スタートアップ時に知っておくべき資金調達方法

    
2017/02/22
    


起業する際に必要な資金をどのように確保すればいいか資金調達の方法が分からず、頭を抱えられる方も多いと思います。そこで今回は、スタートアップ時に知っておくべき資金の調達方法について、創業融資を中心にご説明します。是非、起業する際の参考にしてください!

インデックス

 

1.創業融資について

1-1. 日本政策金融公庫と信用保証協会

売上や利益など、スタートアップの段階では、数字の実績が無い事業者(法人及び個人)でも、特別にお金を借りることの出来る制度が「創業融資制度」です。

平成28年5月に発表された、日本政策金融公庫での創業融資の実績数は26,465企業と前年から102%増の数字が出ており、国の創業支援政策の効果も相まって、創業融資制度を利用する事業者が増えています。

※引用 平成28年5月11日付 日本政策金融公庫ニュースリリースより



基本的に創業融資制度は、以下2機関が取り扱っています。

・日本政策金融公庫

・信用保証協会

地銀や信金では、大手企業の大型案件に融資を行っているケースが多く、スタートアップに融資を行ってくれる可能性は大変低くなっています。稀に、返済可能性を買われて融資が実行される事はありますが、通常は担保が必要で、ハードルは高めです。
そこで、通常の融資よりも簡単にお金を借りることができる創業融資を取り扱っている2つの機関をご紹介します。

日本政策金融公庫

日本政策金融公庫は、政策金融機関として、一般の金融機関が行う金融を補完する事を旨としつつ、国内金融業務機能を担って、日本経済の発展や国民生活の向上を目的としている組織です。

平成28年に公表された性別や年齢別の創業融資の動向も、女性や若者(30歳未満)の実績が増加しており、特に融資金額が300万円以下の小口融資の増加が顕著です。

信用保証協会

信用保証協会は、直接融資を実行する機関ではなく、事業者が金融機関から融資を受ける際に、その債務を保証することで事業者の資金繰りの円滑化を目的としている公益法人です。
信用保証協会は各都道府県に存在しており、全国で51か所あります。

 

1-2. 創業融資を受けるためのポイント

創業融資を受ける為のポイントは、大きく分けて3つあります。

 

1.実在性……その会社が実在しているかどうか

2.信頼性……面談で話す内容や事業計画書等の提出資料の内容が信頼できるかどうか

3.実現可能性……今後の展望や計画が実現可能かどうか

 

実在性については、確認のために、事務所の賃貸借契約書の提出を求められる場合や、直接事務所に実地確認をしに訪れる場合があります。

信頼性については、過去の経歴や役職、取得資格、取組事例などで判断されます。

実現可能性については、事業計画書やマーケット、実際の契約書や注文書などによる売上を裏付ける資料を確認することで判断されます。そのため、提出資料に大げさな内容を記載する必要はありません。現実に即した内容を記載してください。併せて、記載内容の根拠を裏付ける資金計画書を準備しましょう。

 

1-3. 創業融資の申し込みから実行までの流れ

日本政策金融公庫・信用保証協会から創業融資を申し込み、1ヶ月半で融資実行まで進む事ができます。

・日本政策金融公庫からの申し込みについて


「借入申込書」「創業計画書」を管轄の支店に持参もしくは郵送すると、融資申し込みが殺到していない限り、1週間ほどで、面談の日程が告知され実施されます。

面談が行われるまでの約1週間で、提出した創業計画書の内容を確認し、面談でそれらの書類について自信を持って話せるように準備しましょう。
面談で必ず確認される事項は、以下の4つです。

 

1.事業を始めた動機

2.この事業を始めるにあたって、今までの自身の経歴・役職・取組事例

3.どのような事業内容・事業展開なのか

4.事業内容に対して、他社との違いが分かるような差別化が図られているか

 

