【カイロ秋山信一】イラクのアバディ首相は19日、国営テレビで演説し、北部の主要都市モスル西部で過激派組織「イスラム国」(IS)の掃討作戦を始めたと発表した。市東部は既に政府側が制圧しており、モスル奪還作戦は最終段階に入った。ただ、市西部には国連の推定で約75万人の民間人が残り、ISも激しい抵抗を続けているため、作戦は難航する可能性がある。
アバディ首相は演説で「作戦は新たな段階に入った。モスル西部でダーイシュ(ISの別称)の恐怖から市民を解放する」と強調。民間人の巻き添え被害が懸念されていることを念頭に「作戦では民間人の生命や人権を尊重する」と説明した。
モスルはイラクの主要都市で唯一ISの実効支配下にあり、政府軍や米軍主導の有志国連合などによる奪還作戦が昨年10月に始まった。だが、ISの抵抗に遭って作戦は長期化。米軍のタウンゼンド中将は今月、ISの2大拠点であるモスルとシリア北部ラッカを今年8月までに奪還するとの見通しを示した。