万引被害を防ぐため、犯人とみられる画像を公開することは許されるのか。今月、各地の小売店が「万引犯」として防犯カメラ画像を公開していたことが相次いで判明した。専門家は名誉毀損(きそん)や人権侵害に当たると指摘する一方、薄利多売の傾向が強い業界の「苦肉の策」として心情的に理解できる側面もある。万引は警察に届け出があったものだけで年間11万件にも上る。それも氷山の一角とみられ、業界では常習犯の「ブラックリスト」をつくる動きまで出てきた。
「個人的には言いたいことは山ほどあるが、今は何も話せない」
今月上旬、万引犯とみられる人物の画像を店内に張り出していたことが明らかになった神戸市中央区の「セブン−イレブン」の店舗。画像を公開した意図について、男性店長はこう繰り返した。画像は顔をぼかす処理をしておらず、万引犯であることを示唆するように「全て見てますよ」と注釈を付けていた。
その少し前には、千葉市中央区の「ファミリーマート」の店舗が、不審な動きをした男性客の画像に「万引犯です」と説明書きを加えて店内に掲示していたことが判明。眼鏡販売店チェーン「めがねお〜」の運営会社は東京都台東区の店舗で写した同様の画像にモザイク処理をしてホームページに掲載し、弁償に応じない場合はモザイクなしの画像を公開すると警告した。
同様の騒ぎは過去にも繰り返し起き、その度に法務局が中止を要請するなど議論を呼んでいる。
平成26年には25万円相当のブリキ製人形の万引被害に遭った古物商「まんだらけ」(東京都中野区)が顔写真の公開を予告したが、警視庁の要請で中止した。店側は当時、「万引は死活問題。自衛の手段だった」と説明した。
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