書きにくいことですが、最近、米国の郊外に乞食が増えています。

サンフランシスコ市内は、昔からホームレスや物乞いが多いことで知られていました。

1849年のゴールドラッシュの際、全米の食い詰めた連中が一攫千金を狙って押し寄せたので、それ以来、「悪徳の街」になったのです。社会の暗部が公衆の面前に晒されることに、市民は極めて無頓着です。

しかし、最近は、サンフランシスコ市内のホームレスに加えて、郊外でも、乞食や物乞いが沢山見られるようになってきています。

僕が住んでいるのはサンフランシスコからゴールデンゲート橋を渡り、北に行ったマリン郡です。このへんの売り家の平均価格は9千万円、税引き前平均家計所得は1400万円なので、本来であれば、貧困とは何のカンケーも無いはずの街です。

ところが、いつ頃からか交差点に物乞いの姿が見られるようになり、最初はチラホラだったのが、最近は常に、何人も、居るようになりました。

ガソリンスタンドで給油していると「コーヒーを買いたいんだが、2ドルめぐんでくれないかね?」と声をかけられます。

地元のスタバでもホームレスを頻繁にみかけるようになりました。

今年の冬は例年になく降雨量が多く、まいにち雨なのですが、ずぶ濡れになったリュックサックや寝袋を、カートで押しながら、あてもなく移動する姿は、見ていられないものがあります。

ホームレスの増加は、マリン郡だけではありません。

シリコンバレーのどん詰まりのサンノゼあたりも、高速道路の下や、ちょっと人目に付かない運河のほとりにホームレスのコロニーがあります。

ブルッキングス研究所のエリザベス・ニーボーンによると郊外に乞食が増殖しているのはサンフランシスコ・ベイエリアだけではなく、全米で見られる現象だそうです。

全米の人口の13.5%に相当する4310万人が貧困層に分類されます。

過去においては、アメリカの乞食は1)大都市、もしくは2)農村などの過疎地に見られるものでした。

ところが最近は郊外(Suburbs)での増殖が著しいのです。

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しかもエリザベス・ニーボーンによると乞食の増殖はフロリダ州ケープコーラル、テキサス州オースチン、ジョージア州アトランタ、ネバダ州ラスベガスなど、いわゆるサンベルトと呼ばれる暖かい地方で著しいです。

大都市の乞食が黒人中心なのに対し、郊外の乞食は白人が多いです。

郊外に乞食が増えている理由として、郊外の人口が増えたことで郊外がプチ大都会化したこと、リーマンショックで住宅市場が乱高下し、天井を掴んだ消費者がローンが払えなくなり、差し押さえられ、ホームレス化したこと、低賃金の仕事が郊外で増えたこと、などが挙げられています。

大都会の場合、シェルターを作るなどしてホームレスの面倒を見ることは効率が良いです。しかし郊外の乞食は点々と散らばっており、行政機関が一挙に面倒を見ることが出来にくいです。