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東京一極集中に歯止めがかからない。総務省の人口移動報告で、東京圏の1都…
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東京一極集中に歯止めがかからない。総務省の人口移動報告で、東京圏の1都3県は昨年も12万人弱の転入超過になった。96年以来、21年連続だ。
14年に「地方創生」を政策の柱に据えた安倍政権は、具体的な目標として、東京五輪が開かれる20年に東京圏の転出入を均衡させるとしてきた。しかし達成は早くも絶望的な状況だ。
保育所の不足をはじめ、東京の過密がもたらす問題は深刻で、少子化の一因と指摘される。五輪後は東京も急激な高齢化が進み、医療・介護施設の不足が懸念されている。首都直下型地震も差し迫った危機だ。
過度の一極集中は日本全体の未来を揺るがしかねない。どうすれば是正できるか。地方創生の5カ年計画の折り返しを迎える今、政策を練り直すべきだ。
根本的な問題点は、東京に集まり過ぎている行政や経済の機能を、国土全体にどう分散していくか、という骨太の理念がいっこうに見えないことだ。
地方創生の目玉だったはずの中央省庁の地方移転が、その典型だ。全面移転するのは文化庁のみにとどまった。
「東京一極でなく、多極を目指す」という理念を明確かつ具体的に示すべきではないか。
東京への流入が特に多いのは10代後半から20代の若者だ。知名度が高い大学や大企業が多いことが、進学や就職を考えた時に魅力的に映る。交通も便利だ。家賃の高さや子育てのしにくさに目をつぶってでも住みたいという人が少なくない。
地方に目を転じれば、20の政令指定都市を中心に、一定の社会基盤が整っている地域はある。過密も東京ほどではない。関西などの中核的な都市圏に国の行政機能を分散し、税制面での優遇策などで企業の移転をもっと強く促す。そうした政策が現実的ではないか。
今の地方創生はもっぱら国が交付金で自治体の奮起を求める相変わらずの中央集権型だ。政府は昨年末から、東京都心部の大学の新増設を抑える検討も始めた。だが卒業後も働きやすく、住みたいと思わせる地方を増やさないと、若い世代の流入を抑える効果は期待薄だろう。
地方の魅力を高めるには、核となる都市を中心に、各地域の特性を踏まえた策を実行していくしかあるまい。そのためには、地方が自主性を発揮できる権限と財源が欠かせない。
民主党政権の地域主権改革の頓挫以来、地方分権の議論はすっかり低調だが、いま一度、一極集中是正の方向性と合わせて論じていくべきだ。