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『ダンジョン飯』の著者・九井 諒子の作品がどれも面白すぎる

書籍 漫画

今回は大人気漫画となっている『ダンジョン飯』の作者、九井諒子くいりょうこさんの別作品をご紹介していきたいと思います。


九井諒子くいりょうこさんの作品について

ダンジョン飯もしかり、九井諒子くいりょうこさんの描く多くのファンタジー作品は、現実世界と空想世界がさりげなく当たり前の様に織り交ぜられているので、いつの間にか作品の世界に入り込んでしまいます。


人物ばかりにかたよらず、人物も動植物も人工物からモンスターまでもが、全て同じバランスで描かれているため『地に足のついた』空想世界を思い切り楽しむ事が出来るのだと思います。


もう一点、この作者のキャラクターや設定の徹底した作り込みは本当に凄いと思います。よくそんな事まで思いついたもんだと感心する箇所がそこらじゅうに散りばめられていて、その設定はまったくブレません、もうそのキャラクターが現実にいるんじやないかと思ってしまうレベルです。作品への愛を感じますね。


それから絵柄については、絵の上手い人の描く省略した絵といった感じで、のびのびとしていてすごく魅力的、しかも必要な部分はしっかり描いてあるのでとても読みやすいなと感じます。



九井諒子さんの作品紹介

そんな九井諒子くいりょうこさんの描く素敵なファンタジーの世界をお楽しみ下さい。一部ネタバレも含みますのでご注意下さい。


竜の学校は山の上

出版社 イースト・プレス発売日 2011/3/30

勇者は孤独な里帰り、 女子中学生の天使は進学に悩み、 ケンタウロスは馬車馬のように働く、 今日も大学の上空には竜が飛ぶ―… あたりまえのように、そこにある非日常。 現実(リアル)と幻想(ファンタジー)が入り混じる九井ワールドへご案内! Amazonより引用


竜の学校は山の上 の見どころ

収録作品は短編ストーリーが全9話。


魔王討伐後の勇者の物語や、実は魔王は宇宙人が作った機械であったというような、勇者や魔王といった使い古された題材を、作者の独特な世界観でひねりのあるストーリーに仕上げた作品から、ケンタウロスが普通にいる日常や、現代とほとんど変わらない日本に竜がいて、大学には竜学部が存在する世界を描いたまさに現実と現実の入り混じるSF作品まで幅広く収録されています。


魔王、ケンタウロス、天使、ドラゴンといった、空想やゲームでよく目にするキャラクター達が、しっかりと存在感をもって描かれているので、ひとつひとつの言動がごく自然に受け止められます。


収録作品の紹介

それでは『竜の学校は山の上』に収録されている各ストーリーについて、それぞれおおまかにご紹介していきます。


1.『帰郷』

勇者が魔王を倒した事で世界に平和が訪れたその後、魔王という共通の敵がいなくなった人々は、人間同士で争う様になったり、勇者をないがしろにしたり、まるで美女と野獣の物語をダークにした感じのストーリー。こちらの美男子が勇者↓




2.『魔王』

ある冬の夜、吟遊詩人がこの地にまつわる、呪われし怪物となった王と、 一人の王女の物語を語り始めます。




3.『魔王城問題』

魔王を倒したものの、人間たちには諸問題が残されていました。中でも難問が、主を失った魔王城をどうするかです。

どうにか有効活用しようと、政府は元勇者を城に招きますが…




4.『支配』

貧しい星を哀れんで、手助けを始めた異星人たち。生き物製造機をプレゼントしますが、人類はこれをなかなか上手く活用してくれません。

長い年月が経ち、帰ってきた異星人が目にしたものとは?




5.『代紺山の嫁探し』

神様を嫁にとって、村を豊かにしようと画策した村長。

村の独り身、権平を生贄にしようとしますが、権平に想いを寄せるおみつは大反対。おみつの気持ちを余所に、様々な神様と交渉に行く村長たちでしたが…




6.『現代神話』

上半身は人間、下半身は馬のケンタウロスが当たり前に暮らす現代。人とケンタウロス・しーちゃん夫婦のハートフルな日常と、すれ違いが交互に描かれます。

しーちゃんは、日々忙しく過ごしてはいますが、ゆるがない芯と包み込むような優しさを併せ持った女性として描かれていて萌え要素満載。

果たして人とケンタウロスは本当の意味で共生できるのでしょうか?




7.『進学天使』

ごく稀に羽の生えた人間が生まれる世界。ある羽の生えた女子中学生は、翼を活かしてアメリカに留学するか、地元の高校に進学するか悩んでいました。

自分の好きにした方が良い、と相談に乗るクラスメイトでしたが、彼女の飛ぶ姿を見て考えが変わり…




8.『くず』

主人公は、全く働かないいわゆるニートです。そんな彼がバイトになると知って、参加した実験とは?主人公の気持ちが分かってしまうと\(^o^)/こんな感じになります。




9.『竜の学校は山の上』

注意: 表題作でもある『竜の学校は山の上』はネタバレしてみます。

竜の学校は山の上ネタバレ

舞台は現代とほとんど変わらない日本ですが、この作品では『竜』が当たり前のように存在しています。



小さい頃から竜が好きで、日本で唯一竜学部を持つ『宇ノ宮大学』に進学した主人公の東は、入学初日に、竜研究会の部長から衝撃的な一言を告げられます。



残念ながら現在の日本に竜の需要は全くありません。従って!皆さんの就職先はありません!!


