News Up LGBTの人たち 住まいの確保は?

News Up LGBTの人たち 住まいの確保は?
LGBTと言われる性的マイノリティーの人たちへの、差別や偏見をなくそうという取り組みが、今さまざまな分野で進んでいます。一方で、住まいの確保の面では、同性カップルが賃貸住宅への入居を拒否されるケースがあとを絶ちません。その実態を取材し、課題を探りました。
東京・練馬区に住む鈴木雄一朗さん(32)は、3年前から、賃貸マンションで男性のパートナーと同居しています。一緒に過ごす時間を作り、生活費も節約したいと考えて同居を決意した2人。しかし、物件を見つけるまでには、思いもかけない苦労があったといいます。
男性2人で入居したいと不動産会社に申し出たところ、「家族ではない」として、相次いで断られたのです。
「部屋を汚されそう」とか「周囲の住民とトラブルになるのではないか」といった、いわれのない理由も挙げられ、下見すらさせてもらえませんでした。不動産会社を回っては断られる状況が続き、一時は同居を諦めかけたといいます。同居の事情を深く聞かれなかった今のマンションに、ようやく入居できるまで、半年かかりました。

賃貸住宅 入居拒否の実態

東京・練馬区に住む鈴木雄一朗さん(32)は、3年前から、賃貸マンションで男性のパートナーと同居しています。一緒に過ごす時間を作り、生活費も節約したいと考えて同居を決意した2人。しかし、物件を見つけるまでには、思いもかけない苦労があったといいます。
男性2人で入居したいと不動産会社に申し出たところ、「家族ではない」として、相次いで断られたのです。
「部屋を汚されそう」とか「周囲の住民とトラブルになるのではないか」といった、いわれのない理由も挙げられ、下見すらさせてもらえませんでした。不動産会社を回っては断られる状況が続き、一時は同居を諦めかけたといいます。同居の事情を深く聞かれなかった今のマンションに、ようやく入居できるまで、半年かかりました。

背景に物件を貸す側の偏見も

鈴木さんは、物件を貸す側に、自分たちに対する根強い偏見があったと感じています。「何度も断られていらだちを感じましたし、同時に『これが現実なんだ』と痛感させられました。『男性2人だから入居を認められない』と判断するのではなく、私たちがまっとうに生活していることを知った上で、判断してほしいのです」と訴えています。
LGBTの人たちへの偏見が根強い実態は、賃貸住宅を貸す側の意識調査からも見えてきます。
住宅情報サイトの運営会社が、物件のオーナーを対象にした意識調査で、同性カップルの入居をどう感じるか尋ねました。その結果「入居してほしくない」「入居許可をためらう」といった入居に否定的な回答が、男性カップルで47%、女性カップルで38%に上りました。
その理由を自由回答で尋ねたところ「トラブルや騒音が心配」、「周囲の目が気になる」、「接し方が分からない」などといった回答がありました。

LGBTの人たちの現状に詳しい早稲田大学法学部の棚村政行教授は、鈴木さんのように入居を拒否されるケースは、氷山の一角にすぎないと指摘します。そのうえで、棚村教授は「住まいを確保できないのは、生活の基本が脅かされているということで、当事者にとっては死活問題だと思う」と話しています。

住居確保へ 始まった支援

LGBTの人たちの住まいの確保を、なんとかして支援できないか。一部の民間企業の間では、新たな取り組みが始まっています。

東京・世田谷区の不動産会社では、まずは賃貸住宅を貸す側の偏見や不安をなくそうという取り組みを進めています。物件を探している同性カップルの客と、個別に面談を実施。
勤務先や収入に加えて、ふだんの生活ぶりや人柄などに至るまで、きめ細かく聴き取っています。ある日の面談を取材したところ、会社の担当者は顧客に対し「どのくらいの期間、住もうと考えていますか」と質問したり、「友達を呼んで騒がしくすることはありませんよね」と確かめたりしていました。
この会社は、面談の内容を紹介状にまとめて、物件の管理会社やオーナーに渡しています。当初は入居を拒否していた相手が、紹介状を読み、受け入れたケースも出ているといいます。
不動産コンサルタント会社の須藤啓光代表は「LGBTの人たちに対する漠然としたマイナスイメージを払拭(ふっしょく)できれば、物件を貸してもらえるのではないか。LGBTの人たちのことを知る機会が増えれば、オーナー側の意識も変わってくると思う」と話しています。
LGBTの人たちの入居に理解がある物件の情報を、広く提供しようという動きも出ています。
大手住宅情報サイトの運営会社では、LGBTの入居が可能だとうたう賃貸住宅の情報について、3月からサイトへの登録を始めます。
さらに、こうした物件を検索できるサービスを夏ごろをめどに導入する方針です。部屋の方角や駐車場の有無といった情報と同じように、物件を探せるようになるということです。
リクルート住まいカンパニーの田辺貴久さんは「LGBTに対する差別や偏見がないと表明している物件の情報を、まとめて閲覧できるようになります。これを安心材料にして、部屋探しをしてほしい」と話しています。

多様な社会のビジネスチャンス

これらの企業がいち早く支援に乗り出しているのは、なぜなのか。それは、LGBTの人たちが暮らしやすい環境を整え、社会の多様性を実現していくことが、ひいてはビジネスチャンスにつながると考えている側面があるからです。逆に言えば、差別や偏見による対応の遅れは、みずからのビジネスチャンスを狭めることにもなるわけです。企業などの側は、こうした観点から対応を変えていってほしいと、取材を通じて感じました。

住まい確保 行政の役割は

では行政は、LGBTの住まい確保に向けて、どんな役割を果たすべきなのでしょうか。
まず公営住宅の状況を見てみますと、東京・世田谷区は、同性カップルも区営住宅に入居できるという方針を新たに打ち出しました。ただ多くの公営住宅では「複数の人が住む場合は親族に限る」としていて、同性カップルの入居を想定していません。世田谷区のような動きを、さらに広げる必要があるといえます。
ほかにも行政が果たすべき役割があると、早稲田大学法学部の棚村政行教授は指摘します。棚村教授は「LGBTの人たちに、入居拒否などの差別的な対応をする業者に対しては、行政が指導できると考えられる。また行政は、賃貸住宅のオーナーや不動産会社などが、LGBTの人たちに対する差別や偏見をなくし理解を深めるよう、啓発を進める必要がある」と話しています。

LGBTの人たちの住まいの確保をどう保障し、差別や偏見をなくしていくのか。行政と民間それぞれの立場で、さらに取り組みを進めていく必要があると感じました。