職場のイヤな奴から身を守る法
認知面と情緒面の成功感覚を育む
無礼な振る舞いをする同僚に嫌な思いをした、職場で不当な扱いを受けた、という人は多い。筆者のクリスティーン・ポラス自身も無礼な職場環境のために、希望に満ちて就いた仕事を2年足らずで辞めた経験があるそうだ。こうした困った職場、あるいは同僚に対してはどのように対処すればいいのだろうか。筆者は真正面から立ち向かうのは得策ではなく、みずからの心理状態を高めるために成功感覚を育むとよいと言う。一つは成長やたゆまぬ学習から認知面で成功感覚を身につけること、そして情熱や高揚感を味わうことで情緒面でも成功感覚を培うことである。
『DIAMOND ハーバード・ビジネス・レビュー』2017年3月号より1週間の期間限定でお届けする。
職場環境のせいで
念願だった仕事を辞めた
22歳の時、私は念願の職を得た。グローバルに事業を展開するスポーツブランドの選手養成所の立ち上げを手伝う仕事だ。私は、雪に覆われた中西部から太陽の光がさんさんと降り注ぐフロリダ州へ転居した。大学時代にアスリートとして鳴らした数人の仲間も一緒だったが、2年も経たずに私や同僚の多くが職を辞した。
私たちの退職理由は、いじめや横暴、非礼がまかり通る職場環境ゆえにだった。独善的なリーダーの無礼さは、組織の末端まで浸透していた。社員たちは無気力どころか、他人のじゃまや家族・友人に八つ当たりすることもあり、私が退職する頃には大勢の仲間が抜け殻のようになっていた。
私はこの経験を糧に、職場での礼を失した振る舞いとその代償、改善策の研究にプロフェッショナルとしての人生を費やそうと決意した。私の研究では、キャリアを通じて無礼な扱いを受けずに済む人は皆無に等しいことがわかっている。
過去20年にわたって何千人もの労働者に聞き取り調査を実施したところ、ぶしつけな扱いを受けた人は対象者の98%、そうした行為を目撃した人は99%に上った。2011年には「少なくとも週に一度は不当な扱いを受けた」との回答が半数に達した(1998年調査時は4分の1だったので急増している)。あからさまな悪意や意図的な妨害から意見の無視、会議中のメールチェックに至るまで、無礼な振る舞いは多岐にわたる。
養成所時代の同僚や私が気づいた通り、職場での非礼はパフォーマンスの妨げとなり、社員にも悪影響を及ぼす。実験環境においては、無礼な振る舞いを目にするだけで情報を取り込む力が格段に低下することがわかっている。粗暴な振る舞いを目にしたり身をもって味わったりすると、短期の作業記憶のみならず認知能力が損なわれる。免疫システムが傷ついたり家族にしわ寄せが及んだりするなど、さまざまな弊害が生じることも判明している。
残念ながら、無礼に対する再起力はある意味でコントロール不能である。脅威、屈辱、喪失感、敗北感──いずれも無礼な扱いに伴う感覚──に対する反応は、遺伝子の構成に大きく左右されることが研究でわかっている。
このため、職場における無礼の悪影響を軽減するのに最も有効な方法とは、無礼を排除する組織風土を築くことだろう。つまり、スタンフォード大学のロバート・サットンのベストセラー本『あなたの職場のイヤな奴』(注1)で提唱された「嫌な奴を排除するルール」を採用するのだ。
ただし、このルールを広範囲にわたって実施できる組織はごくわずかにすぎない。だとすれば、無礼な扱いに遭った社員はどうすべきだろうか。
私の研究で明らかになった対処法を活用すれば、パフォーマンスや心の健全性に対する脅威を誰でも最小化できる。かつてとげとげしい職場環境に苦しんだ若かりし頃の私自身に、この対処法を授けたいものである。
- 職場のイヤな奴から身を守る法認知面と情緒面の成功感覚を育む (2017.02.20)