マレーシアと北朝鮮が対立 捜査へ影響も

マレーシアと北朝鮮が対立 捜査へ影響も
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北朝鮮のキム・ジョンウン(金正恩)朝鮮労働党委員長の兄、キム・ジョンナム(金正男)氏がマレーシアで殺害された事件で、北朝鮮国籍の男4人が容疑者として特定され、工作機関の関与が焦点となる中、現地の北朝鮮大使館はマレーシア側の捜査への不満をあらわにするなど対立し、捜査への影響も懸念されます。
この事件は、今月13日、マレーシアの首都クアラルンプールで、キム・ジョンウン朝鮮労働党委員長の兄、キム・ジョンナム氏が殺害されたもので、殺人事件として捜査しているマレーシアの警察は、インドネシア人とベトナム人の合わせて2人の女と北朝鮮国籍の男1人を拘束したほか、北朝鮮国籍の男4人の行方を追っています。

捜査は、北朝鮮の工作機関の関与があったかどうかが大きな焦点となっていますが、マレーシアに駐在する北朝鮮のカン・チョル大使は20日、記者会見を開き、「何者かが裏で手を引いているのではないか」と述べるなど、捜査への不満をあらわにして、マレーシア側を批判しました。

一方のマレーシア側は20日夜、外務省が「外国政府と共謀しているかのような言い分は政府に対する侮辱だ」などと、北朝鮮側を強く非難する声明を発表するなど、鋭く対立しています。

ジョンナム氏の息子がマレーシアへ 地元メディア

こうした中で、地元メディアは、キム・ジョンナム氏の息子のハンソル氏が20日夜、クアラルンプールに到着したと伝えました。

キム・ハンソル氏は年齢が20代前半で、韓国の情報機関によりますと、現在はマカオで家族とともに暮らし、中国当局の保護を受けているということです。

ハンソル氏は2011年に、旧ユーゴスラビアのボスニア・ヘルツェゴビナにあるインターナショナルスクールに留学しました。留学中の2012年、外国のテレビ局とのインタビューで、祖父のキム・ジョンイル(金正日)総書記や、キム・ジョンウン朝鮮労働党委員長について、「会ったことがない」と述べたほか、父親のジョンナム氏について「父は政治に関心がない」と述べていました。その後、ハンソル氏は2013年からフランスのエリート校、パリ政治学院で政治学を学びました。

イギリスの大衆紙「メール・オン・サンデー」は、今月18日、ハンソル氏が去年9月からイギリスにあるオックスフォード大学の大学院に進学する予定だったものの、中国の当局者から「北朝鮮がキム・ジョンナム氏とハンソル氏の2人に対する暗殺を企てている」と警告を受け、進学を諦めたと伝えています。

ジョンナム氏の遺体が安置されているクアラルンプールの病院には、現地時間の21日午前1時半すぎ(日本時間午前2時半すぎ)に、マレーシア警察の特殊部隊が車で到着し、周辺の警戒を始めました。
20日にハンソル氏がマカオからクアラルンプールに到着すると地元メディアが報じていて、大勢の報道陣が夜を徹して取材を続けています。

ハンソル氏が遺体を引き取る意思を示し、マレーシア側が認めれば、遺体の早期引き渡しを求めている北朝鮮はさらに反発することが予想され、捜査への影響も懸念されます。

韓国 国防委員会で事件を分析

キム・ジョンナム氏がマレーシアで殺害された事件を受けて、韓国の国会では20日、国防委員会でハン・ミング(韓民求)国防相などが事件の分析について報告しました。

委員会に出席した国会議員によりますと、ハン国防相は、今回の事件について「キム・ジョンウン体制を脅かす勢力を事前に取り除き、体制を覆そうとする試みを断つ狙いがあった」と指摘したということです。また、「北からの脱北者や体制に不満がある勢力に対する、強い警告の意味がある」との見方を示したということです。

そして、殺害に使われた毒物については、猛毒のVXや青酸カリなど5種類のうちのいずれかが使われたと見られるものの、さらに確認が必要だと説明したということです。