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ベンチャーの間接部門の仕事の進め方:専任スタッフなしで総務/人事/経理/法務をがんばる方法

間接部門とは、(売上に『直接』貢献する)営業や製造などの直接部門をサポートする部署のことで、一般的には、総務/経理/財務/人事/労務/法務などをまるっとひっくるめて「間接部門」と呼ぶことが多いです。

会社によって事情は全く違うと思いますが、フルタイムスタッフ30名程度までは間接部門の専任者ナシの方がいいかなー、という印象を持っています。

今回の記事では、間接部門の専任スタッフがいない弊社での、間接業務の考え方と仕事のやり方を書いています。
実際のところ、間接部門の組織をどう設計するべきかは、
・業態(オンライン/オフラインビジネスなど)
・事業規模
・事業成長スピード
・外部監査があるか
などで、とるべき手段が大きく変わるので、事例のひとつとして読んで頂ければと思います。

@tkiyama

目次

弊社でのやり方:専任者ナシ、みんなで分担してやる
成長するために専任者を置かない
総務/経理/人事/法務を全部できる人なんていないよ
間接部門の仕事は減らせる
だらしない人が間接部門の仕事を増やす問題
法務は事業責任者が自分でやる
人事は事業責任者が自分でやる
士業の専門家に丸投げしちゃダメ
入門レベルは自分で勉強
さいごに

弊社のやり方:専任者ナシ、みんなで分担してやる

弊社はフルタイムスタッフ20名の所帯で、音楽・語学・資格などさまざまなジャンルの教えたい人と習いたい人をマッチングするC2Cマーケットプレイスと、実店鋪でのカメラ教室の、2つの事業を運営しています(その他にもいろいろ仕込んでます!)。

現在、以下の理由から、間接業務だけを担当する専任スタッフを置かずに、みんなで間接業務を分担する、というやり方をとっています。

・成長するために専任者を置かない
・総務/経理/人事/法務を全部できる人なんていない
・専任者を置くほどの業務量がない(業務量は減らせる)
・お金ない

成長するために専任者を置かない

「間接業務をまるっと任せられる専任者を採用して、他スタッフは事業成長に専念した方がいい」みたいに言われることが多いけど、そんなことなくて、専任者を置くと成長スピードが逆に落ちることがあると考えています。

実際のところ、フェーズによって全然事情は変わるし、(組織の立ち上げ時期は特に)そもそも社員数は少ない方がいいよね、ということもあるんだけど、弊社が専任者を置いてない一番の理由は、会社のカルチャーが管理重視に変わっちゃうからです。

間接業務だけやる人は、仕事に一生懸命な人ほど、どうしても管理業務を増やしてしまいます。
優秀とか優秀じゃないとかそういうことじゃなくて、管理スタッフとしてこれは本能。

「それいまどうでもよくない?」と事業責任者が主張しても、理論武装した管理スタッフにはかなわない。軽トラにフェラーリのエンジンをのせようとするというか、管理レベルを引き上げるタイミングを必要以上に早めてしまうわけですね。KPIのレポート、そのためのミーティング、契約書の整備、各種リスク対策などなど、結局のところ事業責任者の時間を使うことになるので、管理レベルを高くしようとして事業成長の足を引っ張ってしまう。

管理レベルは低くて良い、というわけではもちろんないです。「ベンチャーは成長が全て!管理なんて要らないぜ!」みたいな荒っぽいことを言う人は多いけど、それでは当然ダメで、間接業務を軽視した結果、決算が間違ってて利益率を誤解してたとか、うっかり炎上したとか、気づいたら後ろから刺されてましたとか、残念な経験をした人は界隈にたくさんいると思います。

会社を大きくしようと思ったら管理部門を強化する必要がありますが、いつ、何を、どこまで管理するかが超重要で、適切な時に、適切な管理をすることで、成長速度をむしろ引き上げることができるわけです。
事業がまだ小さな段階で成長速度をコントロールするためには、事業責任者が自分で管理レベルを決めることが大切なことだと考えています。

