲のタイトルも「SORATO」（ソラト）に決定しました。
自分の名前を月面に届けられる
なお計画変更で打ち上げコストなどが予想より高くなったとして、HAKUTOは朝日新聞のクラウドファンディングサイトA-Portを利用した資金調達を実施します。個人が出資でき、リターンとしては月面を走る探査ローバー「SORATO」に自分の名前を刻印できます。5文字1万円、10文字2万円、15文字10万円の3種類から選べ、文字サイズは約2mm。使用できる文字種は漢字・ひらがな・カタカナ・英数字。探査機はレース終了後も月面に残るため、自分の名前を月に残せます。
また、20万円の出資でHAKUTOの新ユニフォームが、1000万円の出資で月面探査ローバーのモックアップがリターンとして得られます。資金調達の目標額は3000万円です。
太陽の熱的影響を考慮した設計
こちら（写真＝下）が月面を走る探査ローバーのSORATO（ソラト）です。外装が銀色なのは、照りつける太陽光を反射して、中の機器がオーバーヒートしないようにする工夫です。特徴的なタイヤ形状は「月の表面土壌は、レゴリスというパウダー状のふわふわした砂に覆われていて、ゴムタイヤだと砂に埋まってしまう」（担当者）ため。このため、グラウザーと呼ばれる土壌に車輪を突き刺す機構を採用しています。
月と地球間の通信はKDDIが技術的にバックアップ。なお打ち上げロケットや着陸機が当初予定から変わり、インドのチームインダスと相乗りする形となるため、通信面で若干の仕様変更があるといいます。「（当初計画に比べ）地球から月への通信は極端に遅くなり、月から地球への通信はちょっと速くなる」（袴田氏）
SORATOの前面と背面の内側に、クラウドファンディング出資者の名前がレーザー刻印されます。
外から見えない内側に名前を刻印するのは「太陽の熱的な影響を考慮したため」（担当者）。表面は太陽の反射率を緻密に計算しているといい、そこに名前を刻印すると、表面の反射率が変わり太陽光の熱で内部の機器がオーバーヒートしてしまう懸念があるわけです。
HAKUTO代表の袴田武史氏は「アポロ計画では人間の足あとが月面に刻まれました。HAKUTOのミッションでは、皆さんの名前を我々のローバーに刻んで月面に届けたい」と語りました。
（更新）トップ写真を変更
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