東は驚いて竜研究会を追いかけます。



そこで部長の香野橋かのはしから、竜研究会の活動方針をきかされます。『今や役立たずな存在となってしまった竜の活用方法を見出したい』この言葉で東は竜研究会に入会することとなります。


竜研究会目下の目標は、ヒリュウのよし子に乗って日本を一周すること。マスコミ取材を利用して竜をPRする狙いです。



他にも運搬・農耕・食用・観賞用など、様々な観点から竜の活用方法を研究していきますが、研究する程に竜が必要とされていない事を痛感していくのです。


こちらのシーンは竜の食用としての研究、『ダンジョン飯』のはしりにもなっている気がします↓



東が入学前に考えていた、僻地での運送に竜を使うという計画もコスト面での問題で頓挫することになり、竜が世間に必要とされていないことを痛感します。


そして何より、竜を保護する理由をどうしても上手く説明できず悩む東に答えをくれたのは、やはり部長でした。



出典:イースト・プレス


世の中にはな、ふたつのものしかないっ!役に立つものと、これから役に立つかもしれないものだっ!!


竜学を発展させようと、竜の保護による利益と損失を研究し『現代の日本に竜は必要ない』という論文を発表した部長の香野橋かのはしですが、結局彼女の真意は理解されませんでした。


それでも今なお研究を続ける香野橋かのはしの姿を見て、東も彼女を追いかける決心をし、彼らの研究は続いていくのです。


ひきだしにテラリウム

出版社 イースト・プレス発売日 2013/3/16

「湖底の春」「恋人カタログ」「かわいそうな動物園」「龍の逆鱗」「記号を食べる」「代理裁判」「遠き理想郷」「すごいお金持ち」「えぐちみ代このスットコ訪問記」ほか千変万化の発想と筆致でおくる、九井諒子ショートショート全33篇を収録。Amazonより引用


ひきだしにテラリウムの見どころ

まず表紙には各話の登場人物が大集合!学生・兵隊・宇宙人・未来人・ネコ・ロボットが混在していますが上手くひとつの世界におさまっていますね。


こちらが気になる全景です↓


ひきだしにテラリウムは、アマゾン『マトグロッソ』に連載されていた30本と、個人誌や雑誌に掲載されていた3本、描き下ろしの1本を加えた全部で33本のショートショート作品が収められています。どの話も3~10P程度ですが、ジャンルは、コメディ、昔話、ファンタジー、SF……とバラエティ豊かで内容の濃いエピソードばかりです。そして絵の幅が尋常でありません、少女漫画、サブカル系、劇画、アニメ風まで狙って画風を変えいる事にも驚きます。


収録作品全タイトル紹介

33本と膨大ですので各ストーリーのタイトルのみご紹介させて下さい。・・・それにしても、これだけの膨大な数のストーリーで似たような作品が1編もないのもすごいと思います。


  1. すれ違わない
  2. 湖底の春
  3. 恋人カタログ
  4. かわいそうな動物園
  5. パラドックス殺人事件
  6. 未来面接
  7. 龍の逆鱗
  8. TARABAGANI
  9. 遺恨を残す
  10. 代理裁判
  11. ノベルダイブ
  12. 記号を食べる
  13. えぐちみ代このスットコ訪問記トーワ国
  14. 旅行に行きたい
  15. ユイカ!ユイユイカ!
  16. ピグマリオンに片思い
  17. すごいお金持ち
  18. 語り草
  19. 春陽
  20. 秋月
  21. かわいくなりたい
  22. パーフェクト・コミュニケーション
  23. ショートショートの主人公
  24. 遠き理想郷
  25. 神のみぞ知る
  26. すごい飯
  27. 生き残るため
  28. スペースお尺度
  29. ひきだし
  30. こんな山奥に
  31. 夢のある話
  32. 未来人


以上の33本、どれもかなり面白い作品ばかりです。

ひきだしにテラリウム 作品例

例えば『かわいくなりたい』は寝起きの猫が主役のこんな感じの内容↓


↓寝起きでひどい顔の猫が、気になる模様消しから化粧をスタート


↓アイラインで目元もパッチリ

出典:イースト・プレス


とまあ、この後さらに可愛いくメイクアップされていきます。『猫だってかわいくなりたい』って作品ですが確かにこの先どうなっていくのか気になります。笑


竜のかわいい七つの子

出版社 エンターブレイン発売日 2012/10/15

見たこともない物語のはじまり、はじまり。前代未聞の漫画ここにあり! 2年の沈黙を破って、九井諒子ワールドの幕がふたたび開く。竜と人、人魚と野球少年、神様と小学生──それぞれの絆を題材とした過去の6作品に加え、全38ページの新作描き下ろし作品を収録。笑いあり、涙あり、きっとあなたが忘れていた、親と子の絆を思い出す7つ物語。