(稀に、管理スタッフでありながら直接部門の優先順位を理解して対応できる人がいますが、そういう人は超貴重。)

2017年初の全社プレゼン資料を全て公開します」で、弊社の全社会議について書いてますが、例えばこういう会議をどの程度やるかとかも、「ミーティングで議論してると仕事した気になる」病にすぐかかっちゃうので、試行錯誤しつつ、今のフェーズで必要なものだけやるようにしています。

総務/経理/人事/法務を全部できる人なんていないよ

間接部門の仕事がわかってない人は、「全部まるっとよろしくー」って1人に頼めると思っちゃうけど、そんなの無理。

小さな会社で専任の間接部門スタッフを置くと、その人が、総務/経理/人事/法務など、全ての間接業務を担当することになります。それぞれ、専門知識と制度設計が必要な業務で、特に組織の立ち上げ時は難易度が高い。
「うちはベンチャーだから何でもやってね!」みたいに1人に押し付けてしまうと、引き受けた人が大変な思いをすることになります。

「間接部門」とひとことでまとめられるけど、それぞれの業務に求められる専門性も難易度も全く違う。全ての間接部門業務をこなせる人は、勉強もスポーツもできて、しかも絵も上手です、みたいな人。

それに、それぞれの専門知識が高い人は、大企業とか士業で経験を積んだ人で、年齢もそれなりに上なことが多い。そういう人はスタートアップのカルチャー(と年収レンジ)があわないことがほとんどです。

nanapiの元CTOの和田さんが CTO募集とかフルスタックエンジニア募集とか都合の良いこと言っちゃだめ というブログの中で、みんなが欲しがるフルスタックエンジニアCTOについて、

・アーキテクチャの設計ができて
・スマホアプリできて
・サーバサイド開発もできて
・インフラもひと通りできて
・マネージメントできて
・イケてる提案もしてくれる
・あと、言うことは聞いてね
みたいなことを考えてる人が多い。すごく多い。まずね、いないよそんな人。

と書いてるんだけど、これとすごい似てる。ベンチャー経営者が欲しい間接業務の専任者って、

  • B/S P/L C/Fを理解してて
  • 契約書を読めて弁護士とも会話できて
  • いろんな規程もささっと作ることができて
  • 会社法とか税法もまあまあ知ってて
  • 将来を意識して給与テーブルを設計できて
  • 労働法に詳しいけど労務トラブルにはビビらずに
  • 組織のスピード感を落とさずに管理してみせます。
  • あと、文句いわずに雑用もこなします。

みたいな人。そんな人いるわけないでしょ。

(もしも「うちの会社は全部一人でやっててうまくいってるよ」ということがあれば、その人は超大事!)

間接部門の仕事は減らせる

一見かなりの量に見えますが、ちゃんと制度設計とマニュアル化を進めれば、業務量はものすごく減らせます。

特に、経理や労務系は定常業務が多く、勤怠管理、経費精算、請求書のとりまとめなどなど、毎月発生するものから1年に1回しか発生しないものも含めて多岐にわたりますが、この手の定常業務はマニュアルを作ればかなり効率化できる。

例えば、初回60分かかった業務を、2回目は30分、3回目は5分でやれるように、同じ作業を繰り返すほど業務効率化されていくようにして、かつ誰がやっても同じ時間で終われるようにする。しんどいのは最初の1回目だけ。対応方法のマニュアル化をきっちり進めれば、2回目以降の負担は激減します。逆に言うと、段取りを整理してマニュアル作成しないと、いつまでたっても業務量は減りません。

イレギュラーはつきものですが、真の意味でのイレギュラーなんてほとんどなくて、たいていは一定確率で発生するから、イレギュラーが発生する都度、対応マニュアルを整備していけば時間とともに業務プロセスを洗練させることができる。

