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経済・財政
許していいのか?経産省主導の怪しすぎる「東芝救済プラン」の中身
負担は国民にのしかかります

税金で助けるプラン

世界的な原子力不況への対応の遅れと企業としてのガバナンスの欠如が災いして、深刻な経営危機に陥っている東芝に対し、国民の眼に見えない形で政府・経済産業省が公的支援を行う案が、にわかに現実味を帯びてきた。

東芝は、支援に辿り着くために、実質的な経営破たんに当たる債務超過に陥ることが確実な今2017年3月期決算を自力で乗り切る必要がある。

そのため、同社は、収益の大黒柱である半導体・メモリー事業を別会社化、過半数以上の持ち分を売却することで急場をしのぐ方針だ。

これを受けて、東芝の破たんに伴う巨額の貸し倒れの発生を避けたい三井住友銀行、みずほ銀行など主力各行は、自力での債務超過回避のメドがついたとして、融資の継続に応じる方針という。

半導体・メモリー事業を売却するか Photo by GettyImages

この後が政府・経済産業省の出番となる。

同省は、今後40年間に少なくとも8兆円(単純計算で年2000億円)を見込んでいる東京電力・福島第一原子力発電所の廃炉予算を優先的に東芝が開発・販売する「廃炉ロボット」などの購入に充てるほか、耐用年限を迎えた全国各地の原発の廃炉作業に関連した発注の東芝シフトを電力各社に促して、東芝再建を支援する検討を密かに進めているというのだ。

ここで重要なのが、最終的な資金の負担者が誰かというポイントだ。

そもそも福島第一原発の廃炉費用はとりあえず公的資金で賄い、将来、政府保有の東電株の売却益で回収するというが、実現する保障はない。また、一般の廃炉費用は、我々国民が負担する電力料金が充当される仕組みである。

政府・経済産業省が検討している、この東芝支援策は、資本主義の原則を損なう禁じ手だ。が、実態が国民にわかりにくく、状況の検証・監視も困難なことから、行政の裁量で、なし崩し的に実施されるリスクが非常に高くなっている。

 

もう1つの「深刻な問題」

実に皮肉なことに、ビジネスに失敗した巨大企業の支援・救済に、血税や庶民が支払う電力料金を充てる、理不尽このうえない施策が検討されるきっかけになったのは、ある大物政治家の庶民感覚を重視する「鶴のひと声」だったらしい。

一昨年に続いて決算発表ができない異常事態に陥った東芝問題には、原子力事業で7215億円という巨額の減損が発生したことに加えて、もう一つ深刻な問題がある。

このもう一つの問題について、東芝の佐藤良二監査委員長は2月14日の記者会見で「従業員から、経営者による不適切なプレッシャーの存在を懸念する指摘があった」ため、「予期していなかった内部調査が必要になった」と述べている。

翌15日、日本テレビが独自ニュースとして報じたところによると、この内部通報は、昨年12月に巨額損失の発生が判明した際に、東芝の志賀重範会長と東芝の子会社ウェスチングハウスのロデリック会長がウェスチングハウス幹部に、東芝に有利な会計処理を迫る圧力をかけたという内容だ。

志賀会長と言えば、この15日付で米原子力事業の巨額損失問題の責任をとって取締役と代表執行役を辞任した人物だ。