スイストラベルパスで周る絶景ルート鉄道旅③ パノラマ席で向かうユングフラウヨッホ
2017年02月21日
西はジュネーブから東はチューリッヒまでつなぐゴールデンパスルート。そのルートの一部、 ルツェルン・インターラーケン急行を利用して、ベルナーアルペンの山麓に位置する ユングフラウ地方への玄関口として知られるインターラーケンをめざす。 1等、2等ともオープンサロンタイプですべてパノラマ座席となっており、ブリエンツ湖畔 をはじめとする湖や山々を巡る風光明媚なルートを大車窓から堪能できる迫力の列車旅である。 途中駅にはピラトゥス山の頂上へ向かう登山鉄道への乗換駅のアルプナッハシュタート駅や、 ロートホルン山頂へ向かう登山鉄道への乗換駅のブリエンツ駅があり、 白い氷河を抱くベルナーオーバーラントの雄大な山々が迫ってくる。
インターラーケンは、”湖の間”という意味で、ブリエンツ湖とトゥーン湖の間に位置し、 2つの湖をアーレ川が結ぶ山岳リゾートで、ユングフラウ観光の拠点として昔からにぎわう。 東(オスト)と西(ヴェスト) 2つの駅の間を、メインストリートが結んでおり、歩いて20分ほどの小さな通りにはショップやレストラン、ホテルが並んでいる。 そもそもは12世紀に修道院とともに町を形成したが、英国人を中心に18世紀 から19世紀にかけて山岳観光ブーム起こった際に鉄道が敷かれ、ホテルや別荘が建ちはじめ、世界に誇るリゾートとして発展した。 バイロンやゲーテ、メンデルスゾーン、ブラームスなど文人や音楽家、オーストリア皇后エリザ ベートやルートヴィヒ2世などの王侯貴族たちにも愛された華麗なる社交の場。ユングフラウを正面に望む宮殿ホテルのテラスでは貴婦人や紳士たちが集い、優美な山々の絶景を望みながらティータイムを楽しんでいたという。
幸いこの日は、雲一つない快晴。これほど麗しい姿を見せることは少ない、と運のよさを絶賛されるほど、この日の「ユングフラウ(若い女性の意)」嬢はひときわ美しかった。ユングフラウをバックに青い空を泳ぐたくさんのパラセイリング。どんなパノラマが眼下に広がっているのだろう。
翌日の朝、アイガー、ユングフラウ、メンヒが連なるベルナーアルプスの三名山をのぞむ駅、クライネ・シャイデックから約100年前に開通したユングフラウ鉄道で、ヨーロッパ最高地点の鉄道駅ユングフラウヨッホ駅(3454m)へと向かう。1つめの駅、アイガーグレッチャーまで約6分地上を走り、その先の7.1km は素掘りのトンネル間を通過。1km進む間に標高が250mアップとのことで、列車はケーブルカー並みに傾く。トンネルはアイガー北壁からメンヒの中を斜めに貫いているという。鉄道の全線開通はなんと100年以上も前の1912年8月1日である。
ユングフラウヨッホへ向かうトンネル内部には、アイガーバント、アイスメーアという2つの途中駅があり、それぞれ5分停車し、地下駅内の展望デッキから広がる壮大な万年雪を眺めることができる。 アイガーバント駅( 2865m )は、アイガー北壁の真ん中に口をあけているような状態で、建設中トンネル掘削で出た岩を捨てるために空けられた「穴」であるとのこと。ガラス貼りの展望デッキからは180°のパノラマと岩と雪が織り交じった垂直の北壁が眼下に広がる。クライマーが当駅付近で遭難した際には、外から中に入れる仕組みになっている。
アイスメーア駅(3160m )は、「氷の海」という意味で、グリンデルワルト・フィッシャー氷河の源。ガラス張りの展望台からはひたすら氷河が広がっている。アイスメーアからは最も傾斜角度の高い坂を上りつめ、小さな電車は速度を緩め、ユングフラウヨッホまでたどり着く。
ユングフラウヨッホ駅のすぐ隣にある「トップ・オブ・ヨーロッパ」には、標高3571mから眼前に広がるアレッチ氷河の眺望を楽しむことができる「スフィンクス展望台」が崖にはりつくように建てられている。
地下20mに下りると氷河の中につくられた氷の宮殿「アイスパレス」、万年雪が楽しめるスノーパラダイス「プラトー展望台(雪原)」のほか本格的な料理やユングフラウケーキまで楽しめるレストランまで険しい山の頂上と思えない広くて充実した観光設備が整っている。
プラトー展望台から眺めるアルプス最大・最長のアレッチ氷河を含む、総面積824平方キロメートルの広大なエリアは、「スイス・アルプス ユングフラウ =アレッチ」として、ユネスコ世界自然遺産に登録されている。雲一つないこの日、陽の光が目にまぶしい白銀の世界が永遠のように続く。100年も前にこの360度広がる一面の氷河を見渡した人々がいることが驚異だった。