2017-02-21

ゼロから理解する「遊戯王はなぜ炎上したのか」

http://anond.hatelabo.jp/20170220012819

カードゲーマー説明力の無い人が多い。

素人でも本当にわか解説を書く。

今回起こったのは、10年以上遊戯王の主役で有り続けた「エクストラデッキから特殊召喚」を根本から揺るがし、取り返しがつかなくなったルール変更である

遊戯王モンスターを場に召喚して戦うカードゲームで、様々な召喚方法がある。その中でも融合召喚シンクロ召喚、エクシーズ召喚ペンデュラム召喚、これらをまとめて「エクストラデッキから特殊召喚」と呼ぶ。そして今回「新しい召喚法を絡めなければエクストラデッキから特殊召喚を大きく制限される」というルール変更が行われた。

その意図は間違いなく、カードパワーをデフレさせることであろう。

なぜデフレさせなければならないのか。

トレーディングカードゲームにおいて、カードプールの増大と強さのインフレは不可分であるカードプールが大きくなる(カード選択肢が広くなる)ほど、古いカードだけでも十分なデッキを組むことができてしまう。すると新しいカードを買う動機がない。買わせるためには、古いカードよりも強くなければ、あるいは斬新なカードでなければならない。そして遊戯王は「新しいカードは強くなければならない」という構造からインフレを止められない状態になっている。

アニメ遊戯王と違って、現実遊戯王は1,2ターンで勝負が決定するまでになり、最前線レベルの強さのデッキとそれ以外で深い断絶が存在している。最前線級のデッキは最低でも「即死技を出す能力」「即死技を止める能力」のどちらかを備えていなければ話にならない。こうした即死環境では斬新さを作る余地ほとんど残っていない。これが何年も続いているのが今の状況だ。

数年前までは禁止制限リスト最前線級のカードを適宜入れていくことで代謝を促すことがまだ機能していた。しかしこの方式限界が来ている。なぜなら新作のカードは既にどれも異常に強いので、個別カード禁止するという方式現実的ではなくなってきているからだ。禁止制限リスト100種類を突破して久しい。

以上がコナミルール変更を強行した背景だと考えられる。

デフレさせれば創作余地が生まれゲーム面白くなる。ルール変更はデフレをもたらし、永続的に健全環境をもたらすだろうか?

残念ながら、ならない。

最前線デッキなかには、本変更の影響を受けないグループ存在する。これらのデッキは「エクストラデッキから特殊召喚」をほとんど使わないので、ルール変更前と強さが変わらない(例: インフェルノイド)。となれば、他のデッキはそれらと互角に渡り合う必要があり、新しいルールの下、即死的なカードが量産され即死環境に戻るのに、そう年月はかからないだろう。

既存デッキ環境から強制的に退場させるという点で、本変更は実質的なスタン落ち(古いカードをまとめて使用禁止にすることで環境強制的代謝させる仕組み)であるしかし今回のやり方は仕組みとして持続性がないので、いずれまたカードプールは増大し、また現在と同じレベル即死ムーブ跋扈する状態になる。他のカードゲームの事例を挙げると、MtGではスタン落ちは定期的に行われる。それは少なくとも1年前から予告されているので、プレイヤーショップも、適切に備えることができる。

そして、ルール変更は信用を大きく傷つけた。

電撃的に発表された変更は影響範囲が甚大で、多くのカードを紙屑化し、その価値破壊するものだった。これは「遊戯王には高価なデッキ明日には無価値になる大きなリスク存在する」という極めて悪しき前例となった。

業界トップソシャゲーにおいて、突然既存SSレア価値がN相当になった」と例えればわかりやすいだろうか。今後同じことが起きないという保証は全くない。そのリスクショッププレイヤーに降りかかる。

エクストラデッキから特殊召喚」は10年以上主役で有り続けた召喚方法である。これを潰されたということは、これまで活躍したデッキほとんどが、これからは使えなくなるということである。それは最前線デッキのみならず、歴代アニメ主人公ほとんどのデッキ機能不全に陥ってしまうことを意味する。

アニメ面白いですね。彼らのデュエル、かっこいいですね。でも彼らがやってること、これからルール違反なんですよ。

抱える問題において大した意味もなければ、失ったものも大きい。

遊戯王にとって、これは本当に取り返しのつかない事だった。

トラックバック - http://anond.hatelabo.jp/20170221010811

記事への反応(ブックマークコメント)

ログイン ユーザー登録
ようこそ ゲスト さん