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財政の悪化 国会は危機感に乏しい

 前半国会の焦点である2017年度予算案は月内にも衆院を通過する見通しだ。歳出規模が5年連続で過去最大を更新し、国債依存度は35%と借金漬けだ。しかも審議入り直前、政府は財政健全化の指標としている基礎的財政収支(PB)の将来試算が悪化したと発表した。

     本来なら国会論議を通じて健全化に向けた青写真を示すことが必要なはずだ。しかし、政府からは消極的な姿勢しか伝わらない。野党も具体案を欠き、議論は低調だ。国会の危機感が乏しいのではないか。

     安倍晋三首相は今国会の施政方針演説で17年度予算案を活用し「成長と分配の好循環を創り上げる」と述べたが、PBの20年度黒字化という政府目標には触れなかった。過去の演説で必ず言及してきたものだ。

     PBは社会保障や公共事業といった政策経費を税収などで賄えるかを示す。16年度は20兆円の赤字(国と地方の合計)だが、黒字化すると、新たな借金に頼らずにすむ。

     しかし、内閣府の試算によると、日本経済が実力以上に成長しても、20年度の赤字は8・3兆円と、昨年7月の試算より3兆円近くも増える。昨年の円高で企業収益が低下し、法人税収などが減ることが主因だ。

     首相は、政府目標に触れなかった理由を民進党から問われ、「累次(複数回)にわたって申し上げてきたので省いた」と答えた。目標達成が難しくなり、後ろ向きになったとみられても仕方がないだろう。

     PBの試算悪化は、経済成長に伴う税収増を当てにしてきたアベノミクスの限界を示すものだ。成長頼みではなく、膨れあがった歳出の抑制に本腰を入れることが不可欠だ。

     もともと首相は痛みを伴う歳出抑制に及び腰だ。首相のブレーンである浜田宏一・内閣官房参与は最近、PBの20年度黒字化にこだわる必要はないとの考えを示した。浜田氏は財政拡張による景気刺激策を主張している。政府の黒字化目標棚上げにつながらないか、気がかりだ。

     25年ごろには団塊の世代が75歳以上となり、医療費の急増で財政はさらに悪化する恐れがある。歳出抑制によるPBの黒字化すら困難なら、超高齢化社会を乗り切る持続可能な財政の構築はおぼつかない。

     衆院予算委員会の議論は、野党も文部科学省の天下り問題などの追及に力を注ぎ、財政健全化のやりとりは踏み込み不足だった。しかし、将来世代につけを回さない財政の確立は与野党共通の課題だ。

     日銀が金融緩和で長期金利を低く抑えているため、金利上昇という市場の警告機能が働いていない。それだけに財政規律を維持していくには、政治の責任が重いはずだ。

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