この4事項は、事前に提出する「創業計画書」に記載した内容と同じです。面接では、「創業計画書をちゃんと自身で作成しているかどうか」、「起業に対する熱い思いや今後の展望を見る力があるかどうか」、を主に見られています。自分の言葉で、具体的かつ論理的にしっかり説明できるようにしておきましょう。

 

・信用保証協会からの申し込みについて


信用保証協会からの申し込み方法は3つあります。

 

1.地方自治体の斡旋によって申し込む方法

2.金融機関に依頼して申し込む方法

3.信用保証協会へ直接申し込む方法

 

1. 地方自治体の斡旋によって申し込む方法
市役者や区役所に保証協会の窓口があり、そこで申し込みする方法です。

地方自治体の斡旋なので、地方自治体の審査が通れば融資実行の可能性は高まります。
この方法では、借入が実行された際、返済時に支払う利息を補助してもらえる利子補給等のメリットがあります。

 

2. 金融機関に依頼して申し込む方法

金融機関の窓口で申込みを行います。信用保証協会とのやり取りを金融機関がすべて行ってくれるので、起業家への負担が少ない方法です。
メリットとしては、申込金額から融資額が減額になる可能性が低いことです。これは、申請する前に金融機関と打合せができるため、融資申込金額の必要性や裏付けをしっかり固めることができ、更に、その内容を金融機関の担当者が信用保証協会に正確に伝えてくれるためです。

 

デメリットとしては、金融機関との関係を構築していないと、依頼しても動いてもらえない点です。申請依頼をする前に、あいさつをしたり、事業計画書を提出するなど、金融機関との関係を構築しておくことが必要になります。

 

3. 信用保証協会へ直接申し込む方法

この方法は、申込みから結果が出るまでの期間が一番早いことがメリットとして挙げられます。デメリットとしては、地方自治体や金融機関に依頼する場合と違って、相談する先がないため、審査時に、詳細な事業計画書がなかったり、必要資金の説明が甘くなる場合が多く、申込金額より融資額が減額されやすい傾向にあります。

 

ここまで、創業融資の申し込みから実行までの流れをご説明しましたが、いくら勝算のある創業計画書があっても、申し込めば必ず創業融資が決定するものではありません。また、借入ありきの起業はリスクが大変高く、資金面で無理して起業したとしても、会社を継続させていくのが難しいという現実もあります。

そのため、自己資金をしっかり用意することも重要です。
実際に、融資を申し込む際や審査の際に、自己資金の要件は見られます。起業するにあたって、コツコツと貯めてきた自己資金が多ければ多いほど、「この人は自分の事業に熱意を持っている人だ」と思われ、審査にも通りやすくなります。

 

自己資金を用意した上で、あといくらの融資があれば事業を確実に回すことができるかをしっかりと考えて、時間的に余裕を持った借入計画を立てた上で、融資希望額を決めるようにして下さい。

 

2. その他の調達方法について

ここまで創業融資についてご説明してきましたが、資金調達方法は他にも存在します。この章では、創業融資以外の資金調達方法についてご紹介します。

 

2-1. 株式を発行して調達する

スタートアップの資金調達で一般的なのは、自身のお金を資本金として出資することです。この場合は、自分の思い通りの経営ができ、返済や金利負担のリスクがないので、安定した資金といえます。まずは自分がどれだけの金額を出資できるのか確認します。

 

自分で出資する以外にも、家族や友人からの出資を受けたり、ベンチャーキャピタルから出資を受ける方法もあります。
自分で出資をしたり、家族や友人から出資を受けるのはイメージしやすいかと思いますが、ベンチャーキャピタルからの出資については、中々イメージしにくいと思います。
そこで、ここからは、ベンチャーキャピタルからの出資について詳しくご説明します。


■ベンチャーキャピタルについて

ベンチャーキャピタルとは、これから成長していく企業に対して出資を行い、ベンチャーキャピタルが保有している経営ノウハウや、人的ネットワークなどを活かして経営の支援を行う組織です。成長企業への出資を通じて上場(株式公開)を支援し、 株式公開後に株式を売却することで売却益を得ることを目的としています。