社会保険手続きや給与計算、各種税金計算などの処理を外部の専門家に委託する場合も多いと思いますが(弊社もそうです)、社内でも社外でも同じことで、リクエストするときの考え方や具体的な段取りを整理する。だから、「間接業務が多すぎる!」と思ったら、人を増やす前に、まずは段取りを見直すことが大事です。

弊社はこのマニュアル作成方針に従って、業務を整理してきました。地道な業務設計あるのみ

だらしない人が間接部門の仕事を増やす問題

経費精算や請求書の提出などは、いずれにせよやることなんだから、言い訳せずに、決めたルールで期日を守ってきっちりやってもらう。こういうのは諦めない心でやるしかない。ルールを守らない人がいると段取りが乱れるので、この手の仕事はすごく手間(と担当者のストレス)が増えます。たとえば経理業務を滞らせるのは、請求書を出し忘れてたとか、とても初歩的なところだったりします。
専任スタッフがいると、〆が近づくと何度かにわけて担当者にリマインドしたり、ミスを修正してあげたりするんだけど、それってただの二度手間だし、何よりも各スタッフの収益管理レベルがいつになっても上がらない。

経理担当以外の社員は経理業務を理解できなくていいよ、みたいな謎の風潮があるけど、そんなことない。仕事を増やすわけじゃなくて、どうせ必ずやる作業なんだから、期日を守ってミスなくやりなさい、ということですね。

例えば、こちらは弊社の請求書管理マニュアルの一部。ルールをこうやって整備して、これ見てきっちり自分でやってね、と全員にお願いしています。

経費とか請求書はみんなすぐ経理担当者に任せようとするんだけど、カネを使った人が用途を一番わかってるので、購入者が自分でやるようにした方が、結果一番楽になる。要は、楽するために、みんなで自分できっちりやろうよ、ということ。
こういうのは習慣なので、「うちの会社は、そういうのは自分でやるんだよ」という文化になれば、みんなやるようになります。

法務は事業責任者が自分でやる

契約書は、甲とか乙とか時代遅れな呼称が残ってて読みにくいのでアレルギーを起こす人が多いんだけど、要はただの日本語です。

もちろん法務リスクと事業の大きさによるんだけど、契約書作成は事業リスクの判断そのものなので、契約書作成と相手との交渉は、(必要あれば弁護士の助けを借りて)事業責任者が自分でやった方がいい。
契約書は万が一のために作るというのもあるけど、その万が一が起きないように、契約当事者同士がリスクを認識することの方が大切なことで、契約書の準備とチェックは、事業責任者として大事な作業と考えています。

人事は事業責任者が自分でやる

実際のところ、かなりケースバイケースで異論も多いと思いますが、弊社では、入社後に同じチームで働く人(事業責任者または部門長)が、人事担当者です。最初の面接から労働契約の説明、その後の人事考課まで、同じ担当者が行います。
最低限理解しないといけない労務関連の法律はいろいろあるけど、(必要あれば社労士に相談しつつ)自分で勉強してもらいます。

こうしてる理由は、一緒に働く人だけが、夢と現実の両方を伝えることができるから

一番大事なことは、入社後に直接一緒に働く人が採用を決めること。事業とチームの、魅力と未来を語れるのは今まさにその仕事をやっている人だけです。その事業を直接やってない別部門の責任者がプレゼンテーションしても、どこかで薄っぺらい感じが伝わってしまって、採用力が下がってしまう。

また、未来を語るのと同時に、 (時に冷たい)現実を誠実に伝えることができるのも、入社後に直接一緒に働く人だけです。自分のを含めてたくさんの労務トラブルを見てきましたが、トラブルの多くは大事件があったとかではなくて、小さな不満の積み重ね。「聞いていない」「こんなはずじゃなかった」「言ったのに対応してくれない」みたいなのがお互いに少しずつ蓄積していって、どこかで最後のひと押しがあって、残念なことになる。

そうならないように、やりたいこと、やってほしいこと、会社の進む方向性、具体的な勤務ルール、職場の雰囲気とかについて、入社前から、そして入社後も、出来るかぎりお互いの認識が一致するように、一緒に働く人がファーストコンタクト(一次面接)から担当することがとても大切なことだと考えています。

