【ロッテルダム(オランダ南部)八田浩輔】3月15日投開票のオランダ下院選(定数150議席)で、オランダ内務省はサイバー攻撃への警戒から開票集計をすべて手作業で行うことを決めた。集計に使用してきたコンピューターソフトに「脆弱(ぜいじゃく)性」が残るためだといい、米大統領選への介入が指摘されたロシアの存在が影を落としている。
オランダ下院選はフランスとドイツの国政選挙へと続く欧州「選挙イヤー」の先駆けとなり、イスラム移民の排斥や反欧州連合(EU)を掲げる自由党が世論調査で第1党をうかがう勢いをみせる。
オランダは1980年代から電子投票機を導入した「先進国」の一つ。しかし、不正への懸念の声が市民から高まり、2008年に投票用紙への手書き方式を復活させた。その後も集計には専用ソフトを使っていたが、外部からの不正操作などに懸念が残るとして手作業に戻すことにした。プラステルク内相は今月上旬、議会に「結果に疑惑の影があってはいけない」と説明した。内務省は取材に開票結果の発表に遅れは出ないと強調した。
アナログ回帰の念頭にあるのはロシアだ。米情報機関は、昨年の米大統領選でロシアがトランプ大統領の勝利を後押しするためにサイバー攻撃を仕掛けたと断定。加えて欧州諸国では、ロシアが反EU政党への資金提供などを通じ、EUの分断を試みているとの疑惑が広がっている。
ライデン大のトム・ロウェルズ准教授(政治学)は「以前から不正操作への懸念があり、米大統領選が今回の判断に直接関係したとは言い難い。しかしロシアを潜在的な『脅威』だと印象づけた点では影響したと言えるだろう」と話している。