 

このことから、ベンチャーキャピタルに「投資したい!」と思わせるようなビジネスモデル(急成長が期待でき、上場の可能性が高そうな事業)でないと、出資を受けることは難しいでしょう。

 

■ベンチャーキャピタルから出資を受けるメリット

3つ目は、創業融資では受けられない大きなメリットです。

・(基本的に)資金を返済する必要がない

・ 融資に比べて調達できる資金が大きい場合が多い

・ 経営ノウハウの提供や提携先の紹介を受けられる可能性がある

 

■ベンチャーキャピタルから出資を受けるデメリット

逆に、以下2点のデメリットも存在します。

・ベンチャーキャピタルの意向に振り回される可能性がある

成長スピードや上場時期などをコントロールされる可能性があります。これは、ベンチャーキャピタルもファンドを組成し資金調達していることも多く、そのファンドには満期の時期があるためです。

・投下してもらうキャッシュと、ベンチャーキャピタルに渡す持ち分を考え、金額を交渉する必要がある

成長させる事業以外のことに時間を割く必要があります。専属のスタッフが必要になる場合もあるので注意が必要です。

 

ベンチャーキャピタルごとに投資スタンス(投資対象業種・投資金額など)が異なりますので、ベンチャーキャピタルからの資金調達を成功させるためには、自社にあったベンチャーキャピタルを探す必要があります。

 

2-2. クラウドファンディングで調達する


クラウドファンディングとは、起業家やクリエイターなどが、事業や商品、サービスなどのアイデアをインターネット上のクラウドファンディングサイトを通じて紹介し、それに共感してくれる人々から資金を集めることです。

「こんなモノを創りたい!」「こんなサービスがあったらいいのに」と思っていても、資金面で断念せざるを得ない場合に有効です。ただし、期間内に設定した目標金額が集まらなかった場合はお金を一切受け取れないため、注意が必要です。
ReadyforやMakuake、CAMPFIREなどのサイトが有名です。手数料は発生しますが、手続きや企画面など、様々なサポートをしてもらうことができます。

それでは、クラウドファンディングで資金調達を行うメリットとデメリットをみていきましょう。

 

■クラウドファンディングのメリット

以下、3点です。資金調達以外にも、創業後に役立つ情報などを入手することができます。

1.クラウドファンディングで資金調達をする事そのものが話題となり、メディアに取りあげられる可能性がある

 

2.多様な年齢層のユーザーがいるので、市場のニーズを知る事ができ、マーケティングとしても使える。

3.プロジェクトに共感して出資してくれるユーザーを、サービスや事業のファンとしてリリース前から獲得できる

 

■クラウドファンディングのデメリット

以下、2点あります。

1.広告等を活用してプロジェクトを周知しないと、出資してくれるユーザーが集まらないため、マーケティングの実力が問われる。
2.ネットにアイデアを掲載してお金を集めるので、そのアイデアを真似される可能性がある。

 

■クラウドファンディングのタイプ

大きく分けて2つのタイプが存在します。

・購入型クラウドファンディング

一般のユーザーが、プロジェクトに出資した見返りとして、出資金額に応じた商品やサービスを入手できるタイプです。ユーザーに対する金銭でのリターンは発生しません。

これは、所謂、先行予約販売にあたり、資金調達をした後に、そのお金で商品を製作し、ユーザーに対してサービスの提供を行います。

出資した後に提供される商品やサービスに魅力を感じてプロジェクトに出資する場合が多いです。
この場合は、プロジェクトが魅力的なのはもちろんのこと、それがいかに実現可能であるかをわかりやすく示した上で、ユーザーが欲しいと思うような見返りを用意することが重要になります。

 

・投資型クラウドファンディング

投資家が、インターネットで、運営会社を通じて匿名組合契約を締結し、特定の事業者に対して出資をするタイプです。

 

