仕事で出張する機会が多いのですが、出かける際に家族から「いってらっしゃい」と玄関で声をかけてもらえるので、毎日励みになっています。
ただ、夜遅く帰ることが多いので、「おかえりなさい」と声をかけてもらう機会はあまりありません。
だから家族が出かける際は、できるだけ玄関まで行って「いってらっしゃい」と声をかけるようにしています。
今日は子供の通っている小学校で、大切な学校行事があったので、久々に有給を取って家族の出かける姿を玄関で見送りました。
「いってらっしゃい」と見送るのも、たまにはいいものですね。
そんなわけで、今日は「いってらっしゃい」と手を振る理由について書いてみます。
「手を振る」のは、相手の無事や幸運を祈る意味がある
父親が会社に出かける際、子供や母親が玄関で「いってらっしゃい」と手を振る姿は、見ていて幸せな気持ちになりますよね。
この手を振る動作ですが、
「今日も無事に帰ってこれますように」
「今日1日いいことがありますように」
といった、相手の無事や幸運を祈る意味が込められているんです。
由来は「魂振り(たまふり)」
「手を振る」という動作は、神話の時代から受け継がれてきた「魂振り(たまふり)」という儀式に由来しています。
魂振りとは、神を呼び起こし、魂を奮い立たせる儀式のことです。
今でも神社では、神主が棒の先に紙が付いた「御幣(ごへい)」という道具を左右に振ってお祓いします。
あれも、魂振りです。
昔の人は、空気を振ることで神霊を奮い立たせることができると信じていました。
御幣以外にも、鈴を振ったり、柏手を打ったりと、空気を振動させて神の霊験にあやかろうとしました。
また、奈良時代の絵には、「領巾(ひれ)」と呼ばれる布が描かれたものがあります。
神に仕える女性が、薄い布を肩から両腕に巻きつけたものが「領巾」です。
領巾を振ることで、神を招き寄せ、神の力が増幅されると信じられていました。
出かける人に向かって手を振るのも、同じ意味があるとされています。
昔は着物を着ていたわけですから、手を振るというよりも「袖を振る」と言った方が良いかもしれませんね。
袖を振ることで空気を震わせ、神のご加護にあやかろうとしたと言われています。
手(袖)を振るようになった理由
なぜ、別れ際に手(袖)を振るようになったのでしょうか。
その理由は、昔は「旅立ち」が「今生の別れ」になることも多かったからです。
余程の事情がない限り、庶民は生まれ育った土地から離れて、旅に出ることはありませんでした。
庶民が住み慣れた土地を離れる事情は、都の造営や大仏の建立、戦など、権力者の都合によって強制的に駆り出される場合がほとんどでした。
現在よりも交通事情や治安が悪い時代に、遠くへ旅立っていった人たちは、そのまま帰れない人たちもたくさんいたそうです。
なので、旅立つ人の無事を心から祈るため、見送る人たちは「魂振り」をするようになったと言われています。
ただ、庶民の中で、神社で使う御幣や鈴、領巾を持っている人は稀でした。
神霊を奮い立たせるために必要な道具がなかったため、庶民は袖を振って空気を震わせ、神の霊験にあやかろうとしたそうです。
別れ際に手を振るのは、相手の無事と幸運を祈る行為だったんです。
自然に手を振る関係
ビジネスマナーでは「別れ際を大切にした方がよい」と解説したものをたくさん見かけます。
別れ際の印象が良くないと、どんなに実のある打ち合わせができても、相手は悪い印象を持ってしまいがちです。
なのでビジネスシーンでは、お辞儀をしたり握手をして別れることが多いと思います。
飲み会などでも
「じゃあ、今日はお疲れ様」
と言いながら、片手を挙げて別れるシーンもよく見かけます。
手を振りながら「いってらっしゃい」「またね」と言い合えるのは、親しい間柄でのみ行える仕草なのかもしれませんね。
親しい関係だからこそ
「無事に帰ってきてね」
「今日もいいことがありますように」
「神のご加護がありますように」
といった気持が、自然に湧き上がってきて、手を振る仕草に繋がっているんだと思います。
そんな手を振り合える関係の人のことは、大切にすべきなのかもしれませんね。