糸井重里社長の「ほぼ日」、実態が明らかに

3月16日に上場、「個人商店」から脱却なるか

2015年3月の東洋経済の取材に応える糸井重里氏(撮影:梅谷秀司)

「早く社長から解き放ってくれ、というのが僕の意思。イノベーションに関わることなど、社長よりも得意なことがあると思っている。2~3年ぐらいは会社に通うけれど、“しょうがないジジイ”だなと言われる存在に早くなりたい」――。

コピーライターの糸井重里氏の設立した「株式会社ほぼ日(ほぼにち)」が3月16日、ついに東京証券取引所のジャスダック市場に株式上場を果たす。2月21日に開かれた上場前説明会で、現在68歳で社長を務める糸井氏が、「ポスト糸井」の後継者などについて聞かれて答えたのが冒頭のコメントだ。「そういう目で組織を見ているし、外から入ってくださる方がいるとしたらどういう方なのかなと探している最中」と糸井氏は続けた。

社名については、糸井氏が1998年6月に開設したウェブサイト「ほぼ日刊イトイ新聞」の略称「ほぼ日」に由来する。株式会社としては2002年10月に東京糸井重里事務所の社名で設立され(同名の個人事務所設立は1979年)、上場を控えた昨年12月に現社名に変更された。

社名変更の理由について糸井氏は、「ほぼ日刊イトイ新聞をスタートさせて、個人の仕事を管理する事務所でなく、はっきりとチームで何かを実現させていく会社に変化してきたから」と、社名変更時の挨拶文の中で述べている。今回の株式上場も、個人商店からチーム運営のパブリック企業へと進化していく重要な一歩といえそうだ。

営業利益率は2ケタの高収益体質

同社は、糸井氏をはじめとする書き手によるウェブサイト「ほぼ日刊イトイ新聞」で、糸井ファンともいうべきコアな読者層を集客。そのうえで、自社で企画・開発した商品を紹介し、直接顧客に販売するビジネスモデルを構築している。

ウェブサイト自体は読者への有料課金はなく、誰でも無料でコンテンツを読める。一方、広告は原則として掲載せず、広告料収入はない。つまり、もっぱら自社企画・開発の商品を販売することで収益が成り立つ。新規上場時に東証が割り当てた業種別分類も、メディア企業が多く分類されている「情報・通信」でなく、「小売業」であるところに同社の特徴が表れている。

足元の業績は順調だ。前2016年8月期(2015年9月~2016年8月)の実績は売上高が37億6700万円、営業利益が4億9900万円。営業利益率は13.3%と2ケタを軽くクリアする。進行中の今2017年8月期も売上高は38億1700万円、営業利益5億円、営業利益率13.1%を見込み、新規上場企業としてはすこぶる堅実だ。ただ、前期比での伸びは売上高が1.3%増、営業利益が0.2%増と成長力で際立つわけではない。高水準ながらも堅実すぎる業績動向を、新興銘柄市場の投資家がどう判断するかが上場後の株価にも影響してきそうだ。

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