(百貨店の画像。出所はWIKIパブリックドメイン画像)
今日は消費行動についての幾つかの調査を紹介してみますが、その前に消費全般のデータを見てみます。
2017年1月31日に発表された総務省の家計調査(平成28年12月分速報)を見ると、二年連続で消費支出は減っているようです。
【二人以上の世帯】
消費支出(実質)
2013年:1.0%
2014年:-2.9%
2015年:-2.3%
消費支出(除く住居等※)(実質)
2013年:1.0%
2014年:-2.5%
2015年:-2.0%
【勤労者世帯】
実収入(名目,< >内は実質)
2013年:1.0% <0.5%>
2014年:0.7% <-3.9%>
2015年:1.1% <0.1%>
収入が頭打ちで消費が二年連続でマイナスという、パッとしないニュースなのですが、14年以降にマイナスが続いているので、その原因は8%への消費税増税である可能性が濃厚です。
こうしたご時世の中で、日本の消費行動はどうなっているのでしょうか。
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賃金増を切望する消費者
当たり前すぎるタイトルではありますが、デフレで低迷が続いた日本では、まさにこれが一番の問題になっています。毎日新聞の地方版(2017年2月14日 高知県)は帝国データバンクの調査として、今の個人消費動向を報じています(「個人消費 動向『悪い』が49.7% 活性化には『賃金の増加』 四国企業へ調査 /四国」)。
帝国データバンク高松支店が四国の企業を対象に調査したところ、49・7%の企業が現在の個人消費の動向を「悪い」と回答し、「良い」は9・6%にとどまった。活性化に必要な条件としては、72・9%が「賃金の増加」と答えた。
昨年12月から翌月にかけ、四国4県に本社を置く企業を対象にアンケート調査し、314社から有効回答を得た。
これまでの消費活性化政策で効果があったものを聞いたところ(複数回答可)、最高は「エコカー減税・補助金」の42%で、「所得税減税」の41・7%が続いた。
個人消費の活性化に必要な条件を尋ねると(同)、最高は「賃金の増加」の72・9%で、「将来不安の払拭(年金など)」が43%で続いた。
・・・
【深尾昭寛】
四国の調査ですが、前掲の2年連続の消費減退というデータを踏まえると、各県でもあてはまりそうな話だと思います。難しい言葉がいろいろと並んでいるのですが、簡単に言えば「金がないからモノが買えない 」というのがこの調査の結論です。
消費税増税が問題だったとは書いていませんが、消費活性化で効果が上がった政策として「減税」が上がっているのが印象的です。お役所に近いメディアや学者は「減税=バラマキ」という論調になりがちですが、企業への調査だと「税金は下げたほうがいい」と率直な答えが出てきています。
消費行動の人気ベスト3は「家電」「海外旅行」「車」
マクロのデータはパッとしないのですが、その中で個々の消費者は、どのように動いているのでしょうか。
それを見るうえで興味深いデータが明治安田生命保険によって発表されています。
2016年9月16日に発表されたシニア層と若年層の世代間ギャップに関するアンケート」を見てみましょう。
これは2016年の8月に行われたネット調査で、全国の20歳から79歳までの男女の1080件の有効回答を集めた調査ですが、その中の「消費意欲の有無 欲しいもの・したいと思うこと(複数回答)」を見ると、全年齢層でのベスト3は、以下の三つでした。
- 家電:34.4%
- 海外旅行:31%
- 車:26%
これはどの年代でも高い%ですが、年代別に%の高い項目を見ると、20代の「靴:24.4%」、50代の「家:28.3%」などが目を引きます。女性の項目では「ブランドのバッグ」は20代~50代の間で20%台の水準なのも気になるところです。
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クレジットカードを使わない20代
そして、「支払い方法」の調査で、20代の若者が最もクレジットカードを使わず(現金:75% クレジットカード:19.4%)、最もクレジットカードを使うのは60代(現金:67.8% クレジットカード:35.6%)という意外な結果も出ていました。
ネットでビジネスをする際には、クレジットカードが決済手段として多用されるので、「クレジットカードの使用率」は重要な数字なのですが、よく見ると30代と50代~70代のクレカ使用率は30%台でした。今の20代にクレカは不人気なようなのです。
若者の消費行動は堅実化?
