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[FT]ロボットへの課税にも一理あり(社説)

2017/2/21 13:58
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 ロボットは外科手術や爆弾処理ができ、完璧なフラットホワイト(エスプレッソにミルクを泡立てたコーヒー)も作れる。そのうちに、自分の納税申告書を記入するためのプログラミングが必要になるかもしれない。自動化の波が及びそうな幅広い職種をめぐり不安が高まるなか、米マイクロソフトの共同創業者ビル・ゲイツ氏からフランス左派の新旗手ブノワ・アモン氏まで、様々な人たちが、政府は人間と機械のバランスを正すために税制を用いるべきだとする考え方を支持している。

急激な自動化への対応策としてロボットへの課税論も浮上している
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急激な自動化への対応策としてロボットへの課税論も浮上している

 そうした提案を戯画化するのはたやすいが、その根底にある議論は見かけほどばかげていない。

 ロボットに対する直接税は解決策にはならない。その論拠の薄さは、たとえば表計算ソフトのエクセル、あるいはトースターなど、何であれ労力を省く機器の利用に課税するのと変わらない。生産性を高めて富を生み出す技術革新を罰することは意味をなさない。実際、自動化の費用を高くしすぎる先進国は、製造業を低賃金国に追い出してしまう恐れがある。

 しかしながら、自動化が急激に雇用を破壊し、適応力の低い労働者が置き去りにされかねないという点と、近年の生産性向上による利益の分配が均等ではないという点に関して、根拠の十分な懸念がある。ほぼすべての先進国で、国民所得に占める労働者所得の割合が減っている。恩恵にあずかっているのは高所得の労働者と資本の所有者だ。

■ビル・ゲイツ氏も課税を正当化

 ゲイツ氏は、自動化のスピードを抑え、最も影響を被る人々を支える政策が備わるようにするために、たとえ技術革新の妨げになろうとも、何らかの形によるロボットへの直接課税は正当化されうると示唆している。たとえば、自動運転車の急速な普及によって影響を受ける人々の多さを考えると、ゲイツ氏の言い分にも一理ある。

 とはいえ、それよりも大きな問題は、成長の果実がより平等に分けられるようにするうえで、政策当局が税制をどのように活用できるかだ。これは簡単にはいかない。大半の先進国は所得課税に大きく頼っており、資産税を大幅に変更することは政治的に難しく、法人利益への課税を重くしすぎれば投資家が競合国に流出する恐れがある。

 アモン氏は、少なくとも問題に真剣に取り組もうとしている。フランス大統領選に向けた同氏の政策綱領に直接ロボット税は含まれていないが、雇用主がすべての「付加価値」に対して労働者のために支払う「社会的負担」を導入するとしている。高率の雇用税がフランスの労働市場に及ぼしている影響を考えると、この案は十分に検討に値する。

 解決策がすぐに見つかるかは別にして、新しいアイデアの模索が急務だ。過去の産業革命は社会に混乱を引き起こしたが、長期的に全体の雇用水準を変えることにはならなかった。時間の経過とともに労働時間の短縮、賃金の上昇、過酷な労働の緩和につながった。政策当局は今、次の自動化の波が穏やかになるように手を打つ必要がある。

(2017年2月21日付 英フィナンシャル・タイムズ紙)

(c) The Financial Times Limited 2017. All Rights Reserved. The Nikkei Inc. is solely responsible for providing this translated content and The Financial Times Limited does not accept any liability for the accuracy or quality of the translation.


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