出資者は、あらかじめ決められた配当方法に従って、契約期間中の売上等の一部を配当金として受け取ることができます。金銭だけでなく、特典として、プロジェクト期間中に商品やサービスを受取ることができる場合もあります。

また、投資家から集めた資金を運営会社が事業者に対して貸付けるような場合もあります。この場合、出資した投資家へは、運営会社が得た貸付利息の収益の一部が分配されます。

 

2-3. 少人数私募債で調達する

少人数私募債は、企業が発行する債券、社債のことです。特に、社債のうち投資家が50人未満であり、社債の募集金額を1億円未満としたものを「少人数私募債」といいます。

法人であれば株式会社に限らず合同会社でも発行することができる資金調達手段の一つです。
少人数私募債の場合、通常の社債の発行に比べて、手続きが簡素で契約書を作成するだけで発行することができます。

発行条件は、次の通りです。

■発行条件

・社債購入者は、プロの投資家(金融機関等)を除いた50名未満であること

 

・会社の役員・従業員・株主・得意先・仕入先等の縁故者に対して、直接募集すること

 

・社債の一口の最低金額が、発行総額の50分の1以上であること

 

・当該社債を一括して譲渡される以外の譲渡が禁止されており、譲渡には取締役会の決議を必要とすること

 

■少人数私募債のメリット

以下、4点あります。

1.担保や保証人が不要
2.償還までは月々の返済が無く、年1回の利払いだけで済むので、資金繰りの改善に効果がある

 

3.「会社が社債を発行して自力で資金を集められた」ということは、その会社の信用力をアピールすることになる。そのため、資金調達が成功した場合には、金融機関の格付けが上がる可能性がある。

 

4.償還期間や利率を、会社側で自由に設定できる。

 

■少人数私募債のデメリット

以下、4点あります。

1.償還日(満期)のときに一括で償還となるので、償還日の返済負担が大きい
2.募集人数が限られるため、多額の資金調達がしにくい
3.信用で発行しているので、結果を求められる
4.償還(返金)が可能である根拠を示すため、詳細な事業計画が必要

 

 

2-4. 匿名組合で調達する


匿名組合での調達では、投資家(匿名組合員)が匿名組合を通じて会社ではなく事業に対して出資を行い、事業の運営は営業者に任せ、その事業によって発生した利益又は損失を、組合員に分配する、ということが行われます。
リスクは大きいが当たれば莫大な収益があげられる事業を、極力営業者のリスクを抑えた状態で起業する際の資金調達で使われます。
出資された資金は営業者のものとされ、その経営は営業者の単独事業とされます。そのため、対外的には営業者の個人企業とみられます。

 

匿名組合契約においては、預金とは違って、出資金の元本の返還は保証されていません。従って、事業の収益が予想を下回った場合、投資家は出資金の元本の償還を受けられないリスクがあります。

 

出資や貸付の場合は、利息制限法や出資法により高額の配当は難しいですが、匿名組合の場合は法規制が比較的ゆるくなっています。

 

投資家は営業者が行う業務について、指図や助言をする権限が認められていないことから、匿名組合は営業者にとって非常に有利であり、投資家側には不利な契約であることに注意が必要です。

 

3. まとめ

今回の記事では、創業融資を中心とした資金調達の方法と、そのメリット・デメリットについてご説明しました。ご紹介したように様々な資金調達方法がありますが、起業時に思い描いた目標を実現するのに最適な調達方法を検討してみてください。
この記事が、みなさんの資金調達の助けになりましたら幸いです。

(執筆:澤田恭平、編集:マツイ)

fs-logo■著者紹介
執筆:株式会社FirstStep 澤田 恭平
■メディア紹介
会社設立FirstStepは会社設立(起業・創業)&経営管理を税理士や司法書士等、経験豊富な専門家が起業家・ベンチャーの皆様をワンストップで、完全サポートしています。

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