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経済・財政
安倍内閣が最も日本的な「あの人事慣行にメス
社長は退任したらさっさと去るべし

社長よりも強い人がいるのはなぜ?

政府の成長戦略を作る「未来投資会議」が、コーポレートガバナンスの強化策として、社長OBが相談役や顧問として企業に残る慣行の見直しに乗り出した。

1月27日に首相官邸で開いた第4回未来投資会議での議論を受けて、安倍晋三首相自身が「本日の問題提起を踏まえて、不透明な、退任した経営トップの影響を払拭し、取締役会の監督機能を強化することにより、果断な経営判断が行われるようにしていきます」と述べ、今後、具体的に対応していくことを明言した。

最も日本的とされる人事慣行のひとつにメスが入ることになる。

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第2次安倍内閣が取り組んできたコーポレートガバナンス改革では、取締役会の権限強化や独立性強化に力点が置かれてきた。

ところが、日本企業にはガバナンス上、大きな問題があるケースが少なくなかった。社長よりも絶対的な権限を握っている人物がしばしば社内にいることだ。

社長や会長を退任して肩書上は「顧問」や「相談役」になっていても、実質的に権力を握り続けている例が多くあり、日本的な人事慣行といっても良いほどになっている。

いくら独立した取締役会で議論しても、実力「顧問」の鶴の一声ですべてが変わってしまうのであれば、コーポレートガバナンスの強化は絵に描いた餅になる。

 

退任したら、黙っていなさい

経済産業省が昨年、東証1部2部上場の約2500社を対象に行った調査では、回答した871社のうち、「顧問」や「相談役」を導入している企業が77.6%に及んだ。

役割については、「経営陣に対する指示や指導」と答えた企業が35.6%と最も多く、「中長期の経営戦略・計画についての助言」や「本社役員人事についての助言」という回答も多かった。

コーポレートガバナンス上、役割が明確でない「顧問」や「相談役」が、重要な経営事項に関与している様子が浮かび上がった。

1月27日の会議でこの話を持ち出したのは、民間議員である三菱ケミカルホールディングスの小林喜光会長。

未来投資会議の下に作った構造改革徹底推進会合で企業関連制度改革や産業構造改革のまとめ役になっている。経済同友会の代表幹事を務める一方、経営危機に直面している東芝の社外取締役も務める。

「日本企業の『稼ぐ力』の向上に向けて」と題した資料の中で、退任した経営トップが果たすべき役割として、次の点を挙げた。

「経営トップには、時として、過去にとらわれない経営判断が求められる。こうした企業文化を醸成していく必要があり、とりわけ社長OBが相談役や顧問として経営陣に指示・指導しているような慣行の見直しを検討する必要がある。社長OBは、他の会社の独立社外取締役としてその高い知見が活かされていくことを検討すべきではないか」

つまり、社長を辞めたら、さっさと会社を去って、むしろ他の会社で社外取締役などになった方がいい、としているのだ。