5人の理事への解任動議が議決される2月27日の臨時総会
私は1972年(昭和47年)に四段に昇段して棋士になってから45年間、将棋連盟の総会(通常総会、臨時総会)にほとんど出席してきました。その間、議論がもつれて閉会が明け方の4時に延びたり、将棋会館の建設を巡って理事会(現在の常務会)が総辞職したり、名人戦の契約問題に関する投票で2票差の僅差になったりと、深刻な事態に至ったことが時にありました。しかし今年の2月27日に行われる臨時総会で、5人の理事への解任動議が投票で議決されるようなことは前代未聞です。
そもそも昨年10月に竜王戦のタイトル戦の開幕直前に、保持者の渡辺明竜王が挑戦者の三浦弘行九段に「スマホ不正使用」の疑いがあると告発し、それを受けた常務会が確たる証拠がないのに、わずか2日で三浦九段を出場停止処分にしたこと自体が異常でした。そして連盟から委嘱された「第三者調査委員会」の報告によって、12月に三浦九段の無実が証明され、三浦九段は今年の2月13日の対局から公式戦に復帰しました。連盟会長の谷川浩司九段と常務理事の島朗九段は、責任を取って辞任しました。2月6日の臨時総会で新会長に就いた佐藤康光九段は、三浦九段に謝罪するとともに、名誉回復に努めたいと述べました。
しかし、一連の経過で問題がすべて解決したわけではありません。常務会が行ったことは結果的に「冤罪」となり、三浦九段に対して「人権侵害」と「名誉毀損」に該当する重大な過ちを犯したのです。さらに、今後は第三者調査委員会の弁護士たちへの多額な報酬、三浦九段への補償額などによって、連盟に多大な金銭的損失(約1億円といわれます)を与えることになりかねません。一般社会では、執行部は総辞職に相当する責任問題だと思います。ある理事が語った「仕事をすることで責任を果たしたい」という次元ではないのです。
2月6日の臨時総会で常務会に提出された5人の理事の解任を求める書面には、28人の棋士が署名しました。その中で3人の発起人は、元理事の滝誠一郎八段と上野裕和五段、西尾明六段であると、2月13日発売の『週刊ポスト』が報じました。西尾六段の師匠は専務理事の青野照市九段です。弟子が師匠に対して矢を向けた形ですが、別に両者の師弟関係が悪化しているわけではありません。西尾六段は連盟運営の正常化と真相究明を期したもので、正義感にあふれた立派な行動だと私は思っています。
ある理事は2月6日の総会後の記者会見で、「署名した28人はベテラン棋士ばかりで、若手棋士はいない」と語ったといいます。もしそれが事実とすれば、的外れの考えというしかありません。将棋界の発展を願う気持ちに、ベテラン棋士と若手棋士に違いはないからです。ただ現実的には、若手棋士が常務会に対して表立った批判はしにくいと思います。それに25人以上の棋士の署名があれば要件を満たすので、常務会に批判的な若手棋士を加える必要はありません。
署名した28人の棋士のうち、元理事は9人です。60代・70代の引退棋士は、私を含めて約5割です。現役棋士は約4割で、その中にはタイトル戦の経験者が2人います。つまり、連盟運営に携わった棋士、第一線で活躍している棋士もいる顔ぶれなのです。
2月27日の臨時総会では、有効投票数の過半数によって、5人の理事の解任・信任が議決されます。今回の投票では「委任状」が認められるので、投票率はかなり高くなりそうです。ちなみに現時点の正会員(現役棋士・引退棋士・女流棋士)は235人です。
このブログに「2月27日は将棋界の今後の運命を決める本当の意味での《将棋界のいちばん長い日》にしなくてはなりません」というコメントが寄せられました。まさにその通りです。連盟運営を正常化する第一歩として、私は力の限りを尽くすつもりです。
三浦九段の問題では、数多くのコメントが寄せられました。それらのコメントについて、私の見解をいずれ述べるつもりです。
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