竜のかわいい七つの子の見どころ

竜や人魚や狼男、山の神さまなど様々な存在が現れますが、非日常的な題材を取り込みながらもその他の部分は本当に日常的で現実的なのでとても話に入り込みやすく、登場人物に感情移入がしやすい作品、まさに九井ワールド全開です。


作者の善と悪の表現はとても哲学的で、各々の正義というか、流動的な善悪が多くの作品に描かれています。読後感としては、しみじみ、ほのぼの、くすり、じんわり、ほろりとさせられる感じでどれも心に静かに響きます。


収録作品の紹介

それでは『竜のかわいい七つの子』に収録されている各ストーリーについて、それぞれあらすじをご紹介していきます。

注意:一部ネタバレを含みます。


1.竜の小塔

海国と山国、敵対するふたつの国は戦争状態にあったが、国境の小塔で竜が子育てをはじめてしまう。近づいた者は食い殺されてしまうため、両国は停戦状態に。そんな中、商人としてやってきた海国の青年に、山国の少女は心を許し始める。作品集の幕開けにふさわしい、竜がカギとなるファンタジーロマンス。


山國のユリカと海國のサナンが塔に登り手を取り合う最終場面は感動的です。


2.人魚禁漁区

人魚と人間が共生している田舎町を舞台に、異種族間の心の交流を描く現代ファンタジー。ある日、主人公の高校生は道路脇に倒れている人魚を助ける。人魚はなぜか彼の高校に行きたがっており……。


女性型の人魚に興味を持った高校生が抱く様々な想い、好奇心、同情、淡い恋心、そして異物に対して抱く恐怖心を淡々と見事に描いています。


3.わたしのかみさま

海洋学者を夢見る雪枝は、中学受験を前にした小学生。模試で散々な結果を出してしまい家に帰れず、小山の頂上に逃げ込んでいた。そこで彼女は魚の姿をした、消えかけのかみさまと出会う。


水槽の神として復活して主人公も志望中学合格か?と思わせておいて普通に不合格。神様がなんとかしてくれたみたいな、ファンタジーな方法で解決するわけでもありません・・残念。


4.狼は嘘をつかない

生まれつき月に1度は狼男になってしまう「狼男症候群」の大学生けー太と、その母親との親子関係を描いた作品。病気のせいでまともな青春を送れないけー太は、自分の病気をネタにエッセイストとして活躍する母にイライラしていた。そんな中、彼は大学で見知らぬ女子に声をかけられる。


主人公である梅谷けー太くんは狼男になっている間は別人のようになり記憶を失ってしまいます。その別人になっている間にやらかした事によって物語は進んでいきます。


5.金なし白祿

高川白祿は凄腕の日本画家。あまりの巧みさに、両目を描くと命が吹き込まれて絵から飛び出してしまうので、必ず片目しか描き入れなかった。そんな白祿が詐欺にあい、身ぐるみ剥がされてしまう。白祿は金儲けのため自らの禁を破り……。


日本画タッチを取り入れて、絵の達人白祿が残した瞳を描くと画から飛び出してきてしまう動物達を描いています、絵的な楽しさも備えています。


6.子がかわいいと竜は鳴く

竜の巣に近い山岳の村に、皇帝の息子がやってくる。皇帝は重い病気で、それを治すために竜の鱗が必要なのだ。村に滞在していた女性ヨウは道案内を申し出るが……。人と竜、それぞれの親子を通して、異なる生命観を描き出す。


竜の子に見せた温かい笑顔や、兵士達に素性がばれた時の蛇のような恐ろしい顔まで、九井さんの描くヨウの表情の多彩な変化は見どころです。


「子がかわいいと竜は鳴く」試し読み↓

7.犬谷家の人々

全員が超能力を持つ一族、犬谷家を描いたミステリーコメディ。双子の姉は次元を操る能力、父はテレパス、母はサイコキネシスト。だが双子の妹ありさの能力は、自分の「着ているものをパジャマに変える」。トホホな能力に嫌気がさしていたありさだったが、能力開花のお祝いに一族が集まった。そんな記念日に少年探偵・銅田一耕助が犬谷家にやってきて、事件が起こる。


超能力を隠そうとして行動が不自然になってしまう犬谷家の面々と、なんでも殺人事件に結びつけてしまう探偵脳の銅田一君のズレたやり取りが面白い。


出典:エンターブレイン


まとめ

ダンジョン飯』の著者・九井諒子くいりょうこさんの作品を全てご紹介してきましたがいかがでしたか?


紹介してみて気づいたのですが、我ながら余りにも絶賛しすぎて驚いています。
ダンジョン飯』も売れるべくして売れたんだなーと感じました。


ここで紹介したショート作品は結構試し読みも可能ですので、どれか1つ是非試しに読んでみて下さい。きっとすぐに『物語の世界に引き込まれている自分』に気付くとおもいますよ!