2016年には静岡県で消費者教育推進事業の一環として18~39歳の若者を対象にした調査が実施されています。
徳川家康の出身地でもある堅実な地域柄も反映されているような気がしますが、そのお金の使い道(複数回答)では「貯金」が筆頭に来ています。
エコのミカタというサイトで伊藤愛沙美氏というライターがその概要を紹介しています。
【お金の使い道】は「貯金(54.8%)」「買い物(54.2%)」「趣味・習い事(42.5%)」「旅行(27.1%)」「交際費(17.3%)」の順。
(※男性は「趣味・習い事(53.6%)」「金融商品による資産運用〈貯金除く〉(12.9%)」、女性は「買い物(61.1%)」「美容(18.3%)」の比率が高い)
「消費行動」で重視するのは「価格(90.3%)」「品質(65.6%)」「見た目(27.2%)」「評判(22.6%)」「ブランド・メーカー(22.2%)」の順になっています。
(出所:堅実な若者の消費行動、重視することは「価格」【静岡県調べ】)
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筆者は「貯金」はお金の使い道ではないのではないかと思ったのですが、このデータからは割安品を探し、貯金に励む若者の姿が浮かび上がってきます。
若者らしくないとおっしゃる方もいるかもしれませんが、若い世代の給料は中高年よりも安いことが多いので、経済的合理性からみれば、これはなるべくしてなった消費行動のように思えてなりません。
貯金志向の20代、旅行大好きな70代
前掲の明治安田生命保険の調査に戻ります。
そこで、筆者がいちばん気になった項目は、「もしも5万円の臨時収入があったらどうするか」という項目です。全体を見ると「貯金する:42.3%」と「旅行に行く:18.4%」が目立っているのですが、この二つを年齢別にみると20代が「貯金:48.3% 旅行:11.7%」なのに対して、70代は「貯金:33.3% 旅行:33.9%」となっており、60代以降の旅行好きな傾向を伺わせる結果となっていました。
高齢者には資産がある?
筆者は、高齢者にわりとお金のある人が多く、若者はあまり豊かでない、という生活感覚を持っているのですが、海外旅行大好きな高齢者というのは、ある意味では、これを裏付けるものがあります。
ちなみに60代の筆者の両親はここ6年の間に2回ほどヨーロッパに旅行に行きましたが、30代の筆者は同じ期間に旅行には出かけていません。筆者は20代ではありませんが、身近なケースが見事に統計で裏づけられてしまいました。
どうしてそうなるのだろうか?と思ったのですが、恐らくこれは、日本で資産をたくさん持っているのが高齢者の世代であることとも関係があるのです。
そこで、財務省作の「年代別金融資産保有総額」のグラフを見てみましょう。
出所:内閣府「説明資料〔相続税・贈与税〕平成27年10月27日(火)財務省
数字の差にショックを受けた方もいるかもしれませんが、今の日本で資産を持っているのは50代以上の方々なのです。特に60歳代の方々がたくさんの資産を持たれています。この資産分布を見ると、お金のない若者たちから年金を取り立て続けることに注力するよりも、お金のある高齢者がお金のない高齢者を助けるような社会であったほうが望ましいのではないか、という気がしてきます。
出所:内閣府「説明資料〔相続税・贈与税〕平成27年10月27日(火)財務省
見事なまでに資産分布が高齢者に偏っています。これだけお金があったら海外旅行にも行けるんだろうな~と思うのですが、現役世代が豊かでないということは、日本経済が先細りする危険性を示しているように思えてなりません。
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