【ワシントン=河浪武史】米共和党のライアン下院議長は16日の記者会見で、日本製品が輸出時の税制で米国製品より有利な扱いを受けていると指摘し、米法人税制に輸出課税を免除して輸入課税は強化する「国境調整」の導入を求めた。日本や欧州は消費税のような付加価値税で課税を国境調整しているが、米国には付加価値税がなく、ライアン氏は「不公平だ」と主張した。
ライアン氏は記者会見場で、たまたま手元にあったソニー製ICレコーダーを取って「日本製品は輸出時に課税を免除され、米国に入ると課税されない」と指摘。米国製品には日本で消費税がかかるが、日本製品には米国で付加価値税がかからないことから、米国製品が貿易で不利益を被っていると強調した。
ライアン氏は下院共和の税制改革案を立案した一人だ。現在35%の連邦法人税率を20%に引き下げ、輸出は免税して輸入品には20%をそのまま課税する「国境調整」の導入を求めている。下院共和の法人税改革が実現すると、ライアン氏が会見で引き合いに出した日本をはじめ、中国、メキシコなど貿易相手国からの対米輸出品は大きく値上がりする。日本の自動車の対米輸出が半減するとの民間試算もある。
ただ、世界貿易機関(WTO)は、付加価値税では認めている国境調整を、法人税のような直接税では輸出補助金にあたるとして容認していない。輸入品を多く扱う米小売業も「米国の消費者物価の大幅上昇につながる」として法人税の国境調整には反対している。
トランプ大統領は月内にも政権としての大型税制改革案を公表する方針だ。米国では税財政は議会が立案して決定するが、ホワイトハウスが法人税の「国境調整」の導入を盛り込めば、議会審議に大きな影響を与える。