士業の専門家に丸投げしちゃダメ

よく、「うちは弁護士/税理士/公認会計士/社労士 etc に任せてるから大丈夫 ( ー`дー´)キリッ」みたいに言う人がいけど、中身をよく聞くと、「任せる」ではなく「丸投げ」してることが多いです。

外部の士業の人は、その業務のプロフェッショナルだけど、クライアントの会社のことは素人。士業の専門家の知識と経験をリスペクトするのは当然だけど、こちらの会社の創業の経緯、メンバーの変遷、事業の変化、過去に痛い目にあったこと、色々なことを今やっている/やっていない理由等、外部の人には当然ながらわかりません。

だから、弊社では、基本の考え方は自分で言語化してドラフトを作ってから、外部の専門家と相談して勉強しながら作り上げていって、最後の実務の詰めをお任せする、というスタイルをとります。
契約書でいうと、なぜその契約書が必要で、どこにリスクがあって、キモとなる条項はこれ、などを文書化したものを実質的な契約書1stドラフトとして、弊社の担当者が自分で作ってから弁護士と相談をはじめます。

大事なことは、基本設計を丸投げしないこと。外部の専門家に丸投げすると、ほんとうに簡単にトラブルになります。こちらの事情を把握されないと一般テンプレートを適用されるだけなので、専門家に任せて楽したつもりがトラブルの種を蒔いているだけ。当然ながら、問題になったときにケツをふくのはこちらです。そういう時は、どっちかというと士業側じゃなくてクライアントが悪くて、こちらの事情を士業の人にわかるように適切に伝えていないことが多い。丸投げダメゼッタイ。

(稀に、「どうしてこちらのことがそんなに理解できるんですか?」みたいな共感力と全体把握力が抜群な士業の人がいます。そういう人にあたったら超ラッキー。抱きしめて離さないようにしましょう。)

入門レベルは自分で勉強

「総務/経理/労務/法務とかは専門知識が必要だから云々」みたいな言い訳するヒマあったら、まず自分で勉強する、というのが弊社の基本スタンスです。

外部の専門家にお任せするときも、入門レベルでもいいから、こちらに知識がないと丸投げになってしまう。「任せる」と「丸投げ」は違います。エンジニアと仕事する優秀なプロデューサーがプログラミングを勉強するのと同じで、同じ目線になれるように勉強するしかありません。

ご参考まで、弊社で推奨してる経理などの教科書はこちら。

ちなみに、いろいろ探したんだけど、労務だけは良い教科書がありません(もしあったらぜひ教えてください)。労務トラブルは表に出ないから、本にもウェブサイトにも本当のことは書いてない。経験に基づく運用ノウハウが詰まっているのは社労士(と人事担当者)の頭の中だけなので、社労士の人に教えてもらいながら勉強するのがベストです。

さいごに

ここまでいろいろ書いてきましたが、結局のところ、個人のポテンシャルを強く信じてるというか、努力すれば何でもできるよね、という私の思想から来ているように思います。

自動車工場でいうライン生産とセル生産の違いと同じなんですが、部分最適による効率化よりも全体最適を大事にしてます。できるだけ分業しない。一人でなんでもやる。その方が結果的に効率的だし成長するし、変化に強い。
職務範囲を明確にして分業した方がいい状況って、実はあんまりないよねー、と思っています。

間接業務は、それぞれに法制度含めた専門知識が求められるものですが、ヒトモノカネの流れをデザインする仕事であって、そういうことを自分達でできるチームが強い組織になると考えています。

今回の記事が、人数が少なくて間接業務をどうやっていいか困ってる人とか、総務や経理のアウトソーシング方法に悩んでる人のお役に立てたらうれしいです。
それから、この記事に興味をもっていただけた方は、いいねとかシェアとかしていただけると、もっと会社のノウハウをがしがし書くぞ!というモチベーションにつながるので是非お願いします!

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