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レプロとHSのコンビネーション 清水富美加「全部、言っちゃうね。」

テレビ 読書

全部、言っちゃうね。 ~本名・清水富美加、今日、出家しまする。~

※一応、書影は貼っときますが、現在アマゾンでは買えません

清水富美加本を買ってみた。
話題の割に、店頭で大々的に平積みになるわけでもない。
宗教関連、スピリチュアルのところにひっそり置いてあったこの本。

書店としては売りたくないが、話題だから扱わないわけにはいかない、といったところかもしれない、

この本を買うとお布施になるが……金田一少年買ってる時点でハッピーサイエンス(以下HS)に間接的にお布施してたわけだから……などと自分を調伏し、レジへ。


まず最初に。
ここに書かれていることは本人の言葉だという前提でこの記事は進む。
HSが改ざんしてるとか、偽装だとか、疑おうと思えばあらゆる全てを全部ウソだと否定もできる。
しかしその根拠もない。

テレビではよく洗脳とかカルトとか言うが、だからって信じているひとからすれば信じていることが幸せ。
信じているひとから信じているものを取り上げるのがその人にとって本当に正しいのか疑問に思う。
現実的な正しさがひとを幸せにするとは、限らない。

という前提で、以下。



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洗脳

サンジャポを見てたらデーブ・スペクターとかテリー伊藤なんかは信教の自由を謳いつつ「洗脳だ洗脳だ」と言ってたけれど、この本を読んでわかるのは、アメはたしかにHSなんだけどムチは明らかに事務所のやり方。
一人の女優をこういう状況に追い込んだのは、HSだけじゃなく事務所も一緒じゃないかと。

そうはいっても、そりゃあ、ここまで死にたい死にたい言いながら、自分を騙しながら、騙されながら、それでも積み上げてきた自分の立場とか、仕事とか……捨てたくないに決まってます。捨てたくなかったに決まってるじゃないですか。
(中略)
「なぜ今なの?」とも言われますが、それは、今やめないと、ほんとに死にそうだったからです。

仕事を放り出して無責任だと意見も聞いたけど、そういうひとは死ぬまで働けっていうつもりなのか、と。

事務所が追い込み、新宗教が拾い上げる。
見事な連携プレーじゃないですか。
ナイスコンビネーション。

「ぶっちぎってもいい。ひとに迷惑かけてもいいから、まずは自分の命を守れ」って言ってくれる人が、業界のどこにいるんでしょうか。
「弱みに付け込まれる」って言う人もいますけど、「上等だよ」って感じですよ。
(中略)
洗脳上等だよって感じですよね。「洗脳されてるんじゃなくて、されるのを選んでるんだ」っていう気持ちなんですよね、こっちからしたら。

先日、デーブ・スペクターが(給料5万なんて)「そんなの常識でしょ」と言っていて。
いやいや、その「常識」っていう思考停止が彼女を追い込んだ根本原因だろ、と。
その常識を否定したHSに取り込まれたわけだが、世間からすればそんなの常識でもなんでもないと思うが。

番組内でさんざ「洗脳」って繰り返してたが、「五万円なんて芸能界の常識だ」も洗脳ですよ。
坂上忍や和田アキ子が自分の若手の頃はそのくらいあたりまえだ、常識だ、と語ったり、デーブやテリー伊藤が、そういうのが普通だ、というのは「守護霊はいます」と言っちゃうくらいおかしな話なんだが、5万だか10万だか3万だか知らないけれど、事務所に幾ら入ってたのかが、まず問題なはずだがなんぼハネてたのか、そこは問題にならないんだから不思議不思議。

あーやって「特に深い考えはないが、言いたいことをいう」タレントが重宝されるから、テレビはどうしようもない。
だから普段は、サンジャポなんてまず観ないんだが。

HS関連の話は、端折りますね。
かなりの分量出てきますが。

干される

気になるのは。仮面ライダーフォーゼのオーディションに受かって事務所と給料制の話で揉めた辺り。

マネージャーから歩合制を給料制にという話があったけれど安いと聞いていたので断った。

そうしたら、レギュラーでやるつもりだったNHKの番組を「先方から断られた」と伝えられました。やりたかったのに残念だな、と思っていたのですが、ある時その番組のプロデューサーさんにお会いしたら、「出てほしかったな、お願いしたんだけど、事務所に断られちゃってさ」って言われたんです。
(中略)
それで「ああ、なるほど。事務所の言うこと聞かないとこうなるんだ」って知りました。「干される」って言葉も、その時知りました。

これが行き違いなのか、それとも本当に事務所の圧力だったのかは知らないけれど、少なくとも本人にそう思わせたってのは事務所の責任。
2014年は5万円、交通費もないのでヒッチハイクで移動していたらしい。
抱えてるタレントがヒッチハイクで移動してたら普通に止めると思うが、さすがレプロ。
その後8万になり、まれのときで月12万円……NHKの連ドラで。

2016年に25万円ってようやくマトモな金額に。
去年か……。
辞める前は年収一千万で事務所には億が入ってたとか……。
給料制って食えなくても食えるように育てるようにするためのタレントへの先行投資システムだと思ったんだが、レプロでは違うらしい。

だから今回の騒動って別にお金がもらえなかったから、じゃないんですよね。
辞める直前が一番もらってるので。
結局、お金が増えても幸せになれない、追い込まれた結果なんだから同じ事務所のユージが「今はもらってますよ」と言ったところでそこじゃない。

アメとムチ

拒否権なく、仕事は積み上がり。
もう限界だ、無理だと事務所に伝えても聞いてもらえず、

死にたいなんて、勝手に私が言っているだけで、仕事には関係ないといえばそうかもしれません。どんなに苦痛を訴えても、今日、明日、と仕事に穴をあけさえしなければいいのかもしれないです。

と追い込まれているところへ優しく声をかけるHSは、完全にアメ。


事務所に利用され、今度はHSに利用され。
でも本人は意外と利用してやれって思っているのかもしれない。
そのくらいしたたかであってほしいですが。

事務所だってHSだって、儲けるための人的ツールという意味でなら大差ない。
団体の儲けの行き先が、ヤバい人らなのか、HSなのかって差はあっても。
どっちにしろその先は、黒い奔流。

HSからすれば得難いコマなのは間違いないのだから待遇はいいでしょう。
待遇だけでならブラックな事務所よりよほど過ごしやすかもしれない。
なにせしばらく労働しなくても、この事実だけで宣伝効果はある。

最後に

本を読んだ感想としては、死ななくてよかったよねと思うし、そのためにHSしかなかったのだとすれば、救えなかった、気づけなかった、信用を確立できなかったあの事務所は、やはりダメなんだとしか。

本にも「バーニング系列」って書いてるし……なんか、もう。
のんの例の件は、見せしめとして機能してるのがわかる。

「仕事を放り出すな!責任を果たせ!」みたいに書いてるブログなんかもあったけど、「死にたい」と追い詰められてる女性にそれを押し付けるのが正しいのか。
放り出さずに最後まで責任を守って死んだのがブラック企業の被害者だったんじゃないんですかね。
死んでも働け、投げ出すな、迷惑かけるなと言えるひととは、話が合いそうにない。


清水富美加に必要だったのは、誠実に話を聞いてくれる相手とか、カウンセラーとか。
ともかく事務所の仕事と宗教しかないなら、逃げ場は一個しかないのも当然としか思えない。
親身になって守ってくれる家族もHS側なんだから。

証明みたいに、この本に書かれてるのは、事務所とHSのことばかり。
他のことは、とても薄い。
と言うか彼女の頭の中は、その二択になったんだろうなぁ、としか。

デーブとかテリーなんかは洗脳洗脳言ってれば、新宗教を悪に仕立てたシナリオで満足できるんだろうけど、神にすがって洗脳されざるを得ない状況を作ってしまった大人らの責任ってのはどうなんすかね。
「芸能界の常識」って洗脳の中にある人らが、あーだこーだ言ってもそりゃあ話は噛み合わない。
「洗脳」と批判を言っても、小さい頃から教えを受けていたなら「洗脳」じゃなく「英才教育」でしょう。


清水富美加って女性は、スカウトされずHSの英才教育で順当に出家するのが一番幸せだったのかもしれない。
レプロじゃなければ、とかいい出すとキリがない。
しかし途中、芸能界に立ち寄って自分に不似合いなその世界で苦しみ、逃げ出すときその黒黒とした裏側をチラ見せしていった。
そういう感じ。

やっぱり色々歪んでる。
愛人云々ってのもこのタイミングは、バイアスを掛けたいのか何なのか。


仕事が嫌で嫌で、死にたいくらいなら逃げ出してもいい。
でもその先に宗教しかないってのが、新たな不幸の始まりでなければいいなとは思う。
巨額訴訟を受け止める体力がHSにあるだろうけど、その事実を背負ってしまうとまた不幸